事業承継マッチング支援

支援機関と二人三脚で取り組んだ事業承継

石川県で利用運送業を営む「有限会社よしだ商運」。
成約の裏には支援機関の大きなサポートがあった。

Story’s Point

  • 荷物を運んでほしい荷主と、荷物を運ぶことができる運送業者をマッチングさせる業務を行っている「有限会社よしだ商運」。しかし、前社長の芳田氏は年齢を理由に引退することに。既存の顧客のことを考えて、事業承継の検討を行う。
  • 同時期、大手コンビニエンスストアで勤務していた柳橋氏。もともとは京都に住んでいたものの、母親の実家がある馴染み深い土地であった石川県で創業したいと考え、石川県事業承継・引継ぎ支援センターに相談。その後、いくつかの会社と面談を重ねていた。
  • 石川県事業承継・引継ぎ支援センターが、運送事業を取り扱う「よしだ商運」と物流事業に深く関わるコンビニエンスストアの本部で勤務していた柳橋氏との相性を考えた上でマッチング。5度の面談を経て成約に至る。
左側(石川県事業承継・引継ぎ支援センター):北氏 右側(譲渡側):柳橋氏

Company Information

有限会社よしだ商運

有限会社よしだ商運
所在地 石川県内灘町 創業 平成14年 
業種 利用運送業

譲渡側:芳田氏
運んでほしい荷物を持つ荷主と、運送することができる運送業者を結びつける「利用運送業」を平成14年から石川県で営んできた。しかし、年齢を理由に事業承継を希望。事業承継先が見つからなかった場合は廃業も視野に入れていた。

譲受側:柳橋氏
出身は京都府。以前は大手コンビニエンスストアの本部に勤めていた。
次第に創業を目指すようになり、事業を引き継ぎたいと考えるようになり、石川県事業承継・引継ぎ支援センターに相談。

ーーはじめに事業内容などを含めた自己紹介をよろしくお願いいたします。

譲受側:柳橋氏

当社は、平成14年から「よしだ商運」として、運送事業を行っています。細かい話をすると、正確には「利用運送」という業種になりまして、荷物を運んでほしい荷主と、荷物を運ぶ運送業者を結びつけるようなことが主な仕事になります。1日に100件以上の電話を受ける仕事で、1本の電話は30秒程度です。わずかな時間に多くの情報をやり取りするため、荷主と運送業者の双方との信頼の積み重ねといった部分がとても大切になってきます。
私は事業承継する前は、コンビニエンスストアの本部で経営全般や店舗指導の部分に携わる仕事をしておりました。以前から自分にとって馴染み深い土地である石川県で創業したいと思っていました。事業承継をする形で事業をスタートしたいと考え(継ぐスタ)、自分で事業承継のことを調べたり、「石川県事業承継・引継ぎ支援センター」の方に協力していただいたりした結果、ご縁があったのが「よしだ商運」でした。

譲受側:柳橋氏

ーーでは、まずお尋ねしたいのですが、未経験の状態から事業承継することについて、周りの方の反応はどのようなものでしたか?

譲受側:柳橋氏

私が元々創業したがっていたことを周囲の方々は知っていたので、「ついに創業するんだね」といった反応が多かったように感じますね。事業承継のお話が決まる以前は大手コンビニエンスストアの本部に勤めていたので、大企業を離れて創業するという形を取ることに対して驚かれることはありました。
「物流」という共通点こそあれ、実態は全くの別事業でしたので、最初は不安に思うことも多かったです。だからこそ、事業承継という形を取ることで、ゼロからのスタートではないスタートができるという点が、自分にとって大きなメリットだと感じられました。

ーー数ある企業の中から「よしだ商運」の譲受を決めた理由は何だったのでしょうか。

譲受側:柳橋氏

私の出身は京都府ですが、母が石川県の七尾市の出身でした。その関係で昔からこの辺りは馴染み深い土地で、少なくとも3ヵ月に1回くらいは訪れる場所でした。その関係もあって、将来的には石川県で独立したいという願望も強くありました。ですから、七尾市に近い企業を探していただいて、5社目に出会ったのがこの会社だったというのが大きな流れです。
石川県事業承継・引継ぎ支援センターの方と話し合いを重ねていく中で、いくつかの会社の方と面談しました。それぞれの会社で自分に何ができるかを考えたり提案したりする機会はあったものの、規模の大きい会社の事業承継をしていきたいと考えていた部分もあってか、成約に至ることができませんでした。
しかし、「よしだ商運」で芳田前社長とお話した際には、業界自体が未経験でまだうまく仕事がこなせなかった場合にも、きちんと事業の内容をレクチャーしてくださろうとする雰囲気や人柄の良さを感じたんです。仕事に対する不安はいろいろとありましたが、そのあたりが決め手だったかなと考えております。

ーー芳田前社長の印象などについて、最初と今で変わった点はありますか?また、取引先の方々からの評判についてもぜひ聞かせてください。

譲受側:柳橋氏

これは私個人の勝手な印象ですが、ある程度社長歴が長い方というのは、若い新参者を対等には見てくださらないことが多いものだと思っていました。ですが、芳田前社長は私の意見に耳を傾けてくださり、同じ立場で対等に接してくれているような雰囲気があって、そのことがすごく印象的でした。現在でも、その印象に変わりはありません。
また、取引先に電話をする際にも、取引先はやはり第一に芳田前社長のことを気にしますね。たまに芳田前社長が顔を出してくださることもあって、そういう時に電話を取ってくださったりもするのですが、取引先の方はとても喜びますね。芳田前社長が積み上げてきた信頼の厚みを感じます。

譲受側:柳橋氏

ーー事業承継にあたり、1、2回が一般的とされるトップ面談を5回実施されたと伺いました。具体的にそれらの面談はどのように進んでいったのですか?

譲受側:柳橋氏

そうですね。まず、私は本当にこの業界に関しては右も左もわからない状態でしたので、どういうふうに、どこから仕事に入っていけばいいのかというところから始まりました。わからない点を毎回すべて芳田前社長に聞いて、教えていただいて。まずこの会社で自分に何ができるのかということの抽出作業から始めました。その際に、前社長から言われていたことは、「とにかくお客様に迷惑をかけないように引き継いでほしい」ということでした。会社にも何度も通わせていただいて、仕事のノウハウを積極的に引き継いでいく努力を続けました。トップ面談というよりは、実際の仕事を見せてもらっていた部分が大きいです。

左側(石川県事業承継・引継ぎ支援センター):北氏 右側(譲渡側):柳橋氏

ーー本日は、石川県事業承継・引継ぎ支援センターの北さんにも、ご同席いただいております。
今回の事業承継に関して、北さんは主にどのようなサポートをされていましたか?

石川県事業承継・引継ぎ支援センター:北氏

基本的にトップ面談の初回には、同席するようにしていますね。今回の事業承継に関しましては、柳橋社長がコンビニエンスストアの本部で勤務されていたということもあって、コンビニといえば、物流との繋がりが密な業界ですから、そこと「よしだ商運」の物流事業が繋がるところがあるのではないかと思い提案させていただく運びとなりました。
ありがたかった点としては、提案した企業について、柳橋社長がすべて検討してくださったというところです。1度検討した上で、その企業のどういったところが要因でマッチングに至らなかったのか、という点もフィードバックをいただけて、その意見を参考にこちらも次の企業を紹介することができたので、効率的にサポートさせていただくことができたかと思います。
どうしても業種の範囲を広げて探しがちになってしまうと思うのですが、そうなってしまうと紹介側も提案の範囲が広くなってしまうので、より双方のニーズに合ったご提案が難しくなってしまうんですね。ですので、経験上場所に関してでも業種に関してでも構わないので、ある程度条件を絞っていただいたほうがスムーズかと思います。
譲渡希望の企業のリストを見ることができると思われている方が多いようなのですが、基本的にはこちらでピックアップして紹介させていただく形になりますので、お互いにコミュニケーションを取り合って、しっかり擦り合わせをしていくことが大切になってきますね。

左側(石川県事業承継・引継ぎ支援センター):北氏

ーー日本公庫も含めて、他にあったらいいなと思うような支援があれば教えてください。

譲受側:柳橋氏

公的機関のような面もあるので難しいかとは思うのですが、どのような業種や企業があるのかというところの情報がもう少しオープンになると、ありがたいなと感じることはありましたね。情報管理上難しい面もあると思います。

ーー今後の展望について、聞かせてください。

譲受側:柳橋氏

事業の幅を広げていくという点で、別事業の展開も視野に入れています。現在の事業に関しては、積極的に取引先に足を運び、営業に力を入れています。私が今までやってきたことを活かして、どんどん新しいことにも挑戦していけたらと前向きな気持ちです。既に過去の経験を活かし経営コンサルティング事業もしており、小売業を中心に経営改善のアドバイスを行っているほか、今後も事業承継で事業拡大していく予定ですので、もしよいお話があれば案件相談もお待ちしております。

譲受側:柳橋氏

やはり、実際に取り組んでみても、スタートがゼロからではないという点はとても大きなメリットだと思いますね。個人がゼロから始める場合、リスクも大きくなってしまうのではないでしょうか。また継ぐスタの形式を取ることにより、守られる雇用というものもあるかと思います。自分で何かやってみたいと考える方には、おすすめの手段のひとつだと感じています。一番に伝えたいことは、何より気になっているなら、早くやるということですね。あとは何より、バトンを渡す側も受け取る側も真剣にやるということです。

左側(石川県事業承継・引継ぎ支援センター):北氏 右側(譲渡側):柳橋氏

ーーインタビュー中に偶然にも芳田前社長がお見えになりました。せっかくなのでメッセージをお願いします。

譲渡側:芳田氏(写真なし)

私たちの業界は、面識がある相手と仕事をすることよりも、顔を知らない方々と仕事をすることのほうが多い業種です。そんな業界だからこそ、日々のやり取りや会話の積み重ねが信頼に直結すると考えています。ですから、私がまず一番はじめに柳橋社長にお願いしたことは、取引先へ電話をかけることでした。いきなり知らない相手に何度も電話をかけることは大変なことだとわかっていましたが、それができないと、取引先との信頼関係やこの会社の仕事は成り立たないですから。それをやりきってくれたところに、やる気と根性、仕事への本気さを感じたことを覚えています。
私は、後継者が見つからなかった場合、事業そのものを畳んでしまうことも視野に入れていました。ですが、今お世話になっているお客様や取引先に迷惑をかけたくないという気持ちも強く、それを思うと廃業にはなかなか踏み切れませんでしたね。
真剣に事業承継を考えるようになり、自分の会社を後継してもらうための難しい条件は定めていませんでした。重要視していたのは、ただこの仕事ができるかできないかという1点のみです。仕事の基本部分をきちんと丁寧に、誠実にこなしてもらえたらと考えていました。
1度目の面談の時に会社を任せられるか判断できなかったとしても、2度、3度と顔を合わせてお話をしていくうちに、柳橋社長はこの仕事に怯むことなく挑んでくれていたので、安心して事業を任せられるのではないかと思う機会が増えました。石川県事業承継・引継ぎ支援センターの北さんも、ご尽力いただき本当にありがとうございました。

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