夫婦で理想の幼児教育を追求
子供向け英語教室を経営

「理想の幼児教育を求めて」―。夫婦の念願だった子供向け英語教室の運営を継ぐスタで実現した。夫婦の教育にかける思いに共感し、事業譲渡したのは都内で英語教室を運営する先輩経営者だった。

Story’s Point

  • 東京都内3ヵ所で英語教室を運営するサニーインターナショナルスクール。一時は都内4ヵ所で生徒数100人超の規模に成長。代表の堀田純子氏が成増教室の事業譲渡を考えたのは、担当講師に欠員が出たため。日本公庫から事業承継マッチング支援を紹介され、後継者探しを始めた。
  • 譲受側の石井颯人氏は、大学時代に教育学を専攻。大手コンサルティング会社に勤める傍ら、いつかは夫婦の夢である幼児教育に携わる事業を始めたいと考えていた。会社勤めをしながら実現を探っていたところ“継ぐスタ”の存在を知る。その後、日本公庫のホームページで堀田代表の譲渡情報に関心を持ち、面談を申し入れた。
  • 両者は、令和7年3月に事業譲渡契約を締結。晴れて、同年4月にサニーキッズ成増広場としてスタートした。

Company Information

サニーインターナショナルスクール株式会社

サニーインターナショナルスクール株式会社
所在地 東京都板橋区 創業 平成17年4月 
業種 学習塾
従業者数 2名

譲渡側:サニーインターナショナルスクール株式会社(代表:堀田氏)
東京都内3ヵ所で幼児・小学生向け英語教室を運営。担当講師の欠員が出たため、成増教室の第三者承継を希望。日本公庫の事業承継マッチング支援に登録し、後継者を募集していた。

譲受側:継ぐスタ希望者 石井 颯人氏
大学の教育学部出身で教育学を専攻。幼児教育に携わる事業を志し、同じく大学で教育学を専攻した妻とともに夫婦で事業立ち上げを模索。継ぐスタの実現に関心を寄せていた。

ーー事業譲渡・譲受をしようと思ったきっかけを教えてください。

譲渡側:堀田氏

私の息子が生まれた時に0歳から英語教育を受けさせたいと思いスクールに通っていたのですが、自分でもできるのではないかと考え、近所のママさんを集めて主宰者として自宅で幼児向け英語サークルを始めました。その後、息子が2歳になった時に、自ら未就学児に英語で保育するプリスクールを立ち上げました。講師スタッフもいますが、教室運営は基本的に私1人で対応しています。以後20年近く続け、一時は都内4ヵ所で運営するまでになりましたが、今回は担当講師の退職などがあって、成増教室のみ事業譲渡を考えるようになりました。

譲渡側:堀田氏

譲受側:石井氏

私はサラリーマンで妻は保育士なのですが、もともと2人とも大学の教育学部出身で、私は小学校の教員免許を持っています。私はかねてから、知的好奇心を育む情操教育の一環としての幼児教育に高い関心がありました。縁あってコンサルティング会社に入社したのですが、入社後もそうした仕事ができないかと探していました。入社2年目の頃は、仕事をしながら家庭教師として大学を受験する高校生に勉強を教えていた時期もありました。一時は会社勤めをしながら自分で保育園や学童保育を立ち上げようかとも考えましたが、生徒募集や家賃交渉など分からないことばかりで、会社を持つというイメージが持てないでいました。

譲受側:石井氏 譲渡側:堀田氏

ーー面談に至った経緯を教えてください。

譲渡側:堀田氏

日本公庫の担当者から後継者について聞かれたのがきっかけで、事業承継マッチング支援に登録しました。私には後継ぎがいないので、いずれは誰かに引き継いでもらうことができればと考えていますが、場合によっては廃業も考えなければならない。生徒さんやその保護者に迷惑をかけてしまうのではないかとの不安が常にあります。事業譲渡に関しては、過去に一度だけ東高円寺の教室を知人に譲り渡したことがあったので、経験として持ち合わせていました。

譲受側:石井氏

私は結局、自分で創業するイメージが持てないまま半年が過ぎました。そうするうちに、一から立ち上げるよりも承継する形で創業できないかとの考えに至りました。インターネットで調べたところ、検索結果の一番上に日本公庫の事業承継マッチング支援のホームページが表示されたことを覚えています。ホームページ内で教育関係の譲渡希望者がいないか検索したところ、堀田さんの案件(ノンネーム情報)にたどり着きました。当時、私の住まいから近い場所でしたし、読み込むうちに自分が事業を持つイメージが湧いてきました。これだと思って事業承継マッチング支援に登録し、面談交渉を申し入れました。

ーー第一印象について教えてください。

譲渡側:堀田氏

令和6年11月に初回の面談をオンラインで行いました。石井さんに初めてお会いした時、とてもしっかりされていて好印象でした。

譲受側:石井氏

堀田さんの印象は、責任感のある方だなとの印象でした。お話しをするなかで、自身が育てた事業を譲り渡すのに(私が)ふさわしい人物なのかどうかを確かめたいという気持ちがひしひしと伝わってきました。

譲渡側:堀田氏

どちらかというと、私の方が事業の内容を一方的に話したのを覚えています。大儲けできる事業ではないが、安定的なビジネスであるという主旨の話をしました。子供相手の商売なので、ただ子供と遊んで楽しいというのではなく、保護者の方とのコミュニケーションや気遣いも忘れずに、といった注意点などをお伝えしました。

ーー初回の面談を通じて感じた課題などがありましたらお願いします。

譲渡側:堀田氏

私が一番気にしていたのは、石井さんに譲り渡すことを生徒さんや保護者に伝えた後に辞退されることでした。オンラインでの初回面談の後、石井さんの本心を知るために対面でお話しする機会を作ってもらいました。そこで自分なりに20年間続けてきた経営者としての覚悟、教師として志といった思いをしっかり話したつもりです。そのうえで、「そこまでの気持ちは持てない」というのであれば今すぐ遠慮してほしいと伝えたところ、石井さんからそれでも譲り受けたいとの意志を感じ取ることができたので安心しました。

ーー令和7年1月の基本合意後、3月には事業譲渡契約に至りました。

譲受側:石井氏

基本合意の後、日本公庫に紹介してもらった東京都事業承継・引継ぎ支援センターに事業譲渡契約書の作成に関するサポートをしてもらいました。私自身そうした経験がないので、契約書の書き方などで指導してもらい、たいへん助かりました。今回の場合だと、運営ノウハウや生徒さんの譲り受けに関して、うまく書面に落とすのに苦労しましたね。

ーー事業の引継ぎにあたって生徒さんへの対応はどのように進めましたか。

譲渡側:堀田氏

1月の基本合意の後、授業を見学してもらい、2月から成増教室で新しい講師として担当してもらいました。

譲受側:石井氏

授業の見学は授業内容や流れを把握するためです。一通りの流れが分かった状態で、2月から成増教室で約2ヵ月間講師として携わり、4月に完全移行しました。

ーー保護者の方への対応はどうですか。

譲渡側:堀田氏

保護者の方には、2月の終わりに石井さんへの成増教室の譲渡をお伝えしました。すでに石井さんには講師として関わってもらっているので、生徒さんとの信頼関係には影響ないと感じていました。運営主体が変わることを心配するのは当然のことなので、月謝を上げないことやサービスはそのままであることなどを伝えて、保護者一人ひとりの不安と向き合いました。

譲受側:石井氏

私は受け継ぐ立場なので、堀田さんが提供していた授業のクオリティに早く追いつけるようにとの意識を強く持ちました。保護者の方には、生徒さんを通じて私の思いをお伝えしました。

ーー譲り受けた成増教室の現状はどうですか。

譲受側:石井氏

令和7年4月に新体制がスタートしました。当初は生徒数10人でしたが、チラシ配布に加えてインスタグラムなどのSNSで情報を発信していることもあって、徐々に増えてきています。地域の公共施設に教室があるのですが、そこで私が講師として水曜日と土曜日に少人数制で、1コマ40分の授業をしています。堀田さんのノウハウを取り入れて、通常の授業だけでなく、ハロウィンなど季節ごとのイベントを企画して、英語圏の文化を楽しむようにしています。堀田さんから譲り受けたものに、プラスアルファの形で自分の色を出すことができればと考えています。それ以外の日はコンサルティング会社の仕事ですね。教室運営を通じて子供たちに関わることができて、とても充実しています。

ーー石井さん、堀田さんだからうまくいった事業承継だったのでしょうか。

譲渡側:堀田氏

石井さんの教育に注ぐ情熱や思いには感心しています。インスタグラムの動画から、生徒さんや保護者の方の喜ぶ顔が浮かんできます。

譲受側:石井氏

生徒さんが集う教室の雰囲気や教育のスタイルが、私たち夫婦の求めていた教育の姿にかなりマッチしていたのは言うまでもありません。それは何より堀田さんが長年かけて培ってきた「教育のかたち」にほかならないので、改めてこの教室を引き継ぐことができて良かったです。

譲渡側:堀田氏 譲受側:石井氏

ーー日本公庫などの支援機関の存在はどのように感じましたか。

譲受側:石井氏

たいへん頼もしく感じました。譲渡側、譲受側の1対1の場合に比べて、支援機関が間に入ってもらえるのは何より安心できました。今回の場合でも、全体のスケジュール感をふまえて次のステップを示してリードしてもらえるので、すごくありがたかったですね。

ーー“継ぐスタ”のメリットを教えてください。

譲受側:石井氏

最初から生徒さんがいらっしゃるということです。そして保護者の方を含めて信頼関係が出来ているという環境はありがたいですね。そこはゼロからの創業と比べるとまったく違うところですね。そうした関係ができているところはたいへん大きかったです。

ーー今後の展開について。

譲受側:石井氏

私としては文法をガリガリ教えるのではなく、堀田さんの指導のように楽しく日常的な会話から英語を学んでほしいとの思いが強いです。日本語の場合もそうですが、日本語の文法を教えるというよりは、お父さんとお母さんとの会話を通して身についていくものだと考えています。海外のバイリンガルの子供たちも、英語を使う日常があるから2ヵ国語を自然と習得します。「ちょっと嫌だけど頑張る」というよりは、「楽しく自然に英語を学ぶ」という場所を提供していきたいですね。将来的には、ほかの地域でも教室を開校できればと考えています。

ーー最後にそれぞれの立場からメッセージをお願いします。

譲渡側:堀田氏

後継者不在を理由に、何十年もかけて続けてきた事業を廃業してしまうのはもったいないです。自分が一生懸命信念を持って築き上げたものだからこそ、次の世代にしっかりと譲り渡そうとの思いを持って、せめて一度トライしたうえで判断してほしいです。私は昭和の“ど根性世代”ですが、今の若い人たちと話をすると柔軟な考え方や発想を感じたりします。今度は私たち世代が柔軟になって、譲り受ける若い世代にベクトルを向ける努力も必要なのではと思います。

譲受側:石井氏

日本公庫の事業承継マッチング支援に登録すれば、様々な専門家がサポートしてくれます。実際に承継することが決まれば、何ヵ月後にはお客さんがいて「自分がやらないといけない」という環境になります。まずはやりたいことを見つけて、一歩踏み出してみることが大切ですね。

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