事業承継マッチング支援

承継で一気に広がる視野とビジネス。
顧客層の拡大と売上アップが実現

「株式会社セキュリティ九州」と、隣町の菊陽町にある「サオサス株式会社」の第三者承継が実現。防犯工事と電気工事をそれぞれ専門とする同業者のタッグによって、双方の事業に相乗効果が生まれている。

Story’s Point

  • 益城町で約30年にわたり防犯工事会社「株式会社セキュリティ九州」を営んできた安田氏は、年齢を理由に引退を検討。後継者がいなかったが、顧客と従業員のために益城町に会社を残したいと考え、第三者承継について益城町商工会に相談する。
  • 益城町の隣町で電気工事会社「サオサス株式会社」を営む和田氏。防犯カメラ設置工事業の強化を目指し、日本公庫の事業承継マッチング支援に登録し、譲渡先の紹介を依頼した。
  • 令和4年5月に両者が面談し、同月月末には基本合意に至る。その後8月には株式譲渡契約が成立するという異例のスピードで承継が実現。第三者承継したことで双方の事業の提案の幅が広がり、売上アップに繋がっている。
左側(譲受側):和田氏 右側(譲渡側):安田氏

左側(譲受側):和田氏 右側(譲渡側):安田氏

Company Information

株式会社セキュリティ九州

株式会社セキュリティ九州
所在地 熊本県上益城郡益城町 創業 平成7年 
業種 防犯工事業

譲渡側:株式会社セキュリティ九州(代表:安田氏)
警備会社勤務を経て、平成7年に「株式会社セキュリティ九州」を設立。およそ30年間にわたる誠実な事業経営で地域に貢献し、会社を育ててきた。自身の引退に際して第三者承継を希望し、令和4年2月に事業承継マッチング支援に登録。

譲受側:サオサス株式会社(代表:和田氏)
平成元年に「サオサス株式会社」を設立。電気工事を中心に電気通信工事や土木工事など幅広い工事を手がけている。変化を恐れず挑戦する前向きな姿勢で事業のさらなる強化を目指し、M&Aを検討していた。

商工会と日本公庫によるダブルのマッチング支援で面談が実現

ーー事業内容を含め、自己紹介をお願いします。

譲渡側:安田氏

20年近く警備会社に勤めた後退職し、平成7年に立ち上げたのが「株式会社セキュリティ九州」です。防犯カメラ設置工事と防犯工事のほか、これに付帯する電気工事も一部行なってきました。民間企業からのご依頼はもちろん、熊本県や益城町の公共事業にも登録し、ありがたいことに時には指名でご依頼をいただくこともありました。
事業を営む上で私が大事にしてきたことは、お客様を大切にすること。お客様は、万が一の事態に備えて防犯カメラや防犯システムを設置していらっしゃるので、何かトラブルが発生した際はできる限り早く駆けつけて対応することを心がけてきました。この対応にはお客様からもご満足いただき、設備の更新や修繕の際にはリピートで何度もお声がけいただいていました。

譲渡側:安田氏

譲受側:和田氏

前身となる会社を平成元年に立ち上げ、平成29年に「サオサス株式会社」、関連会社を含めて「サオサスグループ」となりました。民間企業と公共機関の双方をお客様に持ち、照明のLED化などの電気設備工事を中心に、インターネット通信工事やケーブルテレビ工事など幅広い工事を行なっています。
企業理念は、「変化し続けることへの挑戦」です。時代のニーズを読みながら、私たちが提供できる商材を増やし、変化に対して柔軟かつ貪欲に挑戦し続けよう、という想いを込めました。「サオサス」という会社名も「流れに棹さす」に由来しています。

譲受側:和田氏

ーー第三者承継に興味を持ったきっかけは?

譲渡側:安田氏

会社の譲渡を考え出したのは、70歳を間近に控えた頃です。経理を担当してくれていた妻が体調を崩し、そろそろ私も潮時かと感じるようになりました。後継者はいなかったのですが、お取引いただいているお客様に対して、突然「事業をやめました」と無責任に仕事を放り出すわけにはいきません。私が引退した後も、しっかりお客様のサポートができる体制を整えなければ、という気持ちが強く、廃業する考えは最初からありませんでした。

譲受側:和田氏

私は事業承継やM&Aには以前から関心があり、日本公庫のホームページもよく閲覧していました。かねてから、防犯カメラの設置工事を強化したいという考えがあり、良い企業との出会いを模索していました。

ーー面談までの経緯を教えてください。

譲渡側:安田氏

第三者承継に関してはインターネットやテレビなどで度々目にしていましたが、本格的に行動を起こし始めたのは、益城町商工会の情報誌で目にとまった「事業承継セミナー」に参加したことがきっかけです。その後、商工会と熊本県商工会連合会、専門家の方も交え、個別の相談会で承継に関する具体的な相談をさせていただきました。そして、熊本県商工会連合会経由でマッチング支援を行なっている事業承継・引継ぎ支援センターと日本公庫の双方にサービスの申し込み登録を行いました。それが令和4年2月のこと。すぐに双方から合わせて4件の会社を紹介していただき、面談をすることになりました。

譲受側:和田氏

私が株式会社セキュリティ九州を知ったのは、日本公庫のホームページです。社名や住所は伏せられていましたが、防犯カメラの工事を専門的に行なっている会社ということで非常に関心を持ち、日本公庫の熊本支店に電話をしました。その後、秘密保持契約を経てお相手の会社の情報を教えていただいたところ、サオサスの事業所の隣町である益城町の事業者ということが分かり、ぜひとも面談をお願いしたいと思いました。

誠実さと熱意が伝わり、面談からわずか3ヶ月でスピード契約

ーー株式会社セキュリティ九州のどのような点に魅力を感じましたか?

譲受側:和田氏

事業を引き継ぐことを考えたときに私が重視していたことが、私自身がサオサス株式会社と行き来できる場所にあることでした。株式会社セキュリティ九州のある益城町は、偶然にも私の妻の実家がある町。常日頃から頻繁に行き来しており、愛着も強かったのです。
また、地域での認知度が高いことも大きな魅力でした。お客様が「防犯カメラを設置したい」と考えたときに、「防犯カメラならセキュリティ九州」と真っ先に相談いただけるのです。特性の違う同業者とグループ関係を築くことで、非常に高い相乗効果が生まれるだろうと確信しました。

地域で高い認知度を誇るセキュリティ九州の防犯カメラの設置工事

地域で高い認知度を誇るセキュリティ九州の防犯カメラの設置工事

ーー譲渡先にはどのような条件を求めていましたか?

譲渡側:安田氏

従業員をそのままの待遇で雇用すること、また益城町の事業所としてそのまま会社を引き継いでもらうことを条件として提示しました。せっかく生まれ育った地元で起業し、地域の皆さんにお世話になってきたという想いがありますので、この町にこの会社を残したいと考えたのです。もちろん、将来的に事情が変われば事業所の移転も選択肢になりえますが、まずは今いるお客様と従業員を大切にしてほしいと思いました。
最も重視していたのは社長の熱意です。会社の概要は事前に聞いていましたが、資料だけでは会社の良さは伝わりません。特に中小企業は大企業とは違い、名前で売っているわけではありません。セキュリティ九州も、一人ひとりの「頑張るぞ」という熱意でお客様を獲得してきた会社なので、やる気と熱意のある方でなければお任せできないという気持ちがありました。

ーー面談でのお互いの印象はいかがでしたか?

譲渡側:安田氏

誠実そうで、非常に熱意のある方だと第一印象で分かりました。目の輝きが違いましたね。会話をしていても、和田さんが私を気遣ってくれていることは十分に伝わってきましたし、奥様が益城町の出身ということもあり、きっとお客様を大切にしてもらえるだろうと感じました。
その後のメールや書類の文章を読んでいても一つひとつの言葉を選んでくれていることが分かり、どんどん心が惹かれていき、この方にお任せしたいと思いました。

譲受側:和田氏

安田さんからは経営者としての風格や威厳を感じました。緊張しながら、言葉を選び選びお話ししたことを覚えています。さまざまな想いを持って経営されてきたと思うので、その会社を気持ちよく任せていただけるように、益城町に対する想いや、引き続き地元の会社として頑張っていきたいという決意をお伝えしました。

左側(譲受側):和田氏 右側(譲渡側):安田氏

ーー承継にあたり、大変だったことは?

譲渡側:安田氏

大変と思うことは何もありませんでした。面談をする前は、成約までに1、2年かかるものと覚悟していましたが、実際はトントン拍子で話が進み3ヶ月で契約しました。あっという間でしたね。私が何もしなくても、和田さんが全てを準備してくださったので、私は終始受け身の体制でした。

譲受側:和田氏

交渉がかなりのスピードで進みましたから、書類作成は大変でした。通常業務と並行しながらの準備で、日によっては遅くまで時間がかかりましたが、ここを乗り越えなければ私の気持ちは伝わらないと思っていたので必死でしたね。私の熱意を分かっていただくためにも、書類作成の期限は必ず守り、質問されたことに対してはできる限り早くお答えするといった基本的なことを徹底していました。
手続きについては、最初は「何をすれば良いのか分からない」という状態でしたが、作成した書面の添削や面談への立ち合いなど、県商工会連合会や日本公庫、事業承継・引き継ぎ支援センターの方々に全面的なフォローしていただいたおかげで、スムーズに進めることができたと思います。

強みと弱みを補い合い、刺激し合いながら2社一体で成長を続ける

ーースムーズな承継のために準備していたことはありますか?

譲渡側:安田氏

引退する何年か前から、少しずつ私が担当するお客様を従業員に分散して自分の動きを軽くしておき、私の身に何かあった場合でもお客様にご迷惑がかからない体制を整えていました。「お客様のご要望にはスピーディーにお応えする」という意識は従業員に浸透していたので、お客様を大切にする社風も醸成されており、安心して任せることができています。

譲受側:和田氏

私も、5、6年前から従業員教育に注力してきました。関連会社ができると、ずっとサオサスの事業所にいるわけにはいかなくなるので、従業員の主体性や責任感の育成、価値観の共有を地道に続けてきました。例えば、仕事に対して口出しをしない、相談をされても指示を出すのではなく「どう思う?」と質問で返すといった具合です。
根気よく続けるうちに従業員にも少しずつ変化が現れ、ある程度任せても大丈夫だと感じられるようになりました。承継への一歩は、従業員の成長がなければ踏み出せなかったと思っています
また安田さんからも、セキュリティ業界の成り立ちや個々のお客様に対して気を付けるべきポイントなど、多くのアドバイスをいただきました。このこともスムーズな承継につながっていると感じます。

手前(譲受側):和田氏 奥側(譲渡側):安田氏

ーー従業員の方々の反応はいかがでしたか?

譲渡側:安田氏

変化は感じませんよ。時々、散歩がてら事務所に立ち寄ることもありますが、雰囲気は以前のままです。

譲受側:和田氏

隣町の同業者だからか、抵抗感が全くなく、温かく迎え入れてくれました。私も、不安よりも仲間が一気に増えるという楽しみの方が大きかったですね。双方の従業員が同じ現場を行き来することもありますし、繁忙期にはお互いの現場の応援に駆けつけることもあります。まだ事業承継があって半年ですが、今では昔から一緒に働いてきた仲間のようです。

ーー第三者承継を終えて、実感しているメリットは?

譲渡側:安田氏

気持ちが非常に楽になりましたね。経営者でいる間は常に売上のことが頭にありましたから、そのプレッシャーから解放されてお酒が美味しいです(笑)。それも、サオサスグループを築き上げてこられた和田さんにお任せできたからこそ。社内の人間に経営を任せていたら、もしかすると今でもヒヤヒヤして寝られない日々が続いたかもしれません。企業は人が動かすものですから、若くて信頼できる方にお任せできて、今はすっきりとした気持ちです。

譲受側:和田氏

お客様や従業員、商流などさまざまなつながりを一手に引き受けることができる点に大きなメリットを感じています。顧客に提案できるサービスの幅も広がり、さまざまな相乗効果が生まれています。実際に第三者承継後、益城町が発注する仕事を二社でタッグを組むことで受注することができました。どちらか一社では受けられなかった仕事です。顧客層の拡大や売上の増大が見込めますし、これまでは外注業者に支払っていた収益の一部をグループ内で保有することができ、今後の事業展開も非常に有利になりました。
また、他の方が作り上げてきた会社ですから、独自の取り組みやルールを知ることができ、目から鱗の新しい発見が山のようにあります。例えば、セキュリティ九州では従業員へのインセンティブ制度を導入しており、それによって従業員が自発的に、情熱を持って売上達成に向かう仕組みが構築されています。「こんな方法があるのか」と気づくことも多く、一人で地道に経営していては到底手に入らないような視野の広がりを得られました。

ーー今後の展望をお聞かせください。

譲渡側:安田氏

私は見守るだけで、何も言うことはありません。サオサスがバックに控えていることで、セキュリティ九州の従業員も幅広い営業提案を行うことができ、良いサイクルが生まれるだろうと期待しています。また、益城町などの公共工事にも力を入れていただいているので、景気に左右されることなく力強く経営を続けていけると思います。私は安心して、趣味のワカサギ釣りに没頭します(笑)

譲受側:和田氏

承継によって世界が一気に広がった思いです。この勢いに乗り、今後の事業を大きく育てていきたいと思います。両社がタッグを組めば顧客層が広がりますし、情報を共有することでお互いの営業戦略に活かすこともできます。サオサスとセキュリティ九州の双方の特性をうまくクロスセルさせ、強みと弱みを補い合い、刺激し合いながら今後もたくさんの相乗効果を生み出していきたいと思います。

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