事業承継マッチング支援

アルミの鋳造から加工までを一気通貫で!
相乗効果を生み出すM&A

金属の切削加工において高い技術を持つ小野製作所が譲渡先として選んだのは、創業以来50年以上、アルミの鋳造を手掛ける会社だった。新代表の青山氏の異色の経歴とともに、この事業承継が双方の会社にもたらす相乗効果に迫る!

Story’s Point

  • 継ぐスタ(事業を受け継いでスタートする創業形態)で蒲田金属工業の代表に就任した青山氏。蒲田金属工業の弱点を補い事業を拡大するための手段としてM&Aを模索。その中で金属の切削加工に長けた小野製作所と出会う。
  • 2社の技術の融合により、アルミの鋳造から加工まで一気通貫での受注体制が実現。既存顧客からのさまざまなニーズにも応えられるようになり、双方の事業価値が高まっている。
  • 青山氏が考える「M&Aを検討する際に押さえるべきポイント」は、適正価格の見極めと事業拡大の可能性。勤務者時代の経験も踏まえて、M&A後にどれだけその会社の事業を拡大できるのか、そのビジョンを描くことが大事だと語る。
(譲受側):青山氏

Company Information

株式会社小野製作所

株式会社小野製作所
所在地 福島県いわき市 創業 昭和59年 
業種 切削加工業

譲渡側:株式会社小野製作所(代表:小野氏)
株式会社小野製作所の前代表。
小野氏自ら製造の現場に携わっていたが、足のケガをきっかけに事業承継に向けた検討を開始。
後継者不足に悩む中、日本公庫及び福島県事業承継・引継ぎ支援センターに相談。日本公庫から蒲田金属工業株式会社の紹介を受け、青山氏と出会う。

譲受側:蒲田金属工業株式会社(代表:青山氏)
金融機関やコンサルティング会社での勤務を経て、33歳の時に継ぐスタ(事業を受け継いでスタートする創業形態)により蒲田金属工業株式会社の代表に就任。蒲田金属工業株式会社の事業をより拡大するため、令和4年12月に小野製作所のM&Aを行った。

ーー蒲田金属工業、小野製作所それぞれの事業概要を教えてください

譲受側:青山氏

蒲田金属工業は、福島県大玉村にある昭和44年設立のアルミの鋳造業者です。創業以来一貫してアルミ鋳造に特化しており、金型鋳造法及び砂型鋳造法により、主に空圧機器、空調機器、航空灯器、建機、ロボットなどの部品を製造しています。
一方の小野製作所は、福島県いわき市にあり、金属の切削加工を得意とする会社です。主に精密機械やFA機器の部品製造、自動車部品の試作などを行っています。

譲受側:青山氏

ーー青山社長は今回が2回目のM&Aで、蒲田金属工業もM&Aにより引き継いでいます。
最初のM&Aに至るまでの経緯を教えてください。

譲受側:青山氏

蒲田金属工業のM&Aを行うまでは、普通のサラリーマンとして働いていました。
金融機関に勤めたところからスタートし、コンサルティング会社や日系大手メーカー勤務を経て、M&Aでの創業、「継ぐスタ」に挑戦しました。
金融機関では法人営業をしており、中小企業の経営者の方々と接する機会が多かったことや、その後のコンサルティング会社に勤務をしている中で、「非常に良い会社なのに後継者不足により廃業する会社が多い」という現実に数多く直面したんです。特にコンサルティング会社では、私はM&A部門に在籍していたことから、その時に身につけた知識や経験を活かしていつか自分でもM&Aをしてみたいなという思いを抱いていました。
その後、メーカーに転職した際に福島に来たのですが、民間のM&A会社や福島県事業承継・引継ぎ支援センターに相談して譲渡を希望している企業を探している中で、蒲田金属工業に出会いました。
はじめから福島でM&Aをしたいと考えていた訳ではなく、転職して福島で働く中で人の良さを感じたことが大きいです。あとはこれまでの経験から、地方のほうが良い会社があるなという実感もありました。

ーー蒲田金属工業の従業員の方々や、これまでの取引先の皆様の反応はどうでしたか?

譲受側:青山氏

最初は皆さん、戸惑っていたのではないでしょうか。
年齢的にも若くて、製造畑の人間ではない普通のサラリーマンが突然会社の代表になるということだったので(笑)
ただ、蒲田金属工業の先代の社長には事業承継から半年間残っていただいたので、その間に社員の方とコミュニケーションを取ったり、取引先の方々にご挨拶をさせていただいたりして、皆さん快く受け入れてくれました。

譲受側:青山氏

ーー1回目のM&Aからわずか2年で2回目のM&Aに踏み切っていますが、どういったきっかけで2回目のM&Aを決められたのでしょうか?

譲受側:青山氏

蒲田金属工業を引き継いだ当初から、アルミの鋳造に関しては一流の技術があるものの、鋳造の次の工程である切削加工まではできないというところが弱点だと思っていました。
取引先からも鋳造から加工まで一気通貫でできるほうがありがたいという声が多くありましたが、アルミの加工技術は一朝一夕に習得できるものではありません。それをゼロから作るとなると効率が悪い。となると、すでにアルミの加工技術を持っている会社を探すほうが早いかな、という構想を持っていたんです。
とはいえ、最初から積極的に探していたというわけではなく、たまたま日本公庫の事業承継マッチング支援のホームページを見ている時に、まさに求めていたアルミの加工技術を持った会社が掲載されていたんです。そこで、日本公庫に問い合わせてみたことが、小野製作所に出会うきっかけとなりました。
幸い蒲田金属工業は50年以上の歴史があり事業の基盤もしっかりしていましたし、私が常駐していなくても会社のことは社員に任せられるという状態だったことも、2回目のM&Aに踏み切る助けになりました。

ーー小野製作所を承継するにあたっての条件はどのようなものがあったのでしょうか?

譲受側:青山氏

金額的な条件以外には、現従業員の雇用維持がありました。
元々いる社員の方々には残ってもらいたかったですし、私としてもこれまで築いてこられた文化や社風を大幅に変えようという気はありませんでしたので、お互いの要望が合致した形でした。

ーー青山社長のほうから提示した条件はありますか?

譲受側:青山氏

先代はご自身が現場に立って、製造に携わっている方でした。
その方が抜けてしまう穴は大きく、先代の後任として現場を回すことができる社員が育つまでの教育はお願いしたいと伝えていました。
ただ、切削加工の技術習得において基礎が身に付くには、3年はかかると言われているんです。先代も早めの引退を考えていたため、あまり長期間残ってもらうわけにはいかないと思っていたところ、1年前に退職した方が戻ってきてくれることになりました。それはすごくラッキーでしたね。私が会社を引き継ぐことになって、これまでとは違う新しい加工に挑戦したいという思いで戻ってきてくれたそうで、それはとてもありがたかったです。

ーー先代の小野社長は、なぜ青山社長に事業を譲り渡すことを決意されたと思われますか?

譲受側:青山氏

タイミングと、業種的にも近しくて双方の弱点を補って事業が広がっていくというイメージができたからだと思います。私も先代も、他に引き合いの会社があったわけではなく、探し始めてから1社目の面談で合意に至っています。初めて面談をしてから4~5か月かけて承継しましたが、双方の意見が食い違うことなくスムーズに進みました。先代からは私の印象について、「ギラギラしていていいね」と言われたのを覚えています(笑)
年齢が若いというところも評価してくださり、蒲田金属工業と小野製作所、2社をかけ合わせることでより事業を大きくしていくぞ、という気合も感じ取っていただけたのだと思います。

ーー小野製作所を承継したことで、どういった成果があったのでしょうか?

譲受側:青山氏

やはり、アルミの鋳造から加工までを一手に請け負えるようになったという点は大きいです。鋳造というのは非常にニッチな業界ではありますが、一定の需要はあります。その反面、後継者や人手不足という点で対応できる会社はどんどん減っているので、蒲田金属工業と小野製作所の2社の強みを生かしてそこの需要を取っていけるという手応えを感じています。
小野製作所の売上は以前よりもアップしてはいるものの、これではまだまだ足りないと思っています。アルミの鋳物については角材や丸材と違って形がいびつなので、加工するのにかなりノウハウが必要になるんです。その課題を解決して新しい案件にチャレンジすることに今取り組んでいて、それが実現すればより売上を伸ばすことができると思っています。
一方で、蒲田金属工業は加工もできるようになったということで、取引先から鋳造だけでなく加工についても相談がありました。
小野製作所のM&Aを行い、鋳造から加工までお任せいただけるようになったからこそ、相乗効果が表れ始めているので、今後も伸ばしていきたいと思っています。
また、私がもともと営業畑の出身なので営業面には力を入れています。
私が代表になる前の蒲田金属工業はあまり積極的に営業をせずとも関東を中心に色々なところからお引き合いをいただける状態、小野製作所については地元の繋がりを活かして受注をいただく状態だったので、蒲田金属工業と小野製作所のそれぞれの取引先との関係を活かし、新たな付加価値を提供することでより大きな成果を上げていきたいです。

譲受側:青山氏

ーー2回のM&Aのご経験を経て、譲渡案件を見極めるときのポイントはどのようなものだと思われますか?

譲受側:青山氏

価格面については、よく見極めたほうがいいなと感じています。正直なところ、過大と思われる譲渡希望価格が提示されているケースも少なくありません。
そういった意味でも、事業承継する事業の業界の分析やM&Aの知識はある程度学んでおく価値があると思います。
加えて、これまで自分が培ってきた経験、もしくはすでに営んでいる事業が、譲受する会社の事業を拡大していく上でどう活かせるか、というビジョンは描けていたほうがいいかもしれません。私の場合は、金融機関勤務時代に鍛えられた営業力が大きな武器になるなと思いました。
ただ、結局は人と人の間で取り交わす契約なので、先代がこれまで会社を経営されてきた中で何を一番大事にしてきたか、をきちんと理解してそれを自分が大事にできるかどうかという相性の部分も大きく関係しているかもしれませんね。

ーー事業承継にあたって、支援機関はどのように利用されましたか?

譲受側:青山氏

基本的には日本公庫の事業承継マッチング支援のホームページで、希望に合った企業がないかと探していました。
サラリーマン時代にM&Aに携わっていた経験はあるものの、細かい相談などはそれほど経験していなかったことから、面談の際に毎回立ち会ってくださるのはありがたかったです。その他に、事業承継・引継ぎ支援センターには、契約書等のレビューを依頼させていただきました。

ーーあらためて、事業承継のメリットはどんなものだと思いますか?

譲受側:青山氏

譲渡側からするとやはり後継者不足は深刻な問題なので、「事業を続けていく」「従業員を守っていく」ということを考えたら、承継するという手段が非常に有効だと思います。
一方で「引き継ぎたい」と手を挙げる方は、その事業を引き継ぐことでより大きな利益を生んでいきたい、という意欲が高いということです。そのため、良い会社・良い方に巡り合って譲渡できれば、今まで成し得なかった規模に会社が拡大する可能性があるという部分もおもしろいですよね。
譲受側のメリットとしては、これから新しく会社を作ろうと思ってもリスクやコストに見合わない場合があるのと比べて、事業承継であれば、そのビジネスモデルと会社が何十年と培ってきた技術や歴史もまるごと承継することができます。
事業内容が良いのに後継者不足が原因で、事業継続できないという会社は全国にたくさんあるので、M&Aを考えるのは非常によい機会だと思います。
私も元々経営者ではないため、あまりこういった経験や悩みを分かち合える人がいなくて…(笑)。サラリーマンを経て2つの会社の代表になるという少し変わった経歴ではありますが、同じような背景でチャレンジする人が増えたら嬉しいなと思います。

ーー今後の展望を教えてください。

譲受側:青山氏

蒲田金属工業、小野製作所のM&Aを経験し、この2社の強みを掛け合わせることで良い流れが生まれると確信しているので、まずはこれまで以上に安定した収益基盤を築いていきたいと思います。自分から受け継いで、すぐに潰れましたというわけにはいかない!という気合も十分です。
現状ではさらなるM&Aは考えていませんが、小野製作所のほうは新規案件のために外部から役員を招くことになったので、マネジメント体制も強化した上で良いご縁があれば、事業拡大の手段としてまた検討していきたいですね。

譲受側:青山氏

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