バイヤーとしての熱意がつないだ福井の家具店承継
「品質」と「価格」のコンセプトが人気に

現経営者は、継ぐスタで業歴20年超の福井県の家具専門店を譲り受けた。「確かな家具を届けたい」というバイヤーとしての熱意は前経営者と共通。譲受後、品質と価格にこだわった家具が若年層に好評で業績を伸ばしている。

Story’s Point

  • 福井県福井市で高品質な家具を求めやすい価格で提供する家具販売店「ワイツー家具」。開店当時は県内で数少ないアウトレット家具専門店として創業しており、商品の確かさとお値打ちさが評判で支持を広げていた。代表の野上氏には後継者が不在だったため、第三者承継を検討。当初は事業承継・引継ぎ支援センターで後継者探しをしていたが、同センターの勧めもあって、令和5年9月に福井県で開催した日本公庫のオープンネーム後継者募集イベントに登壇した。
  • 譲受側の江端秀隆氏(現代表)は、家具業界に従事して30年のキャリアを持つ。高価な印象が強い家具に対するイメージを変えたいと、クオリティとリーズナブルさにこだわったお店を始めたいと独立を志向。日本公庫のホームページで、オープンネーム後継者募集イベントに登壇したワイツー家具の存在を知り、交渉を希望した。
  • 2人は共に家具業界で活躍し、「確かな家具を届けたい」とのバイヤーとしての熱意は共通。令和6年12月に株式譲渡契約を締結。店舗改装を経て、令和7年2月に新体制での営業を開始。子育て世代など若年層からの注目が集まり、譲受前に比べて売上は増加傾向にある。

Company Information

有限会社ワイツー家具

有限会社ワイツー家具
所在地 福井県福井市 創業 平成15年12月 
業種 家具インテリア用品販売
従業者数 3名

譲渡側:有限会社ワイツー家具(代表:野上氏)
代表の野上氏は福井県内の老舗家具店で長年営業部長を勤めた後、家具専門店を経営。80歳を過ぎ、後継者不在であったことから、日本公庫のオープンネーム後継者募集イベントに参加した。

譲受側:継ぐスタ希望者 江端 秀隆氏
大手家具店で営業部長や店長を経験。いつかは自分のお店を持ちたいと独立を志向して、譲り受けることのできる家具店を探していた。

ーー譲受後の経営状態について教えてください。

譲受側:江端氏

現在2,500点近くの商品を取り揃えています。「良品安価」のコンセプトで、デザイン性とコストパフォーマンスの両方を追求しています。先代は既製品を低価格で販売する商売だったと思いますが、私の場合は「こういう家具がほしい」とオーダーを出して作ってもらい、それらオリジナルの家具を品揃えに加えるようにしています。そのほか、お客さまからの受注生産も受け付けています。今はベッドやソファーが売れ筋で、お客さまからの評判もいいですね。広報は、インスタグラムなどのSNSのほか、地域のフリーペーパーなどを通じて発信しています。口コミや紹介も増えてきています。

譲受側:江端氏

ーー事業承継による創業、いわゆる“継ぐスタ”を考えたきっかけを教えてください。

譲受側:江端氏

家具業界に長く身を置くなかで、私なりに「こんなお店があったらいいな」という夢を持つようになりました。私自身、全国チェーンの家具店の店長を務めていた時からどんな形が理想かをずっと考えていました。家具というと高いイメージを持つ人がほとんどだと思うのですが、良いものを安く買いたいというニーズは家具に限らず同じですよね。一方で良いものというのは、お客さまが感じたものを指すと私は思っています。同じ家具でも、見せ方一つで全く違ったものに見えます。お客さまが良いものだと感じるような展示の仕方にこだわりつつ、なるべく抑えた価格で安さを実感してもらえる家具店を作りたいと考えていました。

ーー今回の事業承継の経緯について教えてください。

譲受側:江端氏

私が長野県で家具チェーンの店長をしていた時、福井県で開催された日本公庫のオープンネーム後継者イベントの動画を見たのがきっかけです。当時、東北や新潟の譲渡希望の家具店を回っていたのですが、譲渡金額が高すぎて手が出なかったり、お店は渡すが家具は渡さないと言われたりと、いずれも条件が折り合いませんでした。前代表の野上さんとは令和6年6月に初回面談が実現しました。野上さんは、お店(土地、建物)や家具、在庫、車両、仕入先などすべて“会社まるごと”を譲り渡したいという意向であり、私が希望する条件を満たしていました。負債関係も引き継ぎましたが、今のところメリットの方を強く感じています。

ーー先代の野上さんやお店の印象を教えてください。

譲受側:江端氏

野上さんは非常に気さくな方です。令和6年12月に株式譲渡契約を交わした後、野上さんには翌年2月の新装開店を挟んで、その年の4月まで引継ぎで一緒に過ごしました。家具業界で60年近く活躍してきた方なので、家具に対するこだわり、商品の仕入れに対する自信は強いものを感じました。特に野上さんから教えられたのは、家具に対する思いですね。「自分の家に家具が届くと思って、一つひとつの家具を丁寧に扱う」ことの大切さを教えてもらいました。お客さまに対して分け隔てなく接する姿は、とても紳士的で印象深く残っています。店内の雰囲気が良かったのと、商品ラインナップにも親和性を感じました。

譲受側:江端氏

ーー株式譲渡契約までの課題について教えてください。

譲受側:江端氏

野上さんとは譲渡契約直前までどこからどこまでを引き継ぐのかといった、いわゆる業務や責任の役割分担を決める棚卸作業を入念に進めていました。例えば、引継期間のアフターフォローについて言えば、株式譲渡契約前のお客さまは野上さんが窓口になって対応、譲渡契約後のお客さまは私が担当するなどです。野上さんは非常に責任感の強い方だったので、お店を譲り渡した後であっても自分を頼ってきたお客さまへの対応を快く引き受けてくれました。また支払関係についても、どの時点までの仕入れをどちらが支払うなど、細かい部分まで一つひとつ決めました。税金関係も同様です。後々になって揉めないようにするためにも時間をかけてきちんと整理しました。

ーーそのほか何か課題はありましたか。

譲受側:江端氏

初回面談の直後、野上さんに怒られてしまったことがあるのです。確か私が電話で野上さんから決算書をいただくやり取りをした際だったと思います。今思えば、昨日今日の関係でしかない人から電話で大切な決算書を徴求されたら怒り心頭ですよね。事業承継を進めるうえでお相手の財務状況をお聞きするのは当然のことではありますが、私も依頼の仕方に至らない点があったと痛感しています。

ーー新装開店までに課題に感じたことは。

譲受側:江端氏

家具店を運営していた経験があり、オープン後のビジョンもしっかり描けていたので、課題に感じるようなことはそれほどありませんでした。ただ、物理的な問題(店舗改装)と譲り渡していただく野上さんへの配慮を大切にしました。店舗改装では、野上さんが作ってきたものに手を加える形になってしまいます。よく思わない方も多いと思うのですが、野上さんは店舗改装の際も手伝ってくれました。本当にありがたかったですね。

ーーこれから第三者承継を考えている人に向けてメッセージをお願いします。

譲受側:江端氏

事業を受け継ぐ側は、譲り渡す側に対して常に尊敬の念を持って接してほしいですね。何を話すにしても、どのような経緯があったとしても、譲り渡す側の意思を尊重して接していくのは大切だと思います。また、そうした素直で謙虚な気持ちがないと譲り渡す側も納得できないと思います。私の場合、野上さんが事業を23年間守ってこられたという事実があります。「お疲れさま」という気持ちをしっかり持ってほしい。どんな時であっても、まずは受け止めるという気持ちは大切ですね。

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