海外展開事例 ゼロイチ回想録

株式会社RECIPRO

株式会社RECIPRO

代表取締役 児玉 崇氏

所在地福岡県福岡市

分野日本産加工食品輸出業

URLhttps://reciprojapan.com/company

進出形態輸出

進出地域イギリス、オランダ、シンガポール、台湾 など

<特別編>日本産加工食品を世界に発信する貿易商社にインタビューを行いました。

Q.

御社は日本の食品を海外に輸出する事業を中心に展開されています。また、輸出を目指す食品製造メーカーなどに対し、実務に根差した貿易ノウハウの提供(コンサルティング)も行っていると伺いました。事業を始めたきっかけを教えてください。

A.

私は起業前、食品卸企業に勤めており、輸出事業の立上げや海外販路の開拓などを経験しました。また、退職前はシンガポール子会社の経営にも携わりました。元々自身の会社を持ちたいという思いを持っていたなか、実際に事業の立上げやシンガポール子会社の経営を経験し、これを再現することで独立できるのではという感覚が芽生えてきました。加えて、シンガポールに単身赴任をするなかで家族との時間を大切にしたいと考えたことや、シンガポールでは起業が当たり前という機運に触れたことなども重なって、起業に至りました。

Q.

当初から前職のご経験を活かした起業を考えていらっしゃったのでしょうか。

A.

10年以上食品関係の仕事に携わっていたこともあり、他の業種での創業ということは考えませんでした。食品輸出は人が口に入れるものを取扱うので、貿易業務においては各国でそれぞれ異なる規制に対応するなど専門性の高い分野です。いわば参入障壁の高いフィールドなので、この分野で事業の立上げから実務まで経験を積んだことは自身の強みと認識していました。

Q.

起業されてから苦労されたこともあったのではないでしょうか。

A.

前職では会社の“看板”で取引ができていたと感じることもあり、独立後は食品メーカーの方からいかに個人として信用してもらえるかという部分で苦労しました。ただ、これはしっかりと代金をお支払いし、商品を確実に輸送するということを積み重ねて、徐々に信用が積みあがるものなので、今ではかなり解消されたと思います。逆に、想定以上のペースで貿易が回るようになったため、前払いが増加し、創業初期は資金繰りの管理も大変でした。この部分で相談に乗ってもらったことが、公庫と取引を開始したきっかけでした。

Q.

海外販路はどのように開拓していったのでしょうか。

A.

海外は距離が離れている分、「知っている人からの紹介」だと成約率が高くなると感じます。私は「ディフェンシブな営業」と呼んでいますが、反対に、アクティブに突然訪問をして新規開拓の営業をかけても、海外バイヤーはなかなか信用してくれません。一つはこのディフェンシブな営業で、知り合いのメーカーが海外バイヤーに当社を紹介してくれたことが、販路開拓では大きかったです。

また、大手の商社があまり手掛けない細々とした取引をケアする形で信用を積み重ねていくことも、事業の軌道化に繋がったと思います。

加えて、最近では提案ベースの営業から取引に結びつくこともあります。「今アメリカでこういう商品が流行していますが、新しいプロジェクトとして台湾でも展開してみませんか」と持ち込んでみるような形です。

Q.

前職からのご縁やこれまでのご経験が活かされていますね。取扱商品や海外販路を順調に確保されていますが、その背景にある御社独自の強みはなんでしょう。

A.

貿易だけにフォーカスし、それ以外の経費は一切かけないというところを目指しています。ある程度大きな商社では、人件費などいわゆる間接費が大きく、それをカバーする利益率が設定されます。そうすると、海外での販売価格が高くなり現地で売れない、そのためメーカーに販売価格を下げて対応してもらうということが発生してしまいます。当社では貿易業務そのものに直接関係のない、こうした間接費を徹底して削減することで、日本の食品メーカー、海外バイヤー、海外消費者全てが喜んでくれるような取引を目指しています。もちろん当社にとって適正な利益は必要ですが、貿易は商社が稼いで主役になる取引ではなく、あくまでメーカー様の商品を適正な価格で海外に届けていくことと考えています。

海外バイヤー開拓を目的とした支援先メーカーの国内展示会出展
海外バイヤー開拓を目的とした支援先メーカーの国内展示会出展
Q.

日々世界に日本産の商品を届けられるなかで、海外からみた日本商品という観点ではどのような印象をお持ちでしょうか。

A.

私自身、やはり日本産商品は世界最高のクオリティを持った商品だと感じています。それは味もそうですが、食品製造に関する技術や包装に至るまで、他国の商品とは全く異なる水準にあると思います。この点で、「日本産」ということが海外でブランド化しており、商品選びに失敗したくない海外の方には日本産商品が選ばれやすい土壌ができています。ただ、それでも競合は激しいので、「日本でしか手に入らない商品」や「製造技術が高く他国では作りようがない商品」といったカテゴリーの商品だと、より海外での販売に強みがあると感じます。

Q.

御社として注目している日本産の商品などはありますか。

A.

実は特別このカテゴリーに注目という商品はありません。海外市場も嗜好の移り変わりが早く、5年前は誰も知らず売れなかったものの、今は認知が完全に広がって人気になっているという商品も多いです。商品のカテゴリーよりも、そもそも輸出ができる商品なのかという前提が重要と考えています。まずは添加物や賞味期限など輸出ができるかの基準、つまり最初のハードルを越えた商品であるかという観点で、商談等ではお話をさせていただいています。

ヨーロッパ向け輸出が伸びている支援先メーカーの抹茶商品
ヨーロッパ向け輸出が伸びている支援先メーカーの抹茶商品
Q.

御社では輸出に関するコンサルティングサービスも行っていますが、メーカーの方からはどのような相談が多いでしょうか。

A.

書類の作り方や海外企業との契約書の取り交わしなど、細かいですがまさに実務に関する部分の相談が多いです。海外に進出したいメーカーからすれば、全てが初めてのことなので分からない事ばかりです。一方で、こうした本当に細かい実務のところは、責任も伴うので、実は明確な答えをもらえることが少ない部分です。そうして困ったメーカーが当社に相談に来られることが多く、私としてはこれまでの経験を踏まえた方針をクリアにお伝えするようにしています。頼って来ていただいた以上、最低限「こちらの方がリスクは低い」など、方針決定に資するようお話をさせていただくことを心掛けています。

Q.

御社の今後の展望と、これから海外展開を目指す企業へのメッセージをお願いします。

A.

先述のとおり、商社は間接費が重く、貿易取引にあたってはどうしても利益率を高く設定しないといけません。その結果、商品の価格が上がり取引が決まらない、海外輸出が進まないという八方塞がりの状況にいるメーカーが多いのではと思います。当社としてはこうした状況に風穴を開けるべく、例えば、生成AIを活用した貿易実務の効率化、輸出にかかる間接費の削減など、輸出のハードルを下げる取組みに力を入れていきたいと考えています。

海外展開にあたっては、現地の文化やニーズを理解し対応する「マーケットイン」の視点が重要です。日本の商品に対する品質や信頼性は海外で高く評価されていますが、同時に相手の立場に立って、商品やサービスを見直していく姿勢も求められます。自社のこだわりは大切にしながらも、市場に合わせる柔軟性を持って、海外展開にチャレンジしていただきたいと思います。