かねてから独立を目指していた現院長は、住まいの近くにある調布市仙川の歯科医院を受け継いで創業を実現した。現在は、先代とともに診療に従事し、地域住民によりよい歯科医療を届けるため尽力している。
左側(譲渡側):先代院長 目黒 英朗氏
右側(譲受側):現院長 柳衛 真紀子氏
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やなぎえデンタルクリニック |
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譲渡側:目黒歯科医院 目黒 英朗氏
歯科大学卒業後、都立病院の口腔外科等で勤務。障がいのある患者の診療も担当。友人の紹介で歯科医院を受け継いで、創業した。
譲受側:継ぐスタ希望者 柳衛 真紀子氏
歯科大学卒業後、民間病院で勤務。高齢者施設等への訪問診療も担当。更に成熟した歯科医師人生にするため、独立を考えていた。
譲渡側:目黒氏
日本公庫とは融資を通じてお付き合いがあったため、「事業承継マッチング支援」の案内は何度か受け取っていました。以前は受け流していましたが、2023年に真剣に考えることになりました。昔に患った癌が再発し、大きな手術を受けることになったからです。手術の成否の可能性は五分五分でしたし、たとえ成功しても、診療を再開できるほど復調するとは限りません。いま診ている患者さまたちを引き継いでくれる後継者を探さなくてはとなったわけです。
譲受側:柳衛氏
私は、もともと40歳を目途に独立したいと思っていました。そこで、30代後半で創業の相談会に行ってみましたが、新規開業には想像以上に高額な資金を要するという厳しい現実に直面し、今の自分には難しいと思いました。それでも諦めきれずに日本公庫のホームページを見ていたところ、継ぐスタという手段があることを知ったのです。すぐに「事業承継マッチング支援」に登録しました。
譲渡側:目黒氏
私は、手術予定の前月に登録して、すぐに柳衛さんを紹介してもらいました。もっと時間がかかると思っていたので、拍子抜けしたくらいです。
譲受側:柳衛氏
私は目黒さんに出会うまで時間がかかりましたよ。登録後に何件か紹介していただきましたが、いずれも規模や立地などの条件が私の希望に合わなかったのです。自身が住んでいる調布市内で、医師1人で医院を運営なさっている目黒歯科医院を紹介されたのは、登録から1年以上経過したタイミングでした。「ようやく希望通りの医院に巡り逢えた!」と喜んだものです。
初めての面談ですぐに意気投合しました
譲渡側:目黒氏
初めて面談したときのことは今でも鮮明に覚えています。少し会話しただけで柳衛さんの実直な人柄を感じ取ったので「この人なら安心して患者さまを任せられる」と思いました。
譲受側:柳衛氏
私も目黒さんとお話をして、堅実に経営されてきたことがすぐに分かったので、絶対ここを受け継ぎたいなと思いましたね。目黒歯科医院は障がいのある患者さまも通われているので、診療に関しても色々と質問をしましたが、それらに真摯に答えてくださったことも印象的でした。
譲渡側:目黒氏
体を押さえる道具などはいらなくて、リラックスして治療を受けていただく配慮が大切なんです。そういう1つ1つの配慮があれば、やることは普通の歯の治療と同じです。
譲受側:柳衛氏
そのあたりも引継ぎで色々教えていただきました。例えば、音に敏感な方は、滅菌パックを開く際のシールのバリバリっという音がストレスになるので、先に開いておくなど、観察して学んでいます。
譲渡側:目黒氏
私は、自分の歯科医療に関する考えを伝える人がいる、というのも柳衛さんに出会えてよかったことですね。開業医になると、そういう自分の考えを受け継いでくれる人って、いるようでいないんです。
譲受側:柳衛氏
検査に重点を置いていきたいというお話を目黒さんとしているんですよね。あとは、生活習慣病の患者さまがもっと健康的に過ごせるよう、地域のドクターと連携していきたいという構想もあります。これからも地域の役に立てるようなクリニックでありたいですね。
明るい色調の診療室
柳衛さんの姪っ子さんが書いたウェルカムボード
譲渡側
譲受側
譲渡側
都立病院で約12年、市立病院で約3年勤務
譲渡側
目黒歯科医院を開院
譲渡側
歯科医院経営を始めた理由は?
障がいのある患者さまは通院が大変なので、診療時間の長い歯科医院があると便利だろうと考えていました。そんなときに、引退を考えている先々代院長を紹介され、受け継ぐことを決意しました。
譲受側
歯科大学卒業後、都内大学病院での研修を経て民間病院で勤務
譲受側
創業の検討を開始
譲受側
「事業承継マッチング支援」に登録
複数の候補を紹介されたが、いずれも立地や規模が希望と合わず
譲渡側
日本公庫「事業承継マッチング支援」に登録
大きな手術を受けることになり、後継者を探すことに
譲渡側
日本公庫の紹介で譲受側の柳衛さんと面談
譲受側
日本公庫の紹介で譲渡側の目黒さんと面談
譲渡側
柳衛さんと事業譲渡契約を締結
譲受側
事業譲渡契約
譲受側
目黒歯科医院の改装工事を開始
譲受側
前職を退職
譲渡側
事業承継後は、やなぎえデンタルクリニックで平日午前の診療を担当
譲受側
やなぎえデンタルクリニックをオープン
譲渡側
事業承継後の過ごし方は?
手術前後は仕事に復帰できるか不透明でしたが、幸いにも回復して元気になったので、平日の午前に限定して私の診療をご希望される患者さまに対応しています。
譲受側
事業承継の準備で大変だったことは?
融資の申込に必要な事業計画書の作成にかなり苦労しました。日本公庫ホームページの記入例や日本公庫担当者のアドバイスを受けながら、作成を進めました。
譲渡側:目黒氏
自分を信頼して長年通ってくださる患者さまの治療を中断せず、後継者につなげる安心感ですね。
譲受側:柳衛氏
「ゼロからの創業」に比べて創業資金を3分の1に抑えられました。また、患者さまから「目黒先生がお願いした先生なんだね」と信頼していただけるのもありがたいですね。経営の面でも、困ったことがあった際にどこに問い合わせるか、歯科医師会にはどのように連絡するかなど、細かいことまで教えてもらっています。一人で創業していたら、どうしたらいいのか困っていたかもしれません。
白を基調とした清潔感のある待合室
譲受側:柳衛氏
周りを頼ったことです。創業を考えるとき、1人で一輪車に乗るような気持ちだと思います。けれども、思い切って相談してみると、そこから輪がどんどん広がっていろんな方が助けてくれるんです。私の場合は、まず日本公庫に相談をして、創業の知識や継ぐスタを知って、目黒さんを紹介してもらいました。日本公庫から紹介してもらった事業承継・引継ぎ支援センターでは、手続きの相談に乗っていただき、書類等を作成する専門家も紹介してもらいました。おかげさまでスムーズに手続きを進めることができました。
相談することが初めの一歩
譲渡側:目黒氏
仕事柄、沢山の人と接するので「人を見抜く目」には自信があります。また、歯科医には自分のこだわりが強い人が多いと感じていました。そんななかで出会った柳衛さんは、少し会話を重ねただけで信頼できる医師だと思いました。にじみ出る実直さが、患者さまにも安心感を与えると感じたのです。普通は何度も話をして、この人に託してもよいかの判断をすると思いますが、私は一目惚れです。事業承継後の今は一緒に働いていますが、患者さまへの対応が優しく、説明も分かりやすくて、あのときの判断に間違いはなかったと思います。
信頼できる方だと一目で分かりました
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マッチング支援担当者より 日本公庫 事業承継支援室 青山 葉月 お二人とも、障がいのある方や高齢の方の診療に携わってきたという背景もあり、初回の面談から意気投合していました。信頼できる後継者ができたことで、これまで目黒さんが診てきた患者さまも安心して通院できると思います。これからもお二人を応援しています! |
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