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コーヒーで人とのつながりを

Nishida Coffee

Nishida Coffee 代表 西田 幸誠

代表

西田 幸誠さん

代表者 西田 幸誠
創業 2017年
従業者数 1人
事業内容 コーヒー豆の製造販売
所在地 山口県山口市湯田温泉5-7-6
電話番号 080(4487)7054
URL https://www.nishida-coffee.net
古民家を改装した店舗

古民家を改装した店舗

西田幸誠さんは一つ一つの注文に応じてコーヒー豆を焙煎ばいせん、顧客とともに理想の一杯を追求している。その探求心は地元のお祭りやイベントなどで存在感を発揮し、地域に新たなにぎわいをもたらしている。

一人ひとりに寄り添ったコーヒーを

山口県の湯田温泉にあるNishida Coffeeは、コーヒー豆の製造販売を行っている。顧客一人ひとりの好みに対応するオーダー焙煎が売りだ。焙煎の仕事は奥が深く、やりがいがあると西田さんは話す。

オーダー焙煎は好みを聞きとることから始まる。最初の注文では、酸味や苦味の好みなどから理想の味を大まかにイメージする。サイフォンやドリッパーなど使用する器具やコーヒーを飲むシーンなども押さえておく。

豆選びでは20~25種類のなかから1種類を選ぶこともあれば、数種類をブレンドすることもある。そして、イメージした顧客の好みに合うように焙煎していく。一般に、高温で一気に焙煎すると酸味が出やすくなり、低温でじっくり焙煎するとマイルドなコーヒーになる。また、同じ品種であっても収穫した年によって豆の出来は異なるため、同じ焙煎でも味が変わってくる。最新の焙煎機はボタン一つで自動焙煎できるデジタル式が主流だが、西田さんは時間や温度を自分でコントロールできるアナログ式の機械を使う。

一つの注文にかかる焙煎時間は10~15分である。事前に電話で注文する顧客もいるが、焙煎の香りを店先で楽しみながら待つ顧客も多いという。焙煎の時間もコーヒーの楽しみの一つなのかもしれない。

2回目以降の注文では、前回の注文のフィードバックをもとに、より理想の一杯に近づけていく。なかには10回も異なる焙煎方法を試した顧客もいるという。顧客との共同作業によって完成したレシピはまさに唯一無二である。2017年の開店以来、西田さんは顧客一人ひとりに寄り添うサービスで少しずつファンを増やしてきた。

お土産にもぴったりな「こぎつね珈琲」

お土産にもぴったりな「こぎつね珈琲」

イベントを機に生まれた新商品

コーヒー好きの心をつかんだ西田さんは知名度を高めていくため、県内各地で開催されるイベントに参加し、いれたてのコーヒーの販売を始めた。最初に参加したのは地元のフリーマーケットで、その後も神社のお祭りや、自動車ディーラーやハウスメーカーなどが主催するイベントに出店していった。やがて西田さんのコーヒー豆に対する真っすぐな探究心が伝わったのか、イベントに出入りしている地元の飲食店や旅館などから注文が入るようになった。西田さんの力を借りれば、自分のお店でしか出せないオリジナルコーヒーを提供できることがわかったからだ。事業者向けの販売は売り上げの安定に貢献している。

BtoBの取引が広がるなかで新たな商品も生まれた。湯田温泉にあるカフェとコラボレーションしたコーヒー豆「こぎつね珈琲」である。湯田温泉に訪れた人がまずは一息ついてほしいと、誰もが飲みやすいように酸味と苦味を抑えた味わいが特徴だ。包装にはコーヒー豆のお風呂に入ったきつねが描かれている。湯田温泉は白きつねがみつけた温泉と伝わることに由来するデザインだ。こぎつね珈琲は味も見た目も楽しめると評判になり、湯田温泉らしいお土産品として県内の道の駅で販売されたり、ふるさと納税の返礼品に採用されたりするようにもなっている。

週末になると、西田さんは水色のキッチンカーに乗って県内各地を走り回り、コーヒーを届ける。この車は、イベントで知り合ったベーカリーのオーナーから譲ってもらったビンテージ車だ。地域のつながりに感謝しながら大切に乗っていきたいと話してくれた。

コーヒー豆を販売して終わりではなく、西田さんはその後のつながりを大切にして、顧客の理想を追求しようとする。時間と手間のかかる取り組みだが、こうした姿勢が顧客の心をつかむ。そして地元のイベントに参加してコーヒーをきっかけにしたにぎわいを生み出しながら、事業機会を少しずつ広げていく。顧客一人ひとりに対する丁寧な対応や軽快なフットワークは小企業ならではの経営といえる。一杯のコーヒーを通じて生まれた出会いが、西田さんの活躍の場を広げていく。

(秋山 文果・2022.3.18)

本事例に関連するテーマについてさらに知りたい方はこちら(総合研究所の刊行物にリンクします)

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