平成16年から運営してきた学習塾を事業譲渡。経営者の交代で生徒やご家族に影響が出ないように進めた第三者承継の裏側に迫る。
(譲渡側):家守氏
早稲田育英ゼミナール(家守繁人氏) |
譲渡側:家守 繁人氏
ホテルマンでの勤務経験を経て、平成16年に学習塾を創業。小学生から高校生という幅広い生徒を対象にしていた。年齢の問題から引退を考えて、日本公庫の事業承継マッチング支援に登録し、相手先探しを行った。
譲受側:A社
所在地:大阪府 業種:福祉事業
経営の多角化を視野に事業の譲受を検討していた。自社と近隣だったこと、経営者が変わっても運営可能である点を評価し早稲田育英ゼミナールを譲り受けた。
譲渡側:家守氏
小学生、中学生、高校生を指導していて、メインは中学生でした。小学生と中学生は入試も含めた指導をしていましたが、高校生に関しては大学受験のための勉強ではなく、学校のカリキュラムについていくための勉強を教えていました。進学塾というよりも、補習塾というイメージが強いと思います。学力的には成績が真ん中ぐらいの子が一番多かったです。5段階では成績が3か4ぐらい、学校のテストの点で言えば100点満点で50〜70点あたりの生徒をメインターゲットにしていました。
譲渡側:家守氏
経営に携わっていたのは私だけですが、塾での勤務経験がある女性を雇っていました。学習塾は保護者の方に接する機会も多いため、男一人だけで運営するのはあまり望ましくないと思っていました。そこで年配の女性がいる方が良いと思っていたので、事務担当の女性を塾長代理として、現場の細かいことはその女性に任せて、全般的な運営を私が担う形で進めていました。また、塾講師はしっかり指導できる人が良いと考えていましたので、難関大学卒を中心に常時10人前後の講師を雇っていました。
譲渡側:家守氏
平成16年に学習塾を創業しましたが、元々はホテルマンをしていました。当初はホテルマンの経験を活かせる観光業や飲食業を考えたのですが、最終的に選んだのはフランチャイズの学習塾でした。未経験の業種をゼロからスタートする創業だと、事業を軌道にのせるまでに時間もかかるものですが、私はフランチャイズのサポートに大きく助けられました。
譲渡側:家守氏
年齢です。70歳を過ぎた頃から、事業承継を考えていました。塾は生徒と接するので体力が必要です。高齢者には厳しいですね(笑)
譲渡側:家守氏
私の場合は、幸いにも塾長代理の女性もいましたので、経営者が変わってもさほど問題なく運営ができるようになっていました。また、フランチャイザーに事業譲渡が可能なことを確認しました。
そのためお相手探しから始めました。お相手探しは日本公庫や事業承継・引継ぎ支援センターにお願いして、探してもらいました。自分ひとりで探すのは難しいですね。
譲渡側:家守氏
事業承継・引継ぎ支援センターでは、数社の紹介をいただきました。しかし、立地の問題などで条件が合わず、成約には至りませんでした。その後、日本政策金融公庫からも紹介してもらって、2社とお話しました。
譲渡側:家守氏
特段譲れない条件があったわけではないのですが、譲渡後もトラブルなく塾を運営するために、遠方の方だと難しいと感じていました。あとは実際に話をして、フィーリングで判断ですね。また、お相手探しを始めたころは、譲渡対価もやや強気な希望でしたが、この金額では難しいかなと感じて下げたところ、すぐにお相手が見つかりました。後はとにかく「早稲田育英ゼミナールをしっかり引き継いでくれる人であれば」という気持ちが強かったです。
譲渡側:家守氏
それほどこだわりはなかったです。きちんと後を継いでくれる人なら、どなたでも結構でした。お相手として望ましい人物像のようなはっきりとしたイメージを持てていなかったものあります。
譲渡側:家守氏
事業承継後は受け継いだ方の営業方針で運営してもらえればいいと考えていたので、何も条件は提示していません。オーナーが変わっても、従業員や生徒に影響がなさそうなお考えのお相手を選びましたが、最終的にはお相手の経営方針がありますので、こちらから条件として提示はしていません。
譲渡側:家守氏
今まで通りの印象です。この1年間は、私が経営していた形を受け継いで運営していました。しかし、3月からは移転して自習学習メインの塾にすると聞いています。今も塾長代理を務めてくれていた女性がそのまま残っているため、彼女とはよく連絡をとっています。事業承継後も様子を伝えてくれますので、助かっています。
譲渡側:家守氏
最大のメリットとしては、そのまま今の塾を引き継いでくれるのがありがたかったです。事業承継を行わずに消滅させてしまうと、退去費用がかかるだけでなく通ってくれている生徒やご家族に迷惑をかけてしまいかねませんでした。しかし、承継先が見つかり新しいオーナーに代わっただけなら、生徒やご家族も安心していただけると思いました。今では、事業承継という形がぴったりだったと思います。
譲渡側:家守氏
うまくいって一安心ですね。もっと第三者承継が広まったらいいと思いました。簡単にだれでもうまくいくわけではないですが、検討せずに事業を辞めるのはもったいないと思います。
譲渡側:家守氏
生徒やご家族は、私が定年して塾長が変わったぐらいの認識しかないと思います。塾長代理を務めてくれていた女性もいますので、変化は特に感じていないでしょう。誰も気がつかないうちに、オーナーを入れ替われたというのが最も良い第三者承継のカタチに感じますね。