先輩創業者の創業事例 UIJターン創業事例 旅行業 株式会社DMOジャパン[大分県別府市]代表 安達 澄さん先輩創業者の創業事例 UIJターン創業事例 旅行業 株式会社DMOジャパン[大分県別府市]代表 安達 澄さん

外に出てわかった故郷の魅力。地元には宝物があった。 海外留学で感じた、故郷を誇りに思う気持ち。東京に出たからこそわかる、「故郷のためにできること」。
満を持して帰郷、創業、そして発生した熊本地震。そのとき九州男児はどう乗り越えたのか。

 大分県別府市は山と海の自然豊かな、温泉の宝庫である。この地域の資源を観光業に活かそうと「DMOジャパン」を創業した安達澄さん。「DMO」とはDestination Management / Marketing Organizationの略称であり、観光地域マネジメントを行う、着地型観光のプラットフォーム組織を指す。
 別府出身の安達さんだが、大学、就職で過ごした東京生活は、故郷で過ごした18年を超えていた。
「大学時代は故郷に帰るなんて絶対に嫌だと思っていた」という心を変えたのは、新聞社勤務時代、研修留学で訪れたアイルランドの人々の生活だった。

「訪れたのは人間よりも羊のほうが多いような田舎町ですが、地元の人たちは豊かな時間を過ごし、自分の故郷に誇りを持って生きていました。彼らが仕事帰りの夕方に、犬を連れてゴルフ場に日本車で行くのを見て思ったんです。この車を作るために、日本人は満員電車に揺られて残業をしている。一体この差は何だろうと」

 安達さんが30代前半のことである。
 そのときから、故郷に対する思いを募らせた。新聞社に勤務しながら地方創生に関する情報を集め、年に数回、帰郷する。すると友人たちが「大分は温泉しかねえ。退屈じゃわ」という。そのとき安達さんは思った。

「山も海もある大分は食べ物が美味しい。温泉は日本一。何もないどころか、宝物がたくさんあったんです」

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別府タワー1Fに、レンタサイクルの拠点を置いた。足湯やご当地グルメを提供するショップとのシェアである。

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「九州ふっこう割」で大分を満喫するツアーを企画し、新聞広告に掲載した。

インバウンド、そして地元の人に目を向けた体験型・着地型観光

 帰郷して創業した、40代という年齢について安達さんは言う。「新しいことを始めるのに、50代、60代では体力、気力が続くかどうかわからない。それができるのが40代だと思います」と。
 そこで単身赴任の状態で別府に戻り、拠点を実家に置いて精力的に動き始める。いいタイミングで、大分県産業創造機構が創業者向けの支援施設である「スタートアップセンター」を立ち上げ、事務スペースを確保、同センターの専門家からアドバイスを受けることもできた。
 地元の漁師からは、観光事業につながる人材を紹介され、勉強のために訪れた飛騨高山では、外国人向けのレンタサイクルからインバウンド向け観光のヒントを得た。さっそく企画書を作り、「大分県ビジネスプラングランプリ」に応募したところ、優秀賞を受賞する。

「地元の旅行会社の仕事といえばアウトバウンド、つまり県外の観光地に連れて行く団体ツアーがほとんどです。しかしこれからは外国人観光客を始めとしたインバウンド向けの着地型、体験型観光プランが必要です。そして何よりも、地元の人に大分の良さを再確認して欲しかったんです」

 別府タワーの1階に事務所を構え、「DMOジャパン」の本格稼働は2016年4月末を予定していた。しかし4月14日、熊本地震が発生し、別府の街から観光客が消えたのだ。
 地震の影響が残る同年8月、「DMOジャパン」を訪れた。レンタサイクルの数は24台。戻り始めた外国人観光客の中には、マウンテンバイクで湯布院温泉まで行く強者もいる。震災で新たな発見もあった。「九州ふっこう割」を打ち出して企画したツアーには、多くの大分県民が関心を示し、実にツアー参加者の6〜7割を大分県民が占めたのだ。

「地元の人は、案外大分のことを知りません。しかも年配の方は、移動の足もない場合が多い。そこでバスなどの移動手段さえあれば、『行ってみたい大分県』のニーズがあるとわかりました」

 ツアーを提携するのは地元のバス会社。DMOジャパンが本社を構えるオフィスは韓国企業とのシェアである。そして今、地元別府の大学を卒業した中国人スタッフの雇用も検討している。

「地元のバス会社は、旅行業の免許と観光のノウハウがありますが、インバウンドの発想はありませんでした。スタッフや事務所の関わりがある韓国も中国も、僕がこれから事業を広げようと考える相手国です。そんな『点と点』を繋げるのが僕の仕事です」と語る46歳の挑戦は、今、始まったばかりである。

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創業までの歩み

安達 澄さん写真
2002年
鉄鋼会社から新聞社に転職。その後、アイルランド語学研修へ。帰郷を考えはじめ、情報収集を開始。
2015年1月
新聞社を退職し、大分へ帰郷。
2015年6月
産業創造機構のスタートアップセンターで支援を受ける。
2015年8月
大分県ビジネスプラングランプリに応募。「インバウンド向けの着地・体験型観光プログラム」で優秀賞を受賞。
2015年11月
創業
2016年4月
日本公庫より融資を受ける。
14日:熊本地震発生。
2016年5月
ツアー受付けとレンタサイクルの拠点をオープン。
2016年7月
地元テレビ局の取材を受ける。ツアー企画の新聞広告を打つ。

日本公庫のUIJターン創業者支援融資制度

日本公庫 国民生活事業では、Uターン等により地方で創業する方を対象に融資利率を引下げる「創業支援貸付利率特例制度」を取り扱っている(平成28年10月現在)。

具体的には、仙台市、東京23区、名古屋市、大阪市、福岡市(以下、都市という。)に居住または勤務している方で、都市以外で創業する方を対象としている(ただし、東京23区に居住または勤務している方については、東京23区を除く都市で創業する場合も含む。)。詳しくは最寄りの支店の窓口または事業資金相談ダイヤル[0120-154-505]まで問い合わせてほしい。

安達 澄さん写真 安達 澄さん あだち きよし Campany info

株式会社DMOジャパン
所在地:大分県別府市
創業年月:2015年11月
事業内容:旅行業
URL:http://www.dmojapan.com/

※内容は2016年10月時点のものです。

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