日本から世界へ実践!越境EC
- 所在地
- 福島県白河市
- 創業
- 2016年
- 資本金
- 5万円
- 従業員数
- 2名
- 進出国
- アメリカ、イギリス、中東、マレーシアなど
- 事業内容
- ムスリム衣料品製造販売業
- イスラムのマーケットに着物をリメイクした商品を
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2016年、名和淳子代表は合同会社WATASI JAPANを設立。大学時代に熱帯果樹栽培を学ぶために、マレーシアのイスラム圏の町で1年間暮らした経験があり、これを事業に生かそうと考えた。
「ムスリムの女性が被るヒジャブの販売について調べたところ、当時日本にヒジャブを作る会社はありませんでした」(名和代表)
現在、世界人口の約20%がイスラム教徒といわれている。ターゲットとなるマーケットは大きく、海外ビジネスとして最適だと考えた。
「まずはマレーシアで、素材感を重視したヒジャブやインナーをテスト販売しましたが、反応はいま一つ。ヒアリングをしてみると、女性たちは『外から見て日本らしいと分かるものを身につけたい』と言うんです。現地のニーズに合わせることの大切さを学びました」
テスト販売後、「日本らしいもの」は何か、思いを巡らせた結果、着物をリメイクしたヒジャブを製造販売することを思いついた。現地に出店して販売することも検討したが、最初から信頼できる現地パートナーを確保することは難しく、まずは日本にいながら海外展開ができる越境ECで販売することにした。-
マレーシアのショッピングモールで開催されたイベントに出展。現地の女性たちの声を聞き、それをもとに着物ヒジャブが誕生。
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英語版のパンフレットを作成して、イベントなどで配布。国ごとの言語ではなく、海外向けのサイトや販促物はすべて英語で統一している。
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東南アジアでは、ヒジャブは宗教上の理由だけでなくファッションとして楽しむためにも使われている。華やかな着物ヒジャブは、海外現地法人社員へのお土産として日本人に購入されることも。
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ムスリムの女性たちが身体のラインを隠すこともできる「アバヤ」。黒留袖を使ったアバヤは、デザイン性も評価され、アメリカやイギリスのお客さまに人気。
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育児中の女性たちが縫製を担当。「能力がある女性たちに仕事ができる場を提供する」という代表の思いを実践。
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- 外部専門家のアドバイスを活用し、自社に適した方法を模索
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自治体や公的機関の支援を活用して越境ECの準備をスタート。経済産業省の事業で、インドネシアからのインターン生を受け入れた結果、イスラム教徒のライフスタイルや価値観を理解できた。ECサイト内の翻訳も彼女にサポートしてもらった。
ECモールと自社サイトという2つの選択肢の中、名和代表は自社サイトでの販売が自分にマッチしていると考えた。
「当社の商品の特徴は、日本の着物をリメイクしているという点。お客さまにストーリーと独自性を伝えるために、自由度の高い自社サイトを重視しています。ジェトロの専門家の方にもアドバイスをもらいながら、英語版の自社サイトを新たに構築しました。ヒジャブを被ったインドネシア人モデルを和室の中で撮影した写真を掲載し、当社の世界観を表現しています。自社のECサイトがあると、海外での展示会でアピールできますし、信用度も増すことも分かりました。ただし、自社サイトで売上を確保するには、まずはサイトの存在を知ってもらうための情報発信が大切だと感じています」
当社では、SNSに英語でコツコツと情報を発信。しばしばメディアで取り上げられ、テレビ番組やニュースサイトを通じて注目されるようになった。
現在の売上は、ECの利用が定着している欧米に在住するムスリムからの購入が中心。中東諸国のムスリムは、戒律からクレジットカードを持っていない人も多く、決済手段面での柔軟性がカギとなる。
「越境ECは、対象国や商材によってその戦略は異なります。専門家のアドバイスをカスタマイズしながら、自社に適した方法を模索してきました。今後はムスリム向け以外の商品ラインナップを揃え、更なる輸出の拡大を進めていきたいと思います」
- 海外展開を検討される企業の方へ
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越境ECは、まずはチャレンジすることが大事。やれることからコツコツと始めてみませんか。
POINT 1専門家を活用する●自治体や公的機関では、中小企業の海外展開に関する様々な施策を実施しています。多くの知見をもつ専門家のアドバイスをぜひ参考にしてはいかがでしょうか。当社では、経済産業省の「国際化促進インターンシップ事業」等を活用しました。
POINT 2自社サイトによる売上確保に向けて●自社ECサイトの場合、お客さまにサイトの存在を知ってもらうために、積極的な情報発信が大事です。メディアに掲載されると、SNSで話題になることも多く、自社サイトへの訪問者数が増加します。
代表社員 名和淳子氏