調査結果に表れる傾向やその背景にある事象を考え、対外的に発信する

現在の仕事内容

中小企業の経営について調査・研究をしています。担当している仕事は大きく三つあります。一つ目は開業についてのアンケート調査の実施と分析です。調査結果をまとめて公表するほか、分析した内容を書籍にして毎年発行しています。二つ目は特色のある経営をしている企業や創業間もない企業に取材に行き、原稿を書くことです。経営者の方の個性や事業環境によって企業のもつストーリーはそれぞれちがい、勉強させてもらうことがたくさんあります。三つ目は論集の発行です。中小企業経営の研究者に執筆を依頼して、編集や校正をしています。校正は地道な作業の連続ですが、新たな知見に触れる大切な機会となっています。

やりがいを感じる時

一つはアンケート調査により、最新の開業の動向を知ることができることです。調査結果に表れる傾向やその背景にある事象を考え、対外的に発信できる機会があることが総合研究所の醍醐味の一つだと思います。もう一つは、自分の興味や関心に応じて全国各地の中小企業の経営者に取材ができることです。具体的なエピソードを経営上の文脈ではどのような意味があるのかを考え、自らの言葉で表現するのは大変な仕事です。それでも、先輩職員や上司に原稿を読んでもらうなかで、自分だけでは気づけなかったことや表現の仕方がわかると、視界がぱっと広がっていくような感覚があります。深掘りするべきポイントもわかり、ヒアリングの能力を上げることにもつながっています。

思い出に残るエピソード

3年目に経験した審査室での融資です。取引先の倒産により、資金繰りが悪化して連鎖倒産の危険がある会社からの相談でした。審査では、経営者から過去から現在、将来の事業の話を聞いたほか、取引のある銀行にすべて訪問して支援の方針や会社に対する考えを聞きました。また、会計帳簿のほか、取引先との契約書や手形など大事な数値の根拠となる資料は原本をあたりました。十分な受注が確保できていることや、その裏付けとなっている企業の強みがわかったことで融資ができ、連鎖倒産の危機をまぬかれることに寄与できました。原データにあたる大切さや経営者の話に耳を傾け、分からないときは臆せず聞いてみることは、融資だけでなく、調査研究をするうえでも大切なことだと感じています。

将来の夢

中小企業を見る力をもてるようになりたいです。融資の審査でも、調査・研究においても、中小企業をさまざまな方向から見ていくことが求められます。そのために社会全体の流れや業界の動向、企業単体の強みや課題といったマクロからミクロの視点を養っていきたいです。融資の仕事では経営者から相談をされたときに頼りになる存在となり、調査の仕事では研究成果の質を高めることにもなります。そのために、今は一つひとつの調査や事例研究に真摯に取り組んでいきたいと思っています。

ある一日

8:50 出社
スケジュールとメールの確認をします。締切を念頭に仕事に取り組む順番を決めます
9:00 取材の依頼
取材候補先に電話で連絡。日本公庫の紹介をしつつ、取材をしたい理由を力説します
9:30 論集の校正
論文の根拠となる資料も確認しながら、誤字脱字や図表の体裁といったところをチェックします。
校正刷りに修正箇所を書き込んで印刷会社にメールします
11:00 原稿の執筆
前日に行った取材のメモをもとに、原稿の大まかな構成を決めます。それから原稿の執筆を進めていきます
12:00 昼食
同期の職員とお弁当を食べ、カフェでコーヒーを飲み、午後にむけて気合いを入れています
13:00 プレスリリースの作成
開業に関するアンケートの集計結果をもとに、プレスリリース用の資料をまとめます
14:00 勉強会
ベテラン職員の方から、調査研究の基本に加えて、研究分野の最新の動向についても教えてもらいます
15:00 原稿の修正
先輩職員や上司に原稿をチェックしてもらい、不足している内容やわかりにくい表現などを修正して原稿の質を上げていきます
16:00 取材の準備
次の取材に向けて資料を収集して、ヒアリングする内容をまとめます。同行する先輩職員とも相談して準備を進めます
18:00 退社
ヨガ教室に通ったり、お気に入りの食パン専門店で2本(4斤分)食パンを買って帰ったりすることも
19:00 帰宅
資格試験の勉強をしたり、本を読んだりしています
23:30 就寝

Personal Message File

学生時代

大学時代は社会人になる前最後の自由な時間だと考え、塾講師のアルバイトやボランティアサークルの活動、バイオリンのレッスンに通うなどやりたいと思ったことは何でも取り組んでいました。大学院に入ってからは授業の準備や研究に追われる日々でしたが、自分で選んだテーマについて存分に調査ができて、総じて楽しい日々を過ごしていました。

周囲からみた自分

意志が強く、コツコツやるねと言われます。でも実際は気持ちのうえで弱音をよくはいています。大学院時代の研究で根気強さがかなり鍛えられたので、あの時の根気があれば大丈夫だと言いきかせて自分を奮い立たせています。

好きな言葉

「力は抜いて、手は抜かない」です。力みすぎるとかえって思考を巡らせにくくなったり、いつもならできていることもうまくいかなかったりします。仕事をうまく回すためには適度な緊張感をもって取り組むことが大切だと思います。また、仕事に慣れてきたときには、手を抜いていないだろうかと問いかけることも忘れないようにしたいものです。

休日の過ごし方

セキセイインコ(ぴゅりちゃん)を肩や腕に乗せて、遊んだり言葉を教えたりして癒されています。学生時代の友人と一緒にコンサートや食事に出かけるのも楽しみの一つです。

社外活動での経験

ヨガ教室に通っています。最初はふらふらしながらとっていたポーズも少しずつできるようになり、小さな成長を感じています。肩が凝ったり、足が冷えたりとちょっとした体の不調を感じたときにはヨガの先生から教えてもらったポーズや動きで体調を整え、ぐっすりと眠っています。

日本公庫(中小企業事業)を選んだ理由

東日本大震災の被災地でボランティアに参加し、あまりの状況に対して自分の力のなさを感じ、震災や経済危機といった困難な状況で頼りにされるような仕事をしたいと思いました。百戦錬磨の経営者との対話、工場や会社訪問により、企業経営の最前線を知ることができる魅力を感じました。

日本公庫の第一印象と入庫後の印象

業種柄、まじめなイメージをもっていました。入庫後はお客さまのためにという熱い気持ちをもって、業務や自己研鑽に取り組む方が多いという印象が加わりました。また、困っていることがあると親身に相談にのってくれるなど、温かみのある職場だと感じています。

日本公庫の一番好きなところ

人を育てようという意識が強いところです。異動により業務内容を変わり、分からないことがあったり、仕事の進め方に悩んだりすると、上司や先輩たちは惜しみなく教えてくれます。勉強会も盛んで、営業や審査について教えてもらったほか、現在の部署では取材のコツや最新の業界動向などを調査研究の基礎から学べる環境が整っています。

就職活動のエピソード

初めて受けた集団面接(学生側は二人)でのことです。自己PRを求められ、他の学生からいくつも内定をもっていることや海外経験も豊富であることなどを聞いて「私にないものばかりだ…」と思ってしまい、大失敗した面接がありました。気持ちを切り替えられなかった苦い経験です。

就職活動をするみなさんへのメッセージ

さまざまな業界の人から話を聞いてみてください。おもしろそう、やってみたいと思うような仕事に出会う機会をできるだけたくさんもつことが大切だと思います。やってみたいと思うことが見つかったら、なぜそう思ったのか、自分のこれまでの経験や考え方と結びつけてみて、ぜひその出会いをものにしてください。