農林水産・食品事業者のマーケットイン輸出事例集『GLOCAL ACTION』
- 所在地
- 青森県弘前市
- 業種
- りんご生産・販売、加工品製造・販売
- 経営規模
- 自社農場1.6ha、契約農家1650ha
- 年商
- 15億円
- 輸出開始年
- 2003年
- 輸出先
- 台湾、香港、中国、アセアン、米国
- 売上に占める輸出の割合
- 2005年 生果3% 2020年 生果15%、加工品12%
- 輸出モデル
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- ストレートのりんごジュースと国際認証に裏打ちされた品質管理で輸出を拡大
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直営農場と約550戸の契約農家で生産されるりんごの卸販売と加工販売を行う。1967年に若手後継者約15名が集まり、経営力向上のために立ち上げた「青年りんご研究会」が青研のルーツ。
輸出の契機は台湾の2002年WTO加盟。りんごの輸入割当が廃止され、関税も50%から20%に引き下げられた。台湾人社長が日本で立ち上げた貿易商社から引き合いがあり、03年に輸出を開始。商社の現地ネットワークで、05年には輸出が生果売上全体の3%を占めるようになった。
06年にはFOODEX JAPANに初出展。りんごジュースが米国のバイヤーから高く評価されたほか、日本人バイヤーを介して台湾の大手小売店からも注文が入った。これに手応えを得て、香港、韓国、台湾、ロシアと毎年のように国内外の展示商談会に参加し、輸出地域を拡大した。09年のアグリフードEXPO東京ではジェトロが招へいした海外バイヤーと商談を行い、英国への輸出や香港の大手日系小売店との取引などが始まった。
当社のりんごジュースは、水・砂糖・香料・酸味料・防腐剤を一切加えず、5品種を丸絞りしてブレンドすることで味を一定にしている。海外で流通するジュースの大半が濃縮還元で、当社の100%ストレートジュースは価格では不利だが、品質では優位性が明らか。自社農場ではグローバル GAP、加工場ではISO9001・22000の国際認証を取得し、海外バイヤーの評価は極めて高い。
一時期、香港で当社商品を扱う会社が7~8社にまで増え、賞味期限が迫って業者から安売りされたことがあった。以来、丹精を込めた商品とブランドが棄損しないよう取引先を絞り、スポット注文や値引き交渉には応じないようにした。お互いがWin-Winとなる関係づくりを重視している。
国内外での需要増に対応すべく、19年に補助事業と公庫資金を利用してHACCP対応の新工場を整備。補助事業申請時の輸出実績は加工売上全体の5%で、5年間で10%に倍増させる目標を立てた。現在12%と、前倒しで目標を達成している。
- 新商品・新技術も活用し、国内外のお客様に選ばれリピートされる商品を提供
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りんご・ジュースともに周年出荷ができることも当社の強み。生果は CA(空気調整)貯蔵と10年に日本で登録されたスマートフレッシュ処理を組み合わせ、需給動向を踏まえ出荷している。
お客様に選ばれる商品づくりがモットーであり、海外でも同じこと。海外産品種の作柄や売れ筋など現地動向を商社経由で情報収集しながら、海外での販促活動や新品種のテストマーケティングも行う。国内では赤りんごが流通量の9割以上を占め、青りんごはスライスしてサラダに使われる程度。一方、当社が輸出するりんごは主力こそ「ふじ」だが、「王林」などの青りんごが6割を占める。中国・米国・チリ・NZ などのりんご輸出国はほぼ全て赤りんごで、特に「ふじ」は中国でも生産が盛ん。青りんごは酸っぱい「グラニースミス」ぐらいしか海外では生産されていないため、海外産と競合せず、日本の「王林」は甘味の強さと香りの良さが好評だ。日本産の赤りんごは旧正月の贈答用に好まれ、旧正月前が一番の需要期。青りんごは家庭用として人気で、旧正月以降も継続して需要があるため、周年出荷の強みが活きる。
生産者の所得向上のために加工や輸出に取り組んできたが、雇用の拡大や生産者・従業員の喜びと誇りにもつながっている。海外で需要のある青りんごは、葉摘みや玉回しなどの着色管理の手間がかからないという生産面でのメリットもある。
輸出が好調な一方で、日本のりんご生産量の6割を占める青森県ではりんご農家の高齢化と減少が深刻化している。そこで、当社は21年5月からモデル的に70aの園地で高密植栽培の取組みを開始した。これまで定植10年後の10a当たり収量が3トンだったのが、この栽培方法では5年で5~6トン採れるようになるというもの。密植化による収穫作業の効率化・機械化も期待できる。
目的やポリシーもなく、ただ国内で余ったから海外で試しに売れないかというのでは遊びの延長に過ぎない。海外のお客様に商品が選ばれ、リピートされることで初めてビジネスとして成立する。-
2019年に整備したHACCP対応の加工場
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海外の小売店でも販促活動を展開
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ステージ | アクション | ポイント | |
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準備 ・ 開始 |
2003年 | ■台湾へりんご輸出開始 |
●台湾のWTO加盟が契機。台湾人社長が立ち上げた貿易商社から引き合い |
2006年 | ■台湾・米国へりんごジュース輸出開始 |
●FOODEX JAPAN出展がきっかけ |
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2007年 | ■りんごジュース部門にてISO9001取得 |
●2年がかりで認証取得、商談が有利に |
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継続 ・ 事業化 |
2009年 | ■集出荷・貯蔵施設を整備、加工場増強 |
●アグリフードEXPOほか国内外の展示商談会へ積極的に参加 |
2010年 | ■中国・アセアン・EU・ロシア・UAEなど輸出地域を拡大 |
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2012年 | ■りんごジュース部門にてISO22000取得 |
●商談期間が短縮し、成約率も向上 |
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発展 ・ 投資 |
2015年 | ■直営農場にてグローバルGAP認証取得集出荷・貯蔵施設を新たに整備 |
●国内外の需要増を受けて、補助事業(強い農業づくり交付金)や公庫資金などを活用し、加工・出荷体制を強化 |
2019年 | ■HACCP対応の加工場を新設 |
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2021年 | ■直営農場にて高密植栽培を開始 |
●農家の高齢化・減少により新技術導入 |
ビジョン
「未来への挑戦」りんご産業で地域社会貢献を目指す