セーフティネット需要に対応して、資金供給の円滑化を図る

現在の仕事内容

危機対応等円滑化業務部は、金融秩序の混乱や東日本大震災、今般の新型コロナウイルスのような感染症などの未曾有の災害が発生したとき、国から指定を受けた金融機関(以下、「指定金融機関」。現在、日本政策投資銀行と商工組合中央金庫の2行)が企業に対して円滑な資金供給などができるように、指定金融機関に対して貸付などを行う業務を行っています。
危機の発生時は、一般に企業の信用リスクが高まり、民間金融機関による資金供給が十分になされない事態が想定されます。そのような事態に対処するために、指定金融機関への貸付などを介して、企業に対する資金供給の円滑化を図ることが、危機対応等円滑化業務部の役割です。

やりがいを感じる時

私の主な業務は、資金制度のスキームづくりや制度の改定、財源を確保するための予算措置などに関して、関係省庁と折衝することです。この仕事の難しさは、危機の発生時にどのくらいの規模の資金が必要となるか、どのくらいの融資期間が必要になるかを予測しにくい点です。例えば、新型コロナウイルス対応にかかる予算折衝においては、限られた時間の中で10数兆円という天文学的な数字の協議を重ねていく必要があり、スケールの大きさに緊張感を覚えました。こうした予算措置を、主務省と連携して検討していくというプロセスは、当業務ならではのやりがいだと感じています。

思い出に残るエピソード

北海道十勝地方の支店で農業融資を担当していた際、天候不順で農作物が生育不良となり、農業者の資金繰りが悪化したことがありました。この時、農業だけでなく地域全体の景況感が悪化したことを肌で感じ、「(特に農村地域においては)第一次産業と二次・三次産業が密接につながっていること」を再認識するとともに、「地域活性化支援のため、農林漁業と商工業の両方に精通した人材になりたい」と考えるようになりました。
その後、事業間異動という社内制度に手を上げ、国民生活事業で中小企業者・小規模事業者の融資審査を担当したことがきっかけで、商工業者の経営実態や、支援機関の果たす役割、地域内の経済循環などをつぶさに理解するとともに、業務の傍ら国家資格である中小企業診断士を取得するなどして、実践と理論の両面で商工業者の支援ノウハウを学ぶことができました。こうした実体験を通じて得られた「現場感覚」が、制度や予算の立案という現在の業務においても役立っていると感じています。

将来の夢

入社当時の初心を忘れることなく、「現場と国をつなぐ存在」としての政策金融を実現していきたいと考えています。具体的には、
①支店において、農林水産事業の職員として食・農分野の制度融資と経営支援に精通することはもとより、事業間異動や診断士活動で得られた経験や知見を踏まえ、金融・税制・補助事業など中小企業施策全般にわたる専門知識を最大限に活用することで、高度な事業者支援を行うこと。
②本店において、農林水産事業・共通部門での制度・予算業務の経験を活かし、農林漁業者・中小企業者の現場課題やニーズを吸い上げて関係省庁に対してエビデンスに基づく政策提言などを行うこと。
などを実現したいと考えています。

ある一日

8:20 娘と幼稚園へ登園
平日は関係省庁との折衝で帰りが遅くなることもあるため、貴重な親子のコミュニケーションの時間として大切にしています
8:50 最寄り駅到着
フレックスタイム制度を利用しているため、ラッシュ時間帯を避けて通勤。車内で本や新聞をチェックして気になる分野の情報収集をしたり、社外活動の準備を行ったりしています
9:50 出社
メールのチェック、当日・今週のスケジュールを確認
10:00 資料作成
省庁から作業依頼のメールが入っていたことから、電話をして作成する資料の内容について相談。
提出期限を確認のうえ、資料作成開始
12:00 ランチミーティング
出身事業(農林水産事業)の中堅職員とともに有志で活動しているプロジェクトについて、昼食を取りながら打ち合わせ
13:30 省庁訪問
資料の作成状況を報告するとともに、概算要求中の予算の検討状況について聴取
15:00 帰社
訪問結果を上司に伝えるとともに、資料の修正作業を行い省庁へ提出
17:00 国会対応
国会会期中のため、翌日の国会審議の質問に対応準備
21:00 帰宅
妻が子どもと一緒に寝てしまっていたので、一人で食事を取りながらオンラインセミナーを聴講
24:00 就寝
家事と明日の準備を終えて、就寝

Personal Message File

学生時代

インカレの農業サークルに所属し、全国各地の大学の農学部生・農業サークルが一堂に会して意見交換を行うというイベントの企画・運営を行っていました。ここで得られたスキルやネットワークは卒業後も活きており、転勤先での円滑な人脈形成や、社外活動として現在行っている異業種交流会の企画・運営などにも役立っています。

周囲からみた自分

初対面の方からは「真面目そう」、「穏やか」という印象を持たれることが多いです。前者については「コツコツ型ではないものの、知的好奇心が豊富でさまざまなことに興味を持ち、吸収しようとする志向がある点」で当たっている面もありますが、後者については、「自分の考えを持ち、議論を好む点」でやや異なるかな、とも感じています。

好きな言葉

「不易流行」。いつまでも変わらないこと(=不易)と時代に応じて変化すること(=流行)を両立させるという蕉風俳諧の理念から、自分の生まれ育った農村地域にまでも変化の波が押し寄せているなかで、保守的になって流れに抗うのではなく、「変わらないために、変わり続けていく」ことを常に意識するようにしています。

休日の過ごし方

実家に帰省して農作業に勤しんだり、自然の中で子どもと一緒に体を動かしたりなどして心身のリフレッシュを図るようにしています。子どもが生まれる前は、妻との共通の趣味である旅行で各地を訪ねては、現地の食や文化に触れるなどしてその地域を知ることを楽しみとしていました。

社外活動での経験

①学生時代のインカレサークルのOB・OG団体を立ち上げ、現役学生や若手社会人のキャリア開発支援を行ったり、②本業の知見や中小企業診断士のスキルを活かして農業ベンチャーや地域の女性起業家へアドバイスを行ったり、③農林水産省・JA・日本公庫の有志メンバーで食農関連の異業種交流会の企画運営を行うなどしています。

日本公庫(農林水産事業)を選んだ理由

20歳の時、大規模農業経営に憧れて米国カリフォルニア州を視察した際、現地の方から「アメリカで大規模農業経営が成り立つのは、経営者の右腕を担う農業コンサルタントがいるからだ」という話を伺い、日本農業においても今後はコンサルタントが必要になると考え、農業者を金融面だけでなく総合的に支援している農林水産事業を選びました。

日本公庫の第一印象と入庫後の印象

「政府系」の「金融機関」ということでお堅い職場を想像していましたが、入庫してみると温和な方々ばかりの職場だったため安心しました(農林水産事業の取引先の大半が農林漁業者のため、「郷に入れば郷に従え」で、組織や職員の雰囲気自体が自然とマイルドになっていくのではないかと秘かに考えています)。

日本公庫の一番好きなところ

熱い想いを持った職員がそれぞれの事業にいることです。事業間異動で国民生活事業に勤務していた頃、職場の同僚と飲みに行き、お酒も深まったところで「どういう思いで日本公庫に入ったか」という話題になったのですが、普段淡々と仕事をしているベテラン職員から入庫間もない若手職員まで、皆が熱い志を持っていることを知り、「日本公庫の一番の強みは人だな」と確信しました。

就職活動のエピソード

選考がピークの頃、一度だけ選考に遅刻してしまいました。グループ面接に途中から参加し、背水の陣で思いの丈を述べたところ、まさかの選考通過。いただいたメールには「志士のような姿勢に感銘した」と書かれていました。諦めないことの大切さを学びましたが、その時は自省の念を込めて選考を辞退させていただきました。

就職活動をするみなさんへのメッセージ

進路を意識し始めた頃、大学のOBから「計画された偶発性理論(キャリアは偶発的なことによって決定される、その偶然は自らの手で引き寄せられることもある、という考え方)」という概念を教えていただきました。就職活動は、さまざまな業界や企業のことを親身に教えてもらえる貴重な機会です。今は新型コロナの関係で難しい面もあるかもしれませんが、時間が許す限り多くの企業に足を運び、先輩社会人との出会いを楽しんでください。