農林水産・食品事業者のマーケットイン輸出事例集『GLOCAL ACTION』
- 所在地
- 東京都台東区
- 業種
- クラフトジン製造・販売
- 経営規模
- (2026年計画)生産量450t
- 年商
- (2026年計画)20億円
- 輸出開始年
- 2021年
- 輸出先
- 英国、香港、シンガポールなど
- 売上に占める輸出の割合
- (2026年計画)60%
- 輸出モデル
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- 再生と循環のエシカル生産にこだわった蒸留所を東京都内に開設
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当社は2020年2月設立の蒸留ベンチャーで、日本酒造りの過程で廃棄されてきた酒粕などを再利用してクラフトジンを生産・販売している。
私はロンドンで学生時代も含め長年生活し、もともとジンが大好きだった。ジンはジュニパーベリーを基本の香りづけとしつつ、果実・根・茎・葉・花など加えるボタニカルによって多様な香りや味を楽しむことができる。また、英国では18年にジンの市場規模がウイスキーの市場規模を上回るなど、その可能性や成長性を肌身で感じていた。
同じ頃、新潟県佐渡島で酒蔵を経営する親戚から私と同年代で面白い起業家がいると紹介されたのが後に共同創業者となる山本裕也だった。ちょうど山本はケンブリッジ大学に留学、自分はロンドンでマーケティング会社を運営しており、英国で出会ってすぐに意気投合。山本が手がける日本酒セレクトショップ「未来酒店」の海外展開プロジェクトに私も関わるようになった。そのなかで、酒造りの工程として発酵されたもろみの約2/3が日本酒として出荷され、残り約1/3が酒粕となり産業廃棄物として処分されていることを知る。
この酒粕を蒸留することでジンとして再生できないか。廃棄していた酒粕が酒蔵の売上となり、その売上が酒米農家にも還元される。大好きなジンを通じてそんな循環経済を実現したいという情熱に突き動かされ、山本らと共に起業を決意した。
ジンの市場規模は国内より海外の方が大きいため、当初から海外をメインターゲットとし、生産は小ロットでもよいと考えていた。しかし、海外で本格的に商流を構築するためには、味・品質やストーリーに加え、ロット確保や価格設定も重要な要素であり、スケールメリットを追求する必要があることがわかった。そこで、国の輸出関連の補助事業や日本公庫の輸出促進資金制度、クラウドファンディングなどを活用し、大がかりな初期投資を実施。21年1月にはスピリッツの製造免許を取得し、再生と循環のエシカル生産にこだわった蒸留所を東京都内に建設した。
- 「エシカルだけど美味しい」ではなく、「エシカルだからこそ美味しい」
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コロナ禍により輸出は計画より1年遅れとなったが、却って国内市場としっかり向き合う良い機会になった。改めて気づいたのは国内販売と海外輸出は車の両輪であること。国内でのメディア露出や渋谷でのポップアップストア出店などにより、シンガポールや中国など海外からも問い合わせが寄せられた。また、英国の品評会で最高賞を受賞したことで、国内でも高級百貨店から多店舗展開する高級スーパーなどへ販路拡大につながった。
現在は海外営業も再始動し、21年8月に英国に現地法人を設立。また、共同創業者の山本が展開する未来酒店がロンドンに新規出店することから、その一画に当社の販売コーナーを設ける予定だ。10月に英国へ向けてコンテナに他の日本酒と混載で2400本のジンを出荷。当面は未来酒店が輸入代理店兼販売店となるが、将来的には現地法人を窓口に、欧州への輸出を本格的に拡大していく。
本格輸出に向けた当社の強みは、エシカル、品質、メイドインジャパンの3つ。欧州諸国は環境先進国であり、エシカル消費への関心が日本より高い。また、当社のジンは品評会などで認められた品質を誇る。酒粕を蒸留すると、麦などを原酒とする通常のジンよりも遥かに香りが豊かになる。エシカルだけど美味しいではなく、エシカルだからこそ美味しい。そこにはメイドインジャパンの技術力や日本の食文化というソフトパワーも伴う。これらで世界にサプライズを起こしたい。
現在、ジンの原料となるベーススピリッツはパートナーの酒蔵に製造委託しているが、22年から自社生産に切り換えていく予定だ。このことで素材の選択肢やジンの可能性をもっと広げられる。
当社のモットーは “Starring the hidden gem” (隠れた才能をステージへ)。その価値に今は気づいていないだけで、可能性のある原石が日本にはまだまだ多く埋もれている。実際に日本で事業を展開し、改めてそのことを認識できた。日本の生産者・メーカーと一緒にその潜在的な可能性を引き出し、世界のステージへと共創していきたい。-
パッケージデザインは社内デザイナーが監修
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蒸留所では販売・バースペースを併設
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ステージ | アクション | ポイント | |
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準備 ・ 開始 |
2020年 | ■会社設立。酒粕を活用したジンやビールを活用したジンの販売を開始 |
●小野氏・山本氏ほか醸造家・デザイナー・元アナウンサーが共同で発起 |
■自社蒸留所の建設に向けて、クラウドファンディングを実施 |
●2か月弱で1000万円以上の支援を集める(達成率330%超) |
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継続 ・ 事業化 |
2021年 上半期 |
■スピリッツ製造免許取得、東京都内に蒸留所を建設 |
●補助事業(6次産業化市場規模拡大対策整備交付金)や公庫資金などを活用 |
■国際酒類品評会IWSCで最高金賞を受賞 |
●高級スーパーなど、国内でも販路を拡大 |
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■1.4億円超の第三者割当増資を実施 |
●新たな蒸留所建設と海外展開へ投資 |
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発展 ・ 投資 |
2021年 下半期 |
■英国に現地法人を設立 |
●英国やドイツの展示商談会に参加 |
■英国、香港、シンガポールへ輸出開始 |
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2022年 | ■ベーススピリッツの蒸留設備を導入予定 |
●自社一貫生産に切り替え。素材調達先の拡大、商品の多様化を図る |
ビジョン
“Starring the hidden gem”(隠れた才能をステージへ)