中小企業事業

中小企業者の成長・発展支援

我が国における中小企業・小規模事業者

全企業の99%を占める中小企業・小規模事業者
わが国では、全企業の99%を中小企業・小規模事業者が占め、全従業員の約70%が勤務するなど、中小企業・小規模事業者は日本経済の活力の源泉であり、地域経済を支える大きな存在です。

企業数割合

従業員数割合

(資料)総務省「平成26年 経済センサス‐基礎調査」、
    総務省・経済産業省「平成28年、令和3年 経済センサス‐活動調査」再編加工

中小企業事業の役割

国内中小企業・小規模事業者の約半数が支援先
一口に中小企業・小規模事業者と言っても、多くの従業員を雇用し地域の経済を支えている企業、創業百年を超えるような老舗企業、家族で経営する個人商店など、その規模・態様は実にさまざまです。中小企業事業では、これら多様な中小企業・小規模事業者に対して、融資、信用保険、証券化支援といった多様な金融手法を活用しながら、それぞれの企業に見合った形での幅広い支援を行っています。

中小企業・小規模事業者数割合

中小企業・小規模事業者向け貸付残高

中小企業事業は、中小企業・小規模事業者のうち約164万先(約49%)の資金繰りの円滑化に貢献しており、また、中小企業・小規模事業者向け貸付残高のうち約14%を占めています。

支援先の特徴

平均融資金額約100百万円、平均保険引受額19百万円

融資業務(直接貸付)

信用保険業務

(注)実績は、令和5年3月31日現在のものです。

中小企業事業のお取引先(直接貸付先)6.2万先の従業員は約384万人(令和5年3月31日現在)に上っており、 雇用の維持にも貢献しています。

業種別融資残高構成比(融資業務)

業種別保険引受残高構成比(信用保険業務)

企業成長における貢献

783先の取引企業が株式を公開
中小企業事業は、中小企業専門の政策金融機関として、中小企業者の皆さまの成長・発展を支援しています。これまで中小企業事業との取引を経て、株式の公開を果たした企業は、株式公開企業の約2割にあたる783先(注)となっており、多くの方々がわが国を代表する企業として活躍されています。
平成元年以降についても、中小企業事業との取引を経て株式を公開した企業は618先(注)と株式公開企業の4分の1を占めています。
(注)先数は令和5年3月31日現在において株式を公開している企業数です(上場廃止、合併による消滅等を除く)。

中小企業事業と取引歴を有する株式公開企業

中小企業事業と取引歴を有する株式公開企業(平成元年以降)

民間金融を質と量で補完

長期資金を専門に取り扱っています
中小企業者が円滑に成長・発展していくには、適時的確な設備投資の実施と継続的な財務体質の強化が必要であり、このため長期資金の安定的な調達が不可欠です。
しかし、一般的に中小企業者は大企業と比較して資本市場からの資金調達が困難であるなど、資金調達の手段が限られています。
中小企業事業では、長期資金を専門に取り扱っており、融資の過半が期間5年超の長期資金で、すべて償還計画が立てやすい固定金利となっています。 中小企業事業は、民間金融機関を補完し、わが国の経済にとって重要な役割を担う中小企業者の皆さまの長期資金ニーズに応えています。

■融資期間別貸出状況(金額構成比)

不動産担保や保証人に依存しない融資

不動産担保に依存しない融資
中小企業事業では、機械装置や商品在庫、知的財産権等を担保の対象とするほか、無担保貸付にも弾力的に対応しています。特に、無担保貸付は、融資額全体の過半を占めています。

保証人に依存しない融資
中小企業事業では、従前から経営者保証に依存しない融資に積極的に取り組んでおりますが、平成26年2月に「経営者保証に関するガイドライン」の適用が開始されたことを受け、保証人の取扱いについて、よりご利用しやすいように変更し、すべてのご融資申込先に対して、ご案内した結果、保証人に依存しない融資実績が着実に増加しています。

事業資金を安定供給
中小企業事業の融資の伸びは、リーマン・ショック後の景気低迷期などには高く、逆に景気回復期には低下しています。
中小企業事業は、民間金融機関を補完するという見地から、中小企業者の皆さまに事業資金を安定的に供給しています。

中小企業向け貸出残高伸び率(対前年同期比)

信用保険制度の役割

中小企業事業は、担保力や信用力の乏しい中小企業・小規模事業者が金融機関からの借入または社債の発行などにより事業資金の調達を行う際に、信用保証協会が行う債務の保証(信用保証)について保険を行っています。信用保険制度は、中小企業・小規模事業者の振興を図ることを目的として、中小企業信用保険法(昭和25年法律第264号)などに基づき、中小企業・小規模事業者の借入などの保証について保険を行う制度です。この信用保険制度と信用保証制度が一体となって機能することにより、中小企業・小規模事業者に対する事業資金の供給の円滑化が図られています。このような仕組みは「信用補完制度」と呼ばれており、国の中小企業金融政策の重要な一翼を担っています。

中小企業の47%が信用補完制度を利用

令和5年3月末現在、信用保証協会が保証している融資など(保証債務残高)は40兆円で、中小企業向け貸出しの12%が信用保証制度の利用によるものとなっています。信用保証制度は158万先の中小企業・小規模事業者の皆さまに利用されており、中小企業の47%が信用保証制度を利用して資金調達を行っていることになります。
信用保険制度は、このような保証について保険を行うことで中小企業・小規模事業者の皆さまの円滑な資金調達を支えることにより、経営の安定と事業の成長・発展に貢献しています。

証券化支援

証券化手法を活用し、民間金融機関等による無担保資金の円滑な供給を支援
中小企業金融の円滑化を図るという観点から、中小企業者の皆さま向け貸付債権等の証券化が行われています。
中小企業事業は、証券化の手法を活用することで、民間金融機関等による中小企業者の皆さまへの無担保資金の円滑な供給及び中小企業者の皆さまの資金調達手段の多様化を支援しています。また、信用リスク、審査、証券化事務等を適切に負担することで、民間金融機関等が利用しやすい証券化手法を提供しています。
証券化支援業務では、買取型、保証型等の手法を活用し、平成16年7月の業務開始から令和5年3月末までの累計で延べ341の金融機関と連携して、延べ18,008先の中小企業者の皆さまに対する4,439億円の無担保資金の供給を支援しました。

買取型の取組事例

39の地域金融機関との連携により、CLOを組成
証券化支援買取業務において、令和5年3月に「地域金融機関CLOシンセティック型(合同会社クローバー2023)」を組成しました。中小企業事業は、39の地域金融機関とCDS契約(注)を締結するとともに、特別目的会社(合同会社クローバー2023)が発行した社債399億円のうち109億円を取得し、50億円に保証を付しました。本CLOによって、38都道府県の1,943先に対して410億円の無担保資金が供給されました。

成長分野等への支援

時代の要請に応じて創設される特別貸付の推進

わが国の政策金融は、新事業育成、事業再生、事業承継、海外展開など、リスクが高い分野に対して、国の重要な政策に基づいた金融支援を行っています。
中小企業事業は、これらの政策に基づき、中小企業者専門の政策金融機関として民間金融機関を補完しながら、金融を通じて中小企業者の成長・発展をサポートするとともに、セーフティネットの機能も果たしています。

新型コロナウイルス感染症関連の融資実績

新型コロナウイルス感染症に関連する融資の実績は、令和5年3月末までの累計で、61,441件、6兆3,867億円となりました。そのうち、新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付の実績は、令和5年3月末までの累計で6,787件、9,862億円となっています。

新たな事業への取組み支援

中小企業事業は、高い成長性が見込まれる新事業に取り組む中小企業者の皆さまを支援する特別貸付「新事業育成資金」及び我が国の経済成長及び社会課題の解決を先導することが見込まれるスタートアップの成長を支援する特別貸付「スタートアップ支援資金」に積極的に取り組んでおり、現行の制度がスタートしてからの累計実績(注)は15,963先、7,693億円にのぼっています(令和5年3月末時点)。
(注)新事業育成資金は平成12年2月から、スタートアップ支援資金は令和5年2月から制度がスタートしています。融資実績には、挑戦支援資本強化特別貸付を含みます。

海外展開企業への支援

中小企業事業では、10,839先のお取引先現地法人等が海外で活躍しており、中小企業者の皆さまの海外展開を支援する海外展開・事業再編資金、スタンドバイ・クレジット制度による資金調達支援に取り組んでいます。また海外展開しているお取引先の多い全国36拠点に「海外事業支援推進担当」を設置するなどサポート体制を構築しています。
令和4年度の「海外展開・事業再編資金」の融資実績は434先、405億円となりました。そのうち「クロスボーダーローン」(海外現地法人に対する直接融資)の融資実績は94先(76億円)となりました。
令和4年度のスタンドバイ・クレジット制度の利用実績は、タイ、中国、韓国、インドネシア、ベトナム、メキシコ、シンガポール、マレーシア及び台湾の提携金融機関に対して信用状を発行し、82先となりました。

中小企業事業のお取引先現地法人等の先数

提携金融機関

スタンドバイ・クレジット制度(スキーム)

クロスボーダーローンについて
クロスボーダーローンは、海外の構造的変化等に適応するために、国内親会社(中小企業者等)と共同で経営力向上や経営革新、地域経済の活性化等に取り組む海外現地法人に対して、日本公庫が直接融資する制度です。ご利用いただける国・地域は、タイ、ベトナム、香港、シンガポール、フィリピンとなっています。

クロスボーダーローンのスキーム図

事業再生に向けた取組み支援

事業再生支援
事業の再生や経営再建に取り組む中小企業者を支援する「企業再生貸付」による支援に加え、以下の支援等を行っています。

企業再生貸付

資本性ローン(再生型)

「シンジケートローン特別貸付(旧シンジケートローン特例制度)」の概要
中小企業事業では、経営改善等に取り組む中小企業者の皆さまを対象として、民間金融機関と連携し、「シンジケートローン特別貸付(旧シンジケートローン特例制度)」を活用した支援に取り組んでいます。令和4年度では52社、121億円の参加実績となりました。

公的再生支援機関との連携実績
全国の中小企業活性化協議会が令和4年12月末までに再生計画策定支援を完了した22,764先のうち、中小企業事業は2割を超える5,628先の支援に関与しました(令和4年12月末時点の累計実績)。

事業承継への取組み支援

事業承継・集約・活性化支援資金の融資実績
中小企業事業は、後継者が不在である企業のM&Aや、安定的な経営権確保のための自己株式取得など、事業や企業の承継・集約に取り組む中小企業者の皆さまを支援するため、特別貸付「事業承継・集約・活性化支援資金」による支援を行っています。
中小企業庁は、「事業承継・再編・統合による新陳代謝の促進」を平成30年度以降の重要政策の一つとして位置付けています。当事業は、今後も本融資制度を活用し、事業や企業の承継・集約に取り組む中小企業者の皆さまの支援に取り組んでいきます。

民間金融機関との連携

中小企業事業は、融資・証券化支援・信用保険の多様な機能と長年にわたり培った審査力、全国6.2万先の顧客データベースに基づく情報を活かし、「新事業・スタートアップ支援」「海外展開支援」「早期事業再生支援」「事業承継支援」「証券化支援」「経営相談支援」「人材育成協力」の分野で民間金融機関と連携して、中小企業者を支援しています。具体的には、民間金融機関と緊密な情報交換を行い、協調融資での支援、マッチングイベントや海外展開・事業承継セミナーの共催などに取り組んでいます。
特に、平成30年度からは、「新たなステージに向けた民間金融機関連携の取組み」として、民間金融機関との連携に積極的に取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症への対応においても、これまでの連携関係のもと、同感染症により影響を受けた中小企業者の皆さまへの資金繰り支援を実施しています。

顧客支援サービス

「往診型のホームドクター」として経営課題の解決を支援

中小企業事業は、「公庫のDNA」(①財務書類の精査、②お客さまとの対話、③現場に足を運ぶこと)を発揮し、「往診型のホームドクター」として、対話を通じて個々の企業の経営課題を把握し、お客さまが発展していくために必要な情報の提供や、経営に関するアドバイスを継続的に行っています。
当事業では、長年蓄積してきた中小企業経営に関するノウハウや全国6.2万先のお客さまの情報をデータベース化した独自のシステムを構築し、顧客支援サービスに活用しています。
当事業の提供する情報は、個々の企業のニーズに応じた、いわば“オーダーメイド”の情報であり、このような「生きた情報」の提供と目利き能力を活かしたアドバイスにより、中小企業者をバックアップしています。また、ご相談内容に応じて、連携する外部専門家への橋渡しも実施しています。

顧客支援ツール
わかりやすい企業診断

中小企業事業のお客さま6.2万先のデータに基づく同業者比較、決算データの時系列分析、損益分岐点分析、付加価値分析など、お客さまの財務を多面的な角度から分析する「わかりやすい企業診断」を提供しています。

SWOT分析
企業の持つ「強み」(Strength)と「弱み」(Weakness)、事業を取り巻く「機会」(Opportunity)と「脅威」(Threat)を明確化したSWOT分析により、お客さまの経営戦略策定をサポートしています。

経営に役立つ情報の提供
「経営情報」や「JFC中小企業だより」等を発行し、お客さまに役立つ情報を随時ご提供しています。

経営情報
中小企業施策や企業経営に役立つトピックス等をとりまとめ、広くPRするためのリーフレットです。

JFC中小企業だより
特徴ある企業へのインタビュー記事(有効事例)を通じて経営課題解決の一助としていただくツールです。

事例集
お客さまが、公庫制度(海外展開・事業再編資金、企業再建資金等)を活用し、事業の成長・発展、再生を実現した事例を収録しています。

マッチングサービス

中小企業事業では、面談を通じて把握したお客さまの販路開拓ニーズや仕入・外注先開拓ニーズ等に対し、独自のマッチング検索システムも活用して、業種・地域・製商品等を絞り込み、6.2万先のお客さまの中からニーズに適合しそうなマッチング候補先を選定する等、お客さま同士の引き合わせをハンズオンで支援しています。また、全国オンライン商談会の開催等、お客さまに対するマッチングの場の提供にも力を入れています。

■ 希少な型式の大型機械の修理をサポートした事例

・A支店の担当者は、金属加工メーカーのB社(西日本に所在)から、「自社の希少な型式の大型機械が故障したが、近隣の地域に修理できる企業がいないため、全国から探してほしい」との依頼を受け、独自のマッチング検索システムを活用し、C支店のお客さまであるD社(東日本に所在)を選定のうえ、担当者に連絡しました。
・C支店担当者が、D社に対し面談希望の有無等を打診したところ、「是非一度話をしたい」との回答があったため、両社の引き合わせに向けてサポートした結果、両社の商談が成立。B社は大型機械を無事修理することができました。

全国オンライン商談会

ポストコロナにおいて、お客さまのビジネスチャンス拡大を支援するため、令和3年度に引き続き「全国オンライン商談会」を開催しました。
今回はこれまでの商談方法に加え、スタートアップ枠を新設し、DX、生産性向上等のサービスを提供するスタートアップと経営課題の解決に取り組むお客さまとを引き合わせました。