海外展開事例

海外市場へ新たな挑戦!

有限会社東北工芸製作所

オンライン商談会に挑戦!
画面越しに届く伝統と技術

(有)東北工芸製作所

国立工芸指導所で輸出のために開発された「玉虫塗」の特許実施権を得て、商品を製造販売。戦後、カリフォルニアに輸出を開始。1985年以降国内中心に事業展開したが、東日本大震災の影響を受け、2012年、新ブランドを設立し、海外展開を強化している。

所在地
宮城県仙台市
創業
1933年
資本金
300万円
従業員数
6名
海外展開先
アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、香港
事業内容
漆器の製造販売業
初めてのオンライン商談会に入念な準備を整えて臨む

有限会社東北工芸製作所は、東日本大震災によるインバウンド需要激減を契機として海外展開を強化してきた。
「国内外で使える商品を目指し『TOUCH CLASSIC』シリーズを開発。海外の展示会でもとても好評で、順調に輸出先が増えていきました」(佐浦みどり常務)
しかし2020年、新型コロナウイルス感染拡大により海外渡航が制限。「予定していた出張はすべて中止。現地バイヤーが来社することもなくなりました。実際に商品を見て、触ってもらえない状態では、商談はできない…と諦めていました」
渡航再開の見通しはつかず、何かしらのアクションを起こさなくては…と焦りが募る。そんな時、ジェトロがオンライン商談会を開催することを知り、参加を決意。
「離れていても伝えるノウハウを知りたいと思い、参加することにしました。でもオンラインは初めて。少しでも慣れておこうと、本社と工房の会議にオンライン方式を導入しました」
国内外での展示会の商談のように、うまくコミュニケーションがとれるのか、佐浦さんは不安だった。そこで、事前に行なわれたジェトロ主催の「写真の撮り方講座」にも参加。商品の使用感がわかる、動きのある写真・動画を撮影する方法を学ぶ。そのノウハウによって撮影した動画や写真で資料を作成し、準備万端でオンライン商談会に臨んだ。

  • 香港のバイヤーから受注したTOUCH CLASSICのグラス。薄く透明度の高い松徳硝子に、宮城の山の稜線と波打つ海をイメージした玉虫塗が施されている
    香港のバイヤーから受注したTOUCH CLASSICのグラス。薄く透明度の高い松徳硝子に、宮城の山の稜線と波打つ海をイメージした玉虫塗が施されている
  • 銀の下地を塗ってから透明の漆を重ねる玉虫塗。伝統的な意匠の商品は国内市場で人気
    銀の下地を塗ってから透明の漆を重ねる玉虫塗。伝統的な意匠の商品は国内市場で人気
  • 工房では、伝統的な手法を守りつつ、現代のライフスタイルに合わせた工夫を凝らした商品が生み出されている
    工房では、伝統的な手法を守りつつ、現代のライフスタイルに合わせた工夫を凝らした商品が生み出されている
  • ドイツDMYベルリン、フランクフルトメッセ「アンビエンテ」展示会出展の様子
    ドイツDMYベルリン、フランクフルトメッセ「アンビエンテ」展示会出展の様子
「見えづらい」を逆にチャンスに!商品の特徴をアピール

商談時間は30分。同社の歴史と伝統、仙台の風土を紹介する動画を背景に流しながら、商品のデモンストレーションを行い、佐浦さんの言葉を通訳が訳す。先方との間にいい緊張感が漲り、商談が進んだ。
「先方から『ちょっと見えづらい』と言われたら、カメラに商品を近づける『、使っているところを見たい』と言われたら、グラスに液体を入れて表情を変えて見せるなど、フレキシブルなプレゼンができました。結果的に、商品の特徴をさまざまな角度からアピールでき、先方の心にもダイレクトに響いたと思います」
また、終了後、サンプルが見たいという香港のバイヤーに、商品を送付したところ、梱包方法についての質問が返ってきた。
「グラスを布に包んで桐箱に入れているのですが、箱と蓋の合わせ方や包み方について外国の方はご存知ありません。先方と自分の手元に同じ商品があれば、画面越しに使い方を伝えることができ、日本の文化も学ぶことができたと好評でした。2回の商談を経て、契約が成立しました」
先日はイギリスのバイヤーともオンライン商談を行い、受注が決定。
「今回の経験を通じて、オンラインだからこそ伝わる情報があるということに気づきました。海外のビジネスは、予想外の気づきや課題を得られることも大きなメリット。オンライン商談は、場所を選ばず時間も節約できるので、往来が自由になっても、商談方法の一つとして活用したいと思います」

ワンポイントアドバイス

POINT 1オンライン商談会により広がるチャンス!

●オンライン商談会の広がりをきっかけに新たな国との商談の機会が広がっています。

●工場等から商談すれば、製作現場を知ってもらうことができます。また、実演の自由度も高いため使用感についてもオンラインだからこそ伝えやすいといえるでしょう。

POINT 2商談がまとまったら?

●輸出手続きは、専門家を活用しながら準備してみましょう。日本公庫では「輸出ビジネスのポイント」といった情報面および、「海外展開・事業再編資金」といった資金面からみなさまの海外展開をサポートしています。

代表から
代表取締役 佐浦康洋氏

代表取締役 佐浦康洋氏

オンラインを駆使して、今では全世界で自由に商談

将来的には、ものづくり・販売だけでなく、工房やショールームの体験を含めたツアーにつなげたいです。

常務 佐浦みどり氏

常務 佐浦みどり氏