
進出形態輸出
進出地域東アジア、北アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア
業種・取扱商品製造・小売(食品)
創業から80年を迎える地域密着型の老舗和菓子店は、
15年ほど前にネット販売を通じた輸出を開始。
主力商品の最中やどら焼きを世界各国に届けている。
海外販売を始めたきっかけを教えてください。
当社は1946年(昭和21年)創業で、JR下館駅前に店舗を構えています。小麦や乳、卵を使わず、アレルギーのある方でもお召し上がりいただける「館最中」や、茨城県産のブランド卵・奥久慈卵を使用した黄味餡をホワイトチョコで包んだ「きぬのまゆ玉」が主力商品です。
戦後の復興、高度成⾧時代に商いは大きくなりましたが、1980年代に入るとモータリゼーションの流れで駅前の人通りが減りました。お客様が来ないところで待っていても先細りになると考え、それならこちらからお客様の集まるところに行こうと茨城県内の大型ショッピングセンターへの出品を始めました。
バブル崩壊以降、日本経済が低迷する中、さらに商圏を広げようと模索を続けました。
2000年代になりインターネットを通じた販売が徐々に広がりを見せる中、当社も2008年4月に楽天市場にショップを開店。その年の6月に和菓子の海外向け販売をスタートしました。

時代の潮流にのったわけですね。
ショップを開いた時点では当社は後発で、レビューもとれませんでした。しかし、すぐに海外向け販売に取り組むことが存在を示すチャンスと考えました。ただ、海外販売については何も知識がなく、自社の商品を英語で何と表記したらよいのかさえも分かりませんでしたので、一から模索しながら始めたというのが実際です。始めてからはいろいろな国から注文が寄せられるようになったのが嬉しくて、事務所の壁に世界地図を貼ってその国を赤く塗りつぶしていきました。徐々に赤色の面積が増えていき、自分の作った商品が世界各国に届けられていくのを実感できることは、従業員にとってもモチベーションになっているようです。今では世界36カ国に湖月庵のお菓子を届けるまでになりました。

海外展開する際に留意したことは何ですか。
海外向けは最中やどら焼きなどの詰め合わせを中心に販売しています。冷凍すれば賞味期限は延ばせますが、最中などは常温のまま、おいしい状態で早く届けることがカギになります。当社ではEMS(国際スピード郵便)等を利用しております。コロナ前ですが、例えばタイ・バンコクには夕方に発送して翌朝9時に届いたこともありました。
こうして送ったお菓子には、ネットで感想が寄せられ、お客様に喜んでもらっているのが分かります。直接対面していなくても、海外の方に感謝してもらえたという手応えを感じられるのは、越境ECによる輸出の醍醐味と言えると思います。

課題もあったのではないですか。
国によっては住所表記が日本とまったく異なります。送り状のスタイル、枚数も違います。原材料や添加物の規制も異なり、食品が送れない国もあります。当然のことながら、送料も違うので、すべての注文に対して同じように売ることはできません。こうしたことを一つひとつ丁寧に確認し、課題をクリアしていかなければ販売は拡大できません。また量を増やそうとすればリスクも生じます。PL保険のことなどは、JETROの方に色々と相談しながら進めています。
海外販売は今後、どのように進めていきますか。
感染症拡大下では最初の緊急事態宣言が出されたときに売上が半減し、先が見えず苦しい思いもしましたが、ネット販売が一早く戻り、安堵したのを覚えています。
ネット販売は海外展開する上では早道となります。最初は少し手間がかかりますが、やろうと思えばすぐに取りかかれて、ハードルは低いと思います。加えて、販売をより一層大きくするためには、海外に販路を持つ卸・商社の力も重要です。その先にいらっしゃる多くの国のお客様に喜ばれるよう、笠間の栗や奥久慈の卵を使った黄身餡など茨城らしさを追求した商品に磨きをかけていきます。