農林水産・食品事業者のマーケットイン輸出事例集『GLOCAL ACTION』
- 所在地
- 宮崎県串間市
- 業種
- さつまいもの生産・加工・販売
- 経営規模
- 250ha(自社農場30ha、契約農家220ha)
- 年商
- 15億円
- 輸出開始年
- 2012年
- 輸出先
- 香港、台湾、シンガポール、タイなど
- 売上に占める輸出の割合
- 2014年 3% 2020年 20%
- 輸出モデル
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- 海外でニーズの高い小ぶりなさつまいもを独自の栽培方法で効率的に生産
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当社は青果用のさつまいもに特化し、生産から加工・流通・販売をワンストップで行う過疎地域発の農業ベンチャー。自社農場と契約農家150戸、計250ha の農場で生産した紅はるか、宮崎紅、シルクスイートなど5品種を組み合わせ、独自ブランドで販売している。
経営のターニングポイントは、2011年に市場出荷から直接販売へ転換したこと。市場流通による中間マージンをなくすことで生産者の利益を拡大し、高品質の商品を割安で提供できると考えた。生産者の顔が見えるパッケージや独自キャラクターなど工夫を凝らしながら、自ら全国の小売店に営業をかけ、価値を認めてくれる取引先を増やし、直販開始から5年で売上高を10倍に伸ばした。
輸出を開始したのは12年。県内の商社がシンガポールへ輸出を開始するという新聞記事を見て、すぐに「うちのさつまいもも輸出してほしい」と頼みに行った。そこからは、電話帳を片手に商社や貿易と名の付く企業に片っ端から電話し、少しずつ取引先を増やした。大阪や東京などの大都市圏へ流通するには、10t単位でないと物流コストが相当かさむ。そう考えると、東京よりも海外に出す方が安かった。さらなる輸出拡大を見込み、13年に法人化。台湾、香港への輸出も開始した。
輸出開始当初は、慣行栽培で生産した規格外の小ぶりのさつまいもを出荷していた。現地で流通するベトナム産のさつまいもに比べて、日本産は甘味が強く富裕層から人気が高い半面、採算性がネックとなっていた。そこで、畝を小さく、間隔を狭くして、慣行栽培の2倍もの10a当たり5000本の苗を植える「小畝密植栽培」を導入。生産量は慣行栽培より10%下がるが、逆に販売に適したサイズの歩留まりが30%上がるため、出荷量は増える。アジア圏ではさつまいもを炊飯器や電子レンジで蒸して食べることが多く、小ぶりなサイズのニーズが高い。小ぶりなさつまいもを効率的に生産することで、国内販売と同等の利益を確保する見通しがついた。
- 包装や貯蔵の改善で出荷ロス削減と周年安定供給を実現
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船便輸送において問題となっていたのが、結露によるカビや腐敗の発生。従来の包装では長時間輸送時の鮮度保持が難しく、平均30%、多いときは60%以上も廃棄になっていた。廃棄率を勘案して末端販売価格を高くすると、現地の日系スーパーや百貨店といった一部の高級店でしか取り扱ってもらえなくなる。そこで、包装資材メーカーに相談し、結露を防止する専用のパッケージを共同開発・実用化した。包装の原価は従来品の5~6倍にも高くなったが、廃棄率は10%程度にまで抑えられるようになった。
国内外の出荷量の増加に対応するため、16年に収穫時についたキズを高温多湿条件下で処理するキュアリング貯蔵庫を整備。17年には日本トップクラスといえる大規模な出荷作業棟と大型低温貯蔵庫を建設した。従前は5~6カ月だった保存期間が9カ月まで伸び、周年安定出荷が可能となった。20年の輸出量は約1200tと、当社が日本のさつまいも輸出のシェア約1/4を占めている。
当社の輸出事業の根底にあるのは、「生産者に適正な利益を」という思い。法人化以前、当時500g50円で国内出荷していたさつまいもの小袋が、視察で訪れた香港の店頭では700円で販売されており、衝撃を受けた。さすがにおかしいと思って調べると、廃棄や物流コストもあるが、中間業者の存在も複数見えてきた。そこから、「輸出を直接行えば生産者の利益をもっと増やせるはず」という考えに至った。
今では当社が契約農家を連れて海外へ出向くこともある。どういう場所でどんな人に買ってもらっているかを生産者にも肌で感じてもらい、「誇りになる」という声を何度も聞いた。自分の利益のためだけの輸出ならば、しない方がいい。生産者の高齢化・離農に伴い、収穫代行や農業機械のリース、契約農家の社員化など、営農継続や事業承継を後押しする取組みも当社は行っている。
生産者へ利益が還元できるよう、世界一のさつまいも総合企業を目指して取り組んでいく。-
独自開発した鮮度保持袋で出荷ロスを削減
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光センサーで糖度・空洞・腐れを測定
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ステージ | アクション | ポイント | |
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準備 ・ 開始 |
2011年 | ■市場出荷を縮小し、日本全国に直接営業を展開 |
●独自キャラクター「あおいちゃん」をデザインし、ブランド化 |
2012年 | ■シンガポールへ輸出開始 |
●輸出に関する新聞記事を読み、記事で紹介されていた商社にアプローチ |
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継続 ・ 事業化 |
2012年 | ■「小畝密植栽培」を導入、海外ニーズの高い小ぶりなさつまいもを効率的に生産 |
●輸出で国内販売と同等の利益を確保する見通しがつく |
2013年 | ■法人化。香港、台湾へ輸出地域を拡大 |
●電話帳を片手に商社や貿易と名の付く企業へ積極的にコンタクト |
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発展 ・ 投資 |
2015年 | ■独自の鮮度保持袋を共同開発・実用化 |
●外資系・現地系スーパーに販路拡大 |
2016年 | ■キュアリング貯蔵庫(250t収容)建設 |
●補助事業(農畜産物輸出拡大施設整備事業)や公庫資金などを活用。周年出荷体制を強化し、輸出量を拡大 |
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2017年 | ■出荷作業棟と大型低温貯蔵庫(1200t収容)を建設 |
ビジョン
「強い農業はこえていく」世界一のさつまいも総合企業を目指す