海外展開事例 ゼロイチ回想録

エアリードエクスパティーズ合同会社

エアリードエクスパティーズ合同会社

CEO 宗安 秀夫氏(左)
CTO 三塚 幸彦氏(右)

所在地東京都

分野尺八の製造・販売

URLhttps://aireedx.com/jp/

進出形態輸出

進出地域北アメリカ、ヨーロッパ、東アジア

業種・取扱商品楽器の製造・販売

日本の伝統楽器である尺八と現代の金属加工技術を組み合わせた「メタル尺八」を開発し、
世界中の尺八ファンに向けて販売。

Q.

どのような経緯で「メタル尺八」という商品の開発に至ったのですか?

A.

当社の最高技術顧問(CTO)である三塚氏は、自身が尺八の奏者でもあります。三塚氏は、長年尺八を演奏してきた経験から、もともとは竹が素材である尺八について、自然素材であるという良さはもちろんあるのですが、それゆえに品質が一定でない点や、乾燥等の影響を受けて割れてしまうといった点に課題を感じていました。私(宗安氏)も尺八の普及活動などに取り組んでおり、尺八愛好家が集まるコミュニティで、三塚氏とこれまでにない新しい尺八の開発について熱く語り合い、2019年2月に当社を設立しました。

従来の竹に替わる素材として、金属に着目しました。同じ設計で量産が可能となるので品質が安定し、割れてしまうという不安もなくなるからです。「金属製だと音が変わってしまうのでは?」という疑問を持たれるかもしれませんが、尺八は空気の振動で音色を出しているため、素材が変わっても尺八の持つ豊かで深い音色を維持することは可能だと考えました。

しかし、アイディアがすぐに商品として形になったわけではありません。開発に至るまでは、精密加工を得意とする金属加工業者の協力も得て、理想的な音色となる構造設計を追求し、幾度となく試行錯誤を重ね、2020年7月頃にようやく販売を開始できる体制となりました。

当社製品のメタル尺八「AireedX」
当社製品のメタル尺八「AireedX」
Q.

メタリックでスタイリッシュな見た目は、従来の尺八とは全く違った印象ですね。

A.

商品を見て、「スタイリッシュ」や「カッコイイ」と言ってもらえることは、非常に嬉しい気持ちになります。そういった印象は、初心者の方が楽器を始める動機にもつながると思いますので、尺八文化の裾野拡大にもつながっていく商品だと考えています。

Q.

当初から海外への販売を意識されていたのですか?

A.

日本古来の伝統的な楽器であり、国内向けの販売が中心ではありますが、当初から海外への販売も視野に入れていました。日本の伝統文化は海外でも人気があり、尺八も世界各国でコンサートが開催され、海外にも演奏家として活動する方もいるなど、海外でも認知されてきています。日本のアニメに尺八の音色が使われていて、そのアニメが放送された国で尺八が人気になるといったこともありました。

また、海外への販売においては、輸送時のトラブルや、日本との気候の違いなどもあり、金属の素材で割れの心配がなく、分割してコンパクトに収納可能で持ち運びが便利なメタル尺八のニーズは大きく見込めると考えました。現在、海外向けにはホームページを通じたオンライン販売を行っており、アメリカ、イギリス、ドイツ、中国など、幅広い国に販売しています。

Q.

海外への販売にあたり、どのような点が課題となりましたか? また、その課題をどのように克服しましたか?

A.

海外向け販売は少しずつ増加していますが、まだまだ伸長が見込めると考えています。国内向け販売にも共通することですが、より多くの販売につなげていくためには、メタル尺八を実際に手にとってもらい、商品の良さを実感してもらうことが最もよい方法だと感じています。一方で、国内の方であれば、当社にお越しいただければ商品を実際に手に取ってもらえますが、海外の方の場合は来てもらうことは難しくなります。2025年4月にテキサスで開催された「ワールド尺八フェスティバル」では当社製品の展示を行いましたが、やはり実際に手にとって試してもらえると多くの方にメタル尺八の良さを理解してもらうことができ、改めて海外向け販売の市場性を確認することができました。

ただし、実際に手に取って試してもらうことが最も良い方法だと言っても、海外に行って現地で展示・販売することを継続的に行っていくことは、現地に拠点がない現状ではなかなか難しい部分もあります。そこで、メタル尺八の良さを理解してもらう手段として、動画を作成・配信しています。日本や海外の著名な尺八奏者にメタル尺八を演奏してもらっている動画や、尺八に関する対談の動画などを日本語・英語で作成し、海外の方にも商品の良さがきちんと伝わるように取り組んでいます。

こうした取組みを強化していくにあたっては、資金調達も必要になりました。普段お世話になっている税理士の先生から「資金調達の幅を広げること」の重要性についてアドバイスもあり、日本公庫の融資を利用しました。税理士の先生は日本公庫のことをよくご存知で、スムーズに借入手続きを進めることができました。

テキサスでの尺八フェスティバルの様子
テキサスでの尺八フェスティバルの様子
Q.

今後の事業展開はどのように考えていますか?

A.

世界中のより多くの方に、メタル尺八の良さを伝えていきたいと考えています。例えば、尺八の教育の場面でも、メタル尺八の利点はあると考えています。教える側と習う側で同一の品質の楽器を用いることで、より効果的な教育が可能となり、初心者にとっても学びやすくなります。メタル尺八をより多くの方に知ってもらい、使ってもらうことで、広く尺八の文化の普及・発展にもつながっていくと信じています。

Q.

これから海外展開を行おうと考えている事業者の方に向けて、「海外展開にはこれが大切!」というポイントは何ですか?

A.

海外向けの販売だからといって躊躇することなく、「まずはやってみる」と挑戦する気持ちが何より大事だと思います。また、海外の方は、「オリジナル」を求めることが多く、商品の背景などを丁寧に伝えることを意識した方がよいかもしれません。必ずしも「ナンバーワン」である必要はありませんが、「オンリーワン」となる独自性の部分を、ストーリーとしてきちんと伝えていくことが重要になると思います。