地元へのUターンを機に継ぐスタで念願のうどん店を開業
素材にこだわっただしや麺が支持され黒字経営

大阪市東住吉区で20年以上続くうどん店が、Uターンした飲食店の創業希望者に引き継がれた。うどんにかける強い情熱で引き継いだ味に改良を重ね、黒字経営が続いている。

Story’s Point

  • 大阪市東住吉区にある駒川商店街で20年以上続くうどん店。株式会社だいきちフーズ代表取締役の前部哲也氏は、68歳の時、自身の高齢化に加えて昨今の原材料高などから引退を決意。後継者不在のため、令和6年3月に日本公庫の事業承継マッチング支援に登録した。
  • 譲受側の小林研二氏(現代表)は、Uターンを機に夢だった飲食店経営について考えるようになった。全国のうどんを食べ歩き、お店を持つなら夫婦で「地域に愛されるうどん屋さん」と決めていた。50歳になってその思いが強くなり、令和6年11月に日本公庫の事業承継マッチング支援に登録、大阪市内などいくつかの候補先を回っていた。
  • 日本公庫が両者を引き合わせ、令和6年12月に初回面談が実現。その後、日本公庫や大阪府事業承継・引継ぎ支援センターの協力を得て、令和7年3月に両者は株式譲渡契約を締結。小林氏は念願だったうどん店を開業した。
左側(譲受側):現経営者 小林 研二氏 右側(譲渡側):先代経営者 前部 哲也氏

Company Information

株式会社だいきちフーズ

株式会社だいきちフーズ
所在地 大阪府大阪市東住吉区 創業 平成12年12月 
業種 うどん店
従業者数 5名

譲渡側:株式会社だいきちフーズ(代表:前部氏)
後継者不在のため第三者承継を検討。日本公庫に相談し、事業承継マッチング支援に登録。令和6年4月からノンネームで後継者を募集していた。

譲受側:継ぐスタ希望者 小林 研二氏
化学メーカーの製造畑で会社員として勤務。全国のうどんを食べ歩き、地元大阪でうどん店を経営したいと考え、継ぐスタを希望していた。

ーー事業を譲り受けてしばらく経ちました。率直な感想をお願いします。

譲受側:小林氏

前部さんから事業を譲り受けて、令和7年3月に新装開店しました。開店当初は赤字の状態で、数ヵ月は試行錯誤が続きましたが、8月ごろから黒字に転じることができました。今は右肩上がりで推移しています。いくつか要因はありますが、一番はだしの改良を重ねたことが客足の伸びにつながっていると考えています。おかげさまでお客様の評判は良く、うどんのスープを飲み干すお客様が増えました。世の中の健康志向が強くなるなかで、なるべく化学調味料は使用せず、できる限り素材の味を活かしたいと考えています。ちなみに、スープは飲み干してもらっても大丈夫なように塩分の量を調整しています。一方で、麺についても若年層が好むコシの強い麺を出すようにしました。来店客の声を活かして作ったオリジナル麺になります。譲り受ける前から取り扱っていた大阪独特の柔らかい麺も高齢者に人気があるので残しています。その他、セットメニューを充実させたり、女性客や主婦層をねらってミニ丼の種類を増やしたりしました。提供方法にも工夫を凝らし、麺の量やセットの丼のサイズを選べるようにしています。

譲受側:小林氏

ーーそれでは“継ぐスタ”での創業を考えた動機と経緯について教えてください。

譲受側:小林氏

長らく関東の化学メーカーに勤務し管理職まで勤めていましたが、若い頃から飲食店経営の夢をずっと持ち続けていました。身内の都合もあって地元関西にUターンすることになり、「社会人として経験を積んだ今だったら飲食店経営ができるのではないか」と思ったのです。うどんを選んだのは、私も妻も純粋にうどんが好きだったから、子供の頃から身近にあった食べ物だったから、という理由もあるかもしれません。自分でお店を探していくなかで、最終的に日本公庫の事業承継マッチング支援に登録しました。

ーー前部さんとお店の印象について教えてください。

譲受側:小林氏

前部さんと出会う前、お店の雰囲気を知りたかったので下見で食べに来ました。令和6年12月に初回面談を行い、前部さんにはご夫婦でご同席いただきました。何より楽しく働く姿、一生懸命な接客はとても印象的でした。私たちがお店を引き継いだ後も、そうした姿勢は必ず見習おうと妻とも話していました。前部さんの気持ちを大切にしたいと考え、屋号もそのまま引き継いでいます。また、個人柄も優しそうな印象だったので、必要なことは何でも相談できるかなと感じました。実際にお店を譲り受けた後も、連絡を取り合っています。お店の印象については、人通りの多い立地や明るい店内の雰囲気が気に入りました。実際に店内で少しお手伝いをさせてもらったのですが、譲り受けた後のイメージが湧きやすかったですね。店の大きさも客席が28席と私の理想でした。

譲受側:小林氏

ーーその後の事業承継の流れについて教えてください。

譲受側:小林氏

令和6年12月の初回面談では、前部さんの顧問税理士を交えて、事業承継・引継ぎ支援センターや日本公庫の担当者も加わって、うどん店の決算状況や株式譲渡、M&Aにおける留意事項などを確認したほか、譲り受けた後の資金調達などについて話し合いました。その後、3月の株式譲渡契約に向け、事業承継・引継ぎ支援センターからご紹介いただいた専門家の協力を得て、株式譲渡契約書の作成やテナントの賃貸借契約手続きなどを進めました。また、前部さんとは1ヵ月間ではありますが修業期間を設けてもらい、お店の味を習得するため指導を受けながら開店に向けて準備を進めました。

譲受側:小林氏

ーー修業期間のことについて教えてください。

譲受側:小林氏

当時の営業時間11時から17時まで接客しながら指導してもらいました。実際に営業しながらの修業なので、忙しい時はたいへんなのですが、前部さんの楽しく働く姿を見て、私たち夫婦も心のどこかで“楽しみながら引き継ごう”との気持ちで臨んでいました。前部さん夫婦は、夫婦それぞれで役割を分担して指導されていたように感じます。どちらかというと奥様には作業目線に立った指導をしてもらい、前部さんはなぜその作業が必要なのかといった全体観をふまえて丁寧に説明してくれました。だしの取り方は、前部さんから直接教わりました。お店の運営についても、厨房機器の使い方から仕入先や取引金融機関との関係まで一つひとつ教えてもらいました。

ーー事業を引き継ぐにあたって感じた不安や課題はありますか。

譲受側:小林氏

事業を引き継いだ当初は、正直なところ「どうやって黒字化するか」という点が一番の不安でした。原材料価格の上昇や人手不足など、飲食店を取り巻く環境は厳しく、単に味を良くするだけでは経営は成り立たないと感じていました。そこでまず取り組んだのが、売上の底上げと作業効率の改善を同時に進めることでした。売上面では、商圏を広げるための広告配布や、グルメサイトへの掲載、フードデリバリーサービスの活用などに取り組み、知名度向上を図りました。あわせて、既存メニューのレシピや味付けを見直し、マニュアルを整備するとともに、季節メニューの開発やポスター作成、メニュー表の刷新など、商品力の強化にも力を入れました。一方で、販売量が増えても無理なく回せるよう、店内レイアウトの変更や新たな厨房設備の設置、仕込み方法の見直しを行いました。さらに、注文用ハンディ端末やPOSレジシステムを導入し、会計やオペレーションの精度向上にも取り組みました。収益面では、損益分岐点を意識した管理と原価計算の仕組みを整え、適正価格を見極めたうえで一部価格改定を行いました。こうした一つひとつの取組みを積み重ねた結果、徐々に数字が改善し、黒字化につなげることができたと感じています。専門家や日本公庫の支援、そして前部さん時代からの取引先の存在も大きな支えでした。

譲受側:小林氏

ーー将来の目標を教えてください。

譲受側:小林氏

2~3年後には2店舗目を出したいと考えています。売上が増加すれば従業員の給与を引き上げることができ、さらに店舗を増やして従業員数を増やすことで、休みも取りやすくなると考えています。従業員の福利厚生の改善は大切ですね。一人ひとりが無理なく長く働ける環境づくりにも力を入れていきたいです。加えて、今はオリジナル麺を製麺所で作ってもらっていますが、将来的には自家製麺にしたいと考えています。

ーー第三者承継を検討している人にメッセージをお願いします。

譲受側:小林氏

第三者承継とは単にお店を譲り受けるというのではなく、「地域そのものを引き継ぐ」という価値が込められていると思います。前経営者の良い部分は尊重しながら、必要であれば柔軟に改善することで、事業は大きく生まれ変わります。継ぐスタは、顧客、立地、店舗資源がある分、ゼロからの創業と比べても事業成功の確率は高く、非常に魅力的な選択肢です。私たちが選択した飲食店経営も厳しい世界ではありますが、自分の成長、会社の成長、地域に愛され貢献していくという強い気持ちがあれば、さまざまな苦難も乗り越えることができると思っています。私たちも、前部さん夫婦のように心のどこかで“仕事を楽しむ”という気持ちを忘れないようにしたいですね。

譲受側:小林氏

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