日本政策金融公庫の取組み

セーフティネット機能の発揮

東日本大震災や熊本地震、台風などの自然災害のほか、国際的な金融不安、経済収縮による悪影響により資金繰りに支障をきたしている方々に対する、セーフティネット関連全体(注)の平成28年度の融資実績は、15万262件(前年度比99%)、2兆2,059億円(同90%)となりました。
(注)「セーフティネット関連融資」とは災害復旧貸付、東日本大震災復興特別貸付、経営環境変化対応資金、金融環境変化対応資金、農林漁業セーフティネット資金等が含まれます。

全国の震災関連融資実績

成長戦略分野等への支援

国の政策に基づき、創業・新事業、事業再生、ソーシャルビジネス、海外展開及び農林水産業の新たな展開への支援などの分野に対して積極的な資金供給を実施しています。

【1】創業や新事業への支援

(1) 創業融資実績
平成28年度の融資実績は、2万8,392先(前年度比107%)、2,055億円(同107%)となりました。性別、年齢別の動向としては、女性、若者への融資が増加しています。

創業前及び創業後1年以内の企業に対する融資実績

女性、シニア、若年層への創業融資実績

(2)創業支援ネットワーク構築
創業希望者がワンストップで創業に関するさまざまな支援が受けられるよう、地域の創業支援機関と連携し、各地で「創業支援ネットワーク」を構築しています。

創業支援ネットワークの構築数(累計)

(3)新事業育成資金(注)の融資実績
平成28年度の融資実績は、中小・ベンチャー企業における新事業への挑戦意欲の高まり等により1,641先(前年度比155%)、996億円(同208%)となりました。

(注)高い成長性が見込まれる新たな事業に取組む中小・ベンチャー企業を支援する特別貸付制度です。

新事業育成資金の融資実績

(4)地域のベンチャー支援機関との連携
各地でベンチャー支援に係る情報交換会を開催し、地域のベンチャー支援機関(地元のベンチャーキャピタル、地方銀行、証券会社等)との連携を強化し、ベンチャー企業の発掘、支援に取り組んでいます。

東北ベンチャー支援機関による情報交換会

(5)資本性ローン(注)の融資実績
平成28年度の融資実績は、398先(前年度比90%)、251億円(同89%)となりました。

(注)中小企業者等の財務体質の強化を図るため、資本性の資金を供給する制度です。本制度は、無担保・無保証人であるほか、法的倒産手続時は他の債務に劣後し、本制度による債務は、金融検査上自己資本とみなすことができる等の特徴を有します。

資本性ローンの実績

【2】事業再生等への支援

「企業再生貸付」の平成28年度の融資実績は、金融円滑化法の期限到来後、再生支援に関するニーズが高まっていることなどを背景に、2,349先(前年度比157%)、1,356億円(同133%)となりました。
また、地域経済や地域の雇用を支える中小企業・小規模事業者の事業再生を円滑に推進するため、公庫の呼びかけによる民間金融機関との再生支援に係る情報交換会や、公庫が出版した企業再生関連の書籍を活用した勉強会等の取組みを実施しました(平成28年度は、計166機関で開催)。

再生支援に係る実績

【3】ソーシャルビジネス(注)への支援

平成28年度のソーシャルビジネス関連の融資実績は、9,644件(前年度比125%)、717億円(同118%)となりました。また、そのうちNPO法人への融資実績は、1,476件(同125%)、86億円(同120%)となりました。

(注)高齢者や障がい者の介護・福祉、子育て支援、地域活性化、環境保護など、地域社会が抱える課題の解決に取り組む事業をいいます。

融資実績の内訳

【4】海外展開支援

(1)海外展開・事業再編資金の融資実績
「海外展開・事業再編資金」の平成28年度の融資実績は、1,811先(前年度比118% )、375億円(同142%)となりました。
背景としては、積極的に輸出入取引に取り組む中小企業及び小規模事業者が増加していることや、平成27年度から取扱いを開始した外貨(米ドル)貸付(注)の資金ニーズが高いこと(平成28年度で99先、4,624万米ドル(49億円相当))などが挙げられます。
事業対象国・地域は、中国・ASEANで、約6割となっています。
(注) 中小企業・小規模事業者のより幅広い資金ニーズに対応するため、外貨(米ドル)でご融資する制度です。

融資実績の内訳

(2)スタンドバイ・クレジット制度(注)の利用実績
平成28年度は、前年度までに信用状発行実績のあるタイ、韓国、ベトナム、インドネシア、フィリピン、シンガポール、マレーシア、メキシコ、台湾のほか、新たに中国の金融機関に対しても信用状を発行し、その利用実績は103先となりました。平成24年度の制度開始以来の累計実績(~29年3月迄)は317先となり、スタンドバイ・クレジット制度の利用は引き続き増加傾向にあります。
また、より多くの中小企業・小規模事業者が本制度を利用できるよう、地域金融機関と連携したスキームを平成25年10月に開始しました。平成29年3月末で全国59の地域金融機関と連携しており、これまで延べ19先に対して信用状を発行いたしました。
提携先海外金融機関についても、既存のアジア8か国・地域及びメキシコの9つの現地金融機関に加え、平成28年度には中国の平安銀行及びインドのインドステイト銀行とも業務提携を行いました。

(注) 中小企業・小規模事業者の海外現地法人等が、日本公庫と提携する海外金融機関から現地流通通貨建て長期資金の借入を行う際、その債務を保証するために日本公庫がスタンドバイ・クレジット(信用状)を発行することで、海外での円滑な資金調達を支援するものです。

【5】農林水産業の新たな展開への支援

(1)農業の担い手(法人・大規模家族経営や農業参入)を支援
平成28年度の「農業経営基盤強化資金」(略称:スーパーL資金)の融資実績は、6,603先(前年度比107%)、2,479億円(同119%)となりました。
新規就農、農業参入関連への融資実績は、1,894先(前年度比106%)、506億円(同115%)となりました。
平成26年度から取扱いを開始した「青年等就農資金」(注)の融資実績は1,218先(前年度比103%)、90億円(同103%)となりました。
(注) 新たに農業経営を営もうとする青年等であって、市町村から青年等就農計画の認定を受けた認定新規就農者の方を応援する無利子の資金です。

融資実績の内訳

(2)6次産業化の取組みを支援
平成28年度の6次産業化(農林漁業者が生産物の高付加価値化のため、一体的に取り組む加工・販売事業など)により経営改善に取り組む方への融資実績は、1,400先(前年度比112%)、1,137億円(同109%)と増加しました。

融資実績の内訳

(3)民間金融機関等による農業法人への出資等を支援
平成28年度末時点で、農業法人投資育成事業(注)に基づき民間金融機関等が設立した投資事業有限責任組合(LPS)12先(日本公庫出資約束金額28.7億円)、株式会社1先(日本公庫出資額20.3億円)に対して出資しています。
(注) 「農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法」(平成14年法律第52号)に基づき、農業法人の株式等を取得・保有し、経営又は技術の指導を行う事業です。

総合力の発揮

お客さまや地域のニーズに合致した有益な情報提供等を行うため、各事業本部が連携してノウハウ・情報を相互に活用し、サービスの強化に取り組んでいます。

地域プロジェクトへの参画

全国152支店において、「総合力発揮推進計画」を策定し、地域が抱える課題に、きめ細やかに対応しています。

平成28年度は、全国で総計375件の地域プロジェクトに参画しました。連携先では、「都道府県」が91件、「市町村」が254件となっており、施策別では、「創業・ベンチャー支援・新事業・新分野」が55%と最も多くなっています。

地域活性化の取組み支援

各事業がもつ専門性とノウハウを相互に活用し、総合力を発揮したビジネスマッチングや農商工連携の推進などの幅広いサービスを提供。地域に根差した取組みにより、地域経済の担い手を金融面からサポートし、地域発の新たなビジネスの創出、地域産業の振興、雇用の維持・創出など、地域経済の活性化に取り組んでいます。

【支援事例01】 地方創生に尽力するワイナリーを3事業が一体となり支援

日本公庫は、全国152支店のネットワークを通じ、3事業が持つノウハウ・情報を相互に活用し、事業者が抱えるさまざまな課題の解決に向けて3事業の多様な機能を提供しています。

大阪府では、地元産農林水産物の活性化を地方版総合戦略に掲げ、農業の6次産業化ネットワーク活動の支援を行っています。その支援先の一つにワイン製造を手がけているカタシモワインフード株式会社(大阪府柏原市)があります。同社は明治初期に大阪平野の堅下(カタシモ)でブドウ栽培を開始し、大正時代からワイン醸造を行っている『カタシモワイナリー』を運営しています。
同社は日本産ワインを国内外に広くPR するために、築100 年以上の古民家を購入し、ワイン直売レストランへの改装及びワイン販売イベントの開催を計画していました。
この計画に農林水産事業(大阪支店)は古民家レストランの取得資金を、国民生活事業(東大阪支店)はワイン直売イベント開催資金を、中小企業事業(東大阪支店)は販売拡大に必要な長期運転資金を融資して、地域活性化に繋がる同社の取組みを支援しました。この事業の意義は、ワイナリー見学やワイナリーのブドウ狩りツアーなども開催することによって『カタシモワイナリー』のブランド力向上(地元と地元農産物の活性化)を図れること、地域の大切な資源の一つである古民家を残せること、などがあります。
政府では地域の活性化を図る観点から、総理大臣を本部長とした「まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、各自治体にも施策展開を図っています。日本公庫は地方公共団体とも積極的に連携して、新たな事業の創出や民間投資の促進を図って、地方創生の一翼を担っています。

ご融資先の声

【支援事例02】 3事業の専門性を活かし、地元金融機関と連携して、地域経済の活性化に貢献

千葉県館山港内の「館山夕日桟橋」(全長500m)に隣接する「渚の駅たてやま」にある商業施設の整備において、日本公庫では、地元の自治体及び地域金融機関と連携。3事業のノウハウやネットワークを活用し、地域活性化に貢献しました。
「渚の駅たてやま」は、国、千葉県及び館山市が共同で策定した「館山港港湾振興ビジョン」に基づいて整備されました。このプロジェクトは、首都圏にありながら美しい環境を保っている海を最大限に活用し、陸と海からのお客さまを迎え入れ、館山市の持っているポテンシャルを引き出し、市内の経済循環を良好に保つことを目的に策定された事業です。
この事業に、中小企業事業(千葉支店)では地元の企業に対し、地元の新鮮野菜・鮮魚・土産物を販売する「海のマルシェたてやま」及び房総地域の旬の味覚を味わえるレストラン「館山なぎさ食堂」の新規開業にかかる融資を実行しました。国民生活事業(館山支店)では、直売所に加工品などを納入する地元業者への融資及びマッチングを実施。そして、農林水産事業(千葉支店)では、直売所に魚や野菜を納める地元漁業者や農業者に関する情報提供やマッチング支援を行いました。また、今回の融資にあたっては、地元の金融機関の継続的な支援が重要であることから、民間金融機関との協調融資を実行しました。この支援事例のように日本公庫では、民間金融機関と連携した取組みにも力を入れています。

ご融資先の声