withコロナ時代の販路開拓 デジタルを活用して売れる仕組みを作ろう!
お客様の反応を確認しよう!
仮説を立てましょう
いよいよこの連載の最終回となりました。今回は、ネットを使った集客をしていく中で蓄積されていくデータをもとに、改善サイクルを回していく考え方や方法を紹介します。
まず、みなさまの事業において、お客様がどのような体験をされるのか、お客様の一連の行動を想定しておきましょう。前回お話したように、美味しいお菓子を提供する事業では、お菓子を買う前から続く一連の「美味しさにつながる体験」を提供していると言えます。お客様がどのようにそのお菓子に出会って、興味を持ち、共感し、購入し、口に入れるのか。そして、その余韻をどのように楽しみ、また次のお菓子体験へと続いていくのか、ということを考えていきます。
このお客様の一連の行動が始まり続いていくように支援することで、お客様はより多くの価値を得ることができ、みなさまの商品やサービスも選ばれ続けることになります。それぞれの行動や、次の行動へ移るきっかけなどに、何かしら障害となるモノゴトがないだろうか、ということを考えて、その障害を解消するような施策をセットにした「仮説」を立てましょう。そして実際に、その「仮説」に基づいて支援策を実行してみることで、本北にお客様の行動がスムーズに流れていったかを確認し、更なる改善を続けましょう。
行動の流れを想定

お客様が次の行動にスムーズに移れるように支援することが、売上にもつながります
データを基に問題を見つけましょう
ところで、お客様の行動がスムーズに流れていないことや、お客様の行動にとって障害となっているモノゴトは、どうすれば的確に捉えられるでしょうか。ここは経営者の経験とが最大限に発揮されるところである、という見方もあるかもしれません。しかし、もしネットを活用しているのであれば、問題を見つけるのに役立つデータを蓄積できるので、是非、活用しましょう。
例えば、お客様の行動の流れの中に、商品の情報を確認して、その後、購入する、という部分を最初に想定していたとします。ネットショップであれば、これらを、ある商品Aの詳細ページを閲覧したお客様の数と、実際に商品Aが購入された数、として計測できます。この2つの数値のギャップが、他の商品に比べて大きい場合には、商品Aの販売には何かしら問題が起きていると言えるでしょう。
もしギャップを発見したならば、その原因が何であるかと、どのような施策で解決できるか、という仮説を立てて、対応していくことになります。仮説が正しかったかどうかを検証する際にも、データが取れていれば、客観的な判断ができます。
問題を見つける

感覚だけで問題を捉えて改善しようとしても暗中模索となるので、データを活用しましょう
Webサイトへのアクセスを無料で計測できるツール
さきほど|ネットショップであれば~計測できます」ということを書きました。なぜそれができるかというと、ホームページやネットショップなどのWeb サイトへのアクセス数を計測するツールが、世の中に提供されているからです。その中でも、最も有名な定番ツールが「Google アナリティクス」です。少し難しく感じるかもしれませんが、便利なツールなので是非活用してください。
Google アナリティクス
https://marketingplatform.google.com/intl/ja/about/analytics/
ツールの設定方法や使い方は、ネットで検索すれば数多く出てきます。ただし、2020年10月にリリースされた新しいバージョン|GA4(Google Analytics 4)」と日バージョンUA(Universal Analytics)」の情報が混ざっているので要注意です。この原稿を書いている2021年8月現在では、GA4ではできないこともあるため、新旧両方の機能を併用することが推奨されています。併用するための設定方法についてはGA4UA 併用」などのキーワードで検索してください。
GA4ではできなくて、UAでできることとして|Google Search Console」との連携があります。
Google Search Console
https://search.google.com/search-console/about?hl=ja
この Google Search Consoleを使うと、みなさまのWebサイトが、どのような興味関心を持った(どのようなキーワードで検索する) お客様に発見され、どれだけアクセスされているかをデータで確認できます。このようなデータは、みなさまが提供する顧客体験の入り口になる検索の部分を改善していくのに役に立ちます。
改善例
さてそれでは、具体的にはどのような改善が考えられるでしょうか。データからどのような問題が発見され、そこから何を原因と考えて、どのような対策を取るか、という観点で、3つの例を紹介します。
データから発見された問題 | 考えられる原因 | 改善策 |
---|---|---|
【スマートフォンからのアクセス】 |
||
想定するお客様像からは、スマートフォンでのアクセスが多いと考える。しかし、スマートフォンからのアクセス数が伸びず、アクセスしても最初のページですぐに出て行ってしまう。 |
スマートフォンから見づらい。異なる画面サイズに自動対応する「レスポンシブ・デザイン」を採用しているが、小さい画面を想定しない画像があり中に含まれる文字が読めない。 |
Webサイトのデザイン見直し。使っている画像の差し替かえなど。PCから更新していても、必ずモバイル表示を確認する(※)。 |
【検索キーワード】 |
||
想定していたキーワードでの検索結果からのアクセスが少ない。別のキーワードで検索しているケースが多い。 |
想定していたお客様像の興味関心が、実際のお客様からズレている。もしくは、情報発信の方向性がブレて狙っていた体験が構築できていない。 |
実際の検索キーワードと、見られているページの内容、提供する体験と情報発信の再確認と見直し。 |
【商品の紹介】 |
||
Webサイト全体へのアクセス数のわりに商品が売れていない。商品詳細ページがあまり見られていない。 |
ス商品の魅力、価値が伝わっていない。トップページや情報発信における商品の紹介が足りない。 |
商品の価値を再確認し、特集を組んでトップページや情報発信の中でお知らせする。 |
※PC 上でモバイル表示を確認する手段は、ホームページ作成アプリが提供していることも多いですが、ブラウザの機能を使うことでも確認できます。Windows PCでChromeやEdge を使っている場合には、F12キーを押すとデベロッパーツールが動作して、デバイスの種類による表示の違いを確認できます。詳しくは「モバイル表示確認」などで検索してください。
改善サイクルの基本的な考え方
最後に改善サイクルを回していくにあたっての基本的な考え方を紹介したいと思います。これはネットを使ったPRというだけでなく、様々なデジタルツールを活用する上での基本的な考え方となります。
ポイントは「顧客体験を向上する変化」を継続的に迅速に起こしていくということです。前回もお話をしましたが、ビジネスの勝負どころは「モノからコトへ」と移っており、集客の段階から始まる一連の体験価値を高めていくことが重要です。そのために経営者は、あらゆる気づき、あらゆる資源、あらゆる手段を総動員して、総力戦で臨みますが、そこで必ず活かしていただきたいのが、デジタルツールにより実現できる以下の効果です。
- デジタルデータの蓄積
ツールを使って分析することが容易にできます - 素早い更新
新しい顧客体験がすぐにお客様に届きます - 業務の省力化
より良い顧客体験を創り出すことに注力できます
これらの効果が発揮されることにより、様々な気づきを起点とする変化が積み上がれば、顧客体験の圧倒的な向上が実現されます。
改善サイクル

より良い顧客体験を創り出す、継続的で迅速な「変化」を実現するための基盤を確立しましょう
仕組みを手の内に入れましょう
これまで、デジタルを活用して売れる仕組みを作るにあたっての考え方やツールを紹介してきました。非対面での販路開拓が要求されるビジネス環境において、みなさまの事業を推進する上でお役に立てば幸いです。
今の時代、デジタルツールは、導入するかどうかを検討し、導入を目指して活動するものではありません。経営上の課題を解決していく上で、もはや当たり前に活用していくものです。そして、活用するにあたっては、誰かに完全にお任せするのではなく、経営者が自ら理解して、事業活動や経営判断の基盤とするものです。デジタルツールにより実現できる3つの効果を上で紹介しましたが、これらの効果は仕組みを手の内化しなくては十分に発揮されません。是非、デジタルツールの活用を自分事として捉えて積極的に取り入れ、みなさまの事業がお客様に提供する体験価値を高めていってください。
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■プロフィール

吉田 明弘
公益財団法人日本生産性本部 主席経営コンサルタント
1978 年神奈川県生まれ。中小企業診断士。
ソフトウェア開発会社に17年間所属し、組込みシステム開発、印刷会社の生産性向上のためのシステム開発や要件定義を中心に、多くの開発プロジェクトに参加する。開発以外にも様々な業務に関わり、自社の新規事業企画、新人研修、営業なども担当した。企業のIT利活用と不可分である経営に関しても学び、2016年に中小企業診断士の資格を取得。その後独立し、中小企業のIT利活用や研修などに携わっている。吉田明弘事務所代表(https://www.changebiz.net)。 現在、中小機構の中小企業向けIT導入支援サイト「ここからアプリ」運営にも関与。
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