先輩創業者の創業事例 創業後事例 技術力で人とつながる東北の企業
株式会社JD Sound[宮城県仙台市]代表取締役社長 宮崎 晃一郎さん 先輩創業者の創業事例 創業後事例 技術力で人とつながる東北の企業 株式会社JD Sound[宮城県仙台市]代表取締役社長 宮崎 晃一郎さん

技術力で人とつながる東北の企業。
ウチに営業マンはいません。

クラウドファンディングで国内史上最高の資金を調達した(株)JD Sound。決して大きくない会社だが、優秀な大学生がインターンシップで次々とやってくる。人を育て、営業までこなすのが、同社の「技術力」である。

苦難の時代

技術力に注目してくれた有名ミュージシャン

大型で高額なDJ用機材。DJという、特別な世界の人だけが使用していた機械を小型化して扱いやすくし、ホームパーティーやバーベキューでもDJを楽しめる機材が、同社が開発した『GODJ』である。宮崎晃一郎社長が大学から実社会で培った半導体の技術等をあますところなく活かし、開発した製品である。後継機の『GODJ Plus』を開発する際には、クラウドファンディングを活用し、目標金額の2千万円を大きく上回る5千300万円を調達し、当時の国内調達額1位(2016年当時)を記録したことも話題になった。

しかし創業当時から順風満帆とはいかないのが現実だった。
「技術者出身の経営者が陥りがちなのは、良いものを作れば自然に売れると思ってしまうこと。そもそもポータブルDJは、新ジャンルの機械でした。発売当初はプロモーション資金もなかったので、アマゾンでひっそりと売られていましたね(笑)その後、オーディオ機器を量販店に納める実績のある代理店とつながり、利幅が小さくなることを覚悟して、在庫を販売しながら糊口をしのいでいました」

そのような中、『GODJ』の技術力に注目し、ギター用の工フェクターの開発を依頼してくれたのが、誰もがその名前を知るミュージシャンである。
「その有名ミュージシャンが数年来温めていた世界初のBPMアナライザー(1分間のビート数を自動計算する機械)を製品化するため、当社の技術力を見込んだ音響機器メーカーが声をかけてくれたのです。それが、最初の受託案件となりました。我々の技術の結晶です」
発売以来、この製品は日本の名だたるミュージシャンが使用し、苦しい時代の同社の屋台骨を支えたのである。

新展開

創業4年目にして実現した
「いいものを作れば売れる」

創業から3〜4年は、開発経費が増え、社員も4人となり、固定費がかかる中での苦しい時代だったという。
「ハードウエアの会社は、3製品目を出すまでが大変なんです。一般的には3製品目が会社を支えると言われるのですが、そこまで持ちこたえられるかどうかが問われる世界」と宮崎さん。

同社の3製品目となったのが、GODJ Plusで好評だったスピーカー部分を独立させた『OVO』である。OVOは音楽だけでなく、人の息遣いさえも明瞭に再生できるスピーカーである。自宅を映画館にすることはもちろん、skypeを使ったテレビ会議や、プレゼンテーションでの活躍も期待できる。クラウドファンディングでは目標金額を大きく超える約1億円の資金を調達することができたスピーカーとなったのだが、この臨場感をユーザーにどう伝えたのか。

「東京渋谷の大手CDレンタルショップの店頭でプロモーションと7泊8日の無料レンタルキャンペーンを行いました。ほかにもギターエフェクターを使ってくれた音楽関係の会社や大手広告代理店など、ウチの技術力をわかってくれる人たちがプロモーションに協力してくれました。当社が3〜4年かけて積み重ねた実績によって、技術力そのものが営業力として実っているなというのが今の実感です」
創業当時の信念、『いいものを作れば売れる』は、4年目にして実現したのだ。

「メイドイン東北」と銘打ったポータブルスピーカー「OVO」。

展望

技術者を育て、地域の製造業との関係を構築

東日本大震災から1年後の2012年に創業した同社には、被災地である地元の工場と共に製品開発を行い、被災地支援をするという目標もある。金型を作り、組み立てを行う地元企業とは、地元自治体の紹介で出会った。
「最初のDJ機器の出荷台数1千300台のうち、出荷ミスはケーブル1本が足りない1件のみでした。これは海外の工場では考えられない精度です。国内工場で組み立てるとコストは若干高いかもしれません。しかし何かトラブルがあったときのコミュニケーションコストを考えると断然安いです。ウチは金型を起こす前からエ場の方に相談し、アイデアをいただくことも。何よりも皆さんが誇りを持って作ってくれるので、いいものができあがるんです」

さらに宮崎さんの出身大学である東北大学からはインターンシップを受け入れて、技術者を育てている。
「私自身が新卒で外資系企業に入社するとき、その企業は、入社後に役立つカリキュラムや知識を教えてくれましたし、それは、大学院での勉強のモチベーションにもなりました。だからこそ、技術者を目指す学生が、企業とつながる道筋を作りたいんです。ここ数年は、東北大学でロボットを作るゼミの学生が、途切れることなく来てくれています。卒業後、彼らの大半は大企業に就職していきますが、今年になってウチで3年間インターンシップをしていた学生が、当社に転職してきてくれたんです」

現在、社員10人。うち、エンジニアが9人を占める。唯一エンジニアではない女性社員は、当社のDJ機器に感銘を受け、自ら売り込み、採用された。明るいキャラクターで社員同士をつなぐ「ハブ」の役割を果たしている。同社の技術力は、営業力のみならず人材発掘の役割も果たしているのだ。

技術力がもたらす感銘が、優秀な人材発掘へと繋がる。

宮崎 晃一郎さん写真 宮崎 晃一郎さん みやざき こういちろう

デジタルオーディオ製品の開発は、製品に必要な部品選定、回路設計、それらを動作させるソフトゥェアのコーディングまで一括して同社で行っている。
宮崎晃一郎代表取締役は東北大学、イリノイ大学大学院で電子工学を学んだ。

Campany info

株式会社JD Sound
所在地:宮城県仙台市
創業年月:2012年2月
事業内容:デジタル音楽機器の設計 開発 販売
URL:https://www.jdsound.co.jp/

※内容は2018年10月時点のものです。

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