先輩創業者の創業事例 創業後事例 日本の誇れるモノ・コトを世界に 株式会社TSUNAGU[東京都渋谷区] 代表取締役社長 萩原 良さん 先輩創業者の創業事例 創業後事例 日本の誇れるモノ・コトを世界に 株式会社TSUNAGU[東京都渋谷区] 代表取締役社長 萩原 良さん

日本と世界を「つなぐ」
TSUNAGUの方法論。

近年、注目されるインバウンドビジネスは、未だ成長段階にある分野である。
「この分野でナンバーワンになる」との目標を掲げ、確固たる地位を築き始めた訪日外国人向けメディア「tsunagu Japan」が担う役割は大きい。

起業

50万人の外国人が見る情報発信サイトを事業化

 2018年3月の訪日外国人の数は260万79O0人。前年同月比18.2%(日本政府観光局調べ)と右肩上がりである。この傾向は2020年の東京オリンピックがピークになると言いたくなるところだが、萩原良社長は「それは何の根拠もない」と言う。

「たとえば日本人が、『2年後にロンドンでオリンピックがあるから今、英国に行こう』とはならないと思います。現在、訪日外国人の数が増えている大きな要因である、円安とLCCの増加、ビザの緩和、そして東南アジア諸国の所得水準の上昇などの外部環境要因がこのまま継続すれば、この傾向は東京オリンピック以降も続いていくはずです」

 小学生の頃に海外で生活し、国内外から日本を見つめてきた経験から、「日本と海外をつなぐこと」を自らのライフワークと語る萩原さん。勤務時代にポップカルチャーなど、日本文化について発信するSNSサイトを構築すると、瞬く間にユーザー数は約50万人に上った。インバウンド需要を取り込みたい国内企業から広告のオファーが舞い込むようになり、手応えを感じて2013年に事業化した。
 その2013年は訪日外国人が初めて1千万人を突破した年。政府の「ビジット・ジャパン事業」などを通じてインバウンド

 分野が注目され始めた時期にあたり、インバウンド分野を事業とする企業は増加した。しかし現在、残っているのは同社を含めたほんの数社だという。「その理由は熱意とノウハウです」と萩原さんは言う。創業時から苦しい時を乗り越えながら、「訪日旅行者にとって有益な情報を発信する」との想いでインバウンド向けのサイト運営を続けていた当社が蓄積してきたノウハウは、インバウンド向けのプロモーション手法の知識が煮詰まっていない国内企業にとって、一朝一夕ではまねできないものとなっていた

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台湾人スタッフと打ち合わせ。外国人スタッフが多いのも強みである。

危機

やりたいことをやるには
中期的な辛抱が必要だった

「インバウンドと一言で言っても、誰をターゲットにしてどのような手段で情報発信すればいいのか、国または属性、初心者かリピーターかによって全く違います。国内で広告を出すのに比べたら、対象が分散してしまうんです。すべての国を対象にしようとすると時間も費用もかかってしまう。現状、大手広告代理店にインバウンドの専門の部署はまだあまりありません。理由は短期的には利益が出せない分野だからではないでしょうか」

 大手広告代理店が参人していない段階で、海外向けSNS運営代行は創業時から安定した収益を生んでおり、その中で訪日外国人向けのメディア「tsunagu Japan」をローンチしたのは創業半年後の時だった。メディアのプロモーションに費用を投入し、スタッフも増員し始めると、いよいよ同社の資金繰りが悪化する。

「当時はベンチャーキャピタルをはじめ、さまざまなところから資金調達を試みましたが、良い返事がもらえませんでした。そんなとき、もともとの知り合いだったエンジェル投資家が出資をしてくれて、同時に大型案件を受託することができました」

 同社がなぜ訪日メディアにこだわるのか。それは「メディアはユーザーにとってのプラットフォームであると同時にセールス面ではフラッグシップの意味合いがあるから」だという。資金的に厳しい環境のとき、受託できた大型案件も、tsunagu Japanのような記事を作りたいという要望だった。
「ウチには営業マンはいないのですが、訪日メディアでこれだけの実績が出せたら業界内で認知されます。メディア自体が勝手に営業してくれたのだと思います」

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展開

日本に住む外国人の生活に密着した情報を発信したい

 tsunagu Japanで発信し、大きな反響があった記事に、訪日外国人ウェルカムな美容院の紹介がある。ここで紹介された美容院には、日本のファッションに憧れを持つ人や、日本の美容院の技術の高さを知る訪日外国人客が毎日1人は訪れるという。また、タイアップ広告としてtsunagu Japanが紹介したツアーが3ヶ月で600件以上の申し込みを受けたこともあり、「自分たちが作ったコンテンツを見て、訪日客が実際に行動してくれたとき、一番の達成感がある」と萩原さんは語る。

 そして、メディア記事としての情報発信だけにとどまらず、訪日旅行者同士が情報交換できるコミュニティ作りも手がけはじめている。
「Facebookグループの機能を使って、繁体字圏で2千人、英語圏で400〜500名が集まるコミュニティを作りました。彼らは『来週、大阪に行くんだけど、どこがいい?』など相談しあっています。また、このグループに招待するときに、年齢や年収、家族構成などの情報を提供してもらうことと、のちにアンケートを採ることを承認してもらっています。そこで得た情報は、これからのメディア作りに活かせると思います」
 現在はインバウンドの領域にターゲットを絞っているが、中長期的には在日外国人への情報提供も考えている。
「日本に住む外国人にとって家探しや職探しが非常に大変です。通信、金融に関する情報も含めて、生活に即した情報はあまり整備されているとは言えません。また、英語の情報はあってもその他の言語はあまりない、というのが現状。今後、少子高齢化で日本人が減る中、国の政策としても日本に住む外国人は増加すると思います。「日本と世界をつなぐ」という意味でも、ここは当社が取り組むべき領域であると考えています」

 海外と日本をつなぐことは、「儲かるから」ではなく、ライフワークとして取り組みたいと語る。壁を乗り越えるのは、その信念の強さである。

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同社が運営する訪日観光メディア「tsunagu Japan」

萩原 良さん写真 萩原 良さん はぎわら りょう

「日本の誇れるモノ・コトを世界に発信する」との理念で2013年9月に創業。訪日旅行者向けインターネットメディアの運営や海外向けマーケティングのコンサルティングを行う。代表取締役の萩原良さんは小学校時代をドイツ、イギリスで過ごし、中学時代に帰国。メーカー広報、コンサルティング会社などの職を経験した後、同社を立ち上げた。

Campany info

株式会社TSUNAGU
所在地:東京都渋谷区
創業年月:2013年
事業内容:インバウンド分野事業
URL:
https://www.tsunagujapan.com/

※内容は2018年10月時点のものです。

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