海外展開事例

日本から世界へ実践!越境EC

株式会社喜市

現地の声を生かしながら
越境ECに成功

(株)円相

「Made in KOBE」にこだわった革工房を構える。素材を活かしつつ、機能美を備えた革製品を製造販売。2017年から、越境ECを活用した輸出をスタートした。

所在地
兵庫県神戸市
創業
2010年
資本金
500万円
従業員数
6名
進出国
台湾、中国
事業内容
革製品の製造販売業
現地のキーパーソンとの出会いがポイント

株式会社喜市の片山喜市郎社長は、創業後5年が経過した頃から、将来的に国内市場が先細りするのではないかと感じ、海外でのイベントに参加するようになった。出展したイベントでは、最初から順調に販売できたわけではなかったが、多くの気づきを得た。
例えば、中国・天津の展示会では、財布が思うように売れなかったが、キャッシュレス化が進展する中国での販売は難しいと身をもって感じた。
その後、2017年に転機が訪れる。神戸市が主催した台湾の百貨店での催事に、地元事業者と合同参加した。
「安価な革製品が多く出回っている台湾で、何を売ったらいいのかまるで分からず、テストマーケティングとしてポップアップ・ストアに参加しました。現地のニーズに合うのか、価格は見合うのか…。お客さまはもちろん、販売スタッフにもヒアリングをした結果、台湾のニーズは日本とあまり変わらないということが分かりました」(片山社長)
この催事への参加が、その後の海外展開へのきっかけになった。
現地で知り合った催事の担当者は、日本の大手広告代理店から独立した日本人。当社の商品を理解して、販売先としての可能性が高いバイヤーを紹介してくれた。
また、神戸の店舗によく来ていた知人が、台湾に在住することになり現地での在庫管理や販売のサポート役を担ってくれた。
「ポップアップ・ストアで売れ残った在庫を日本に持ち帰らず、2人に協力してもらって試験的に台湾での販売を継続することにしました」
ECサイトを通じて日本で注文を受け、台湾に置いていた商品を送ったところ、売れ行きは良好だった。※ポップアップ・ストア:期間限定で開設するイベント型の店舗のこと

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    片山社長の生家は元町商店街で 1917年創業の靴店を営む。子ども時代から慣れ親しんだ商店街に自身も店を構え、地域の活性化にも積極的に取り組んでいる。
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    台湾でのポップアップ・ストア。お客さまや販売スタッフから、現地ニーズを知ることができた。
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    催事用に作成した英語版のパンフレット。ものづくりへの思いや技術力などを訴求。
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    店内には工房も併設。革小物は細かいパーツも多く、良質な素材の提供者、デザイナー、若手職人や監修する熟練職人など、さまざまな人々の手を経て完成する。
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    素材を活かした商品を、充実したカラーバリエーションで展開。2010年に開業した「STUDIO KIICHI」は、同社のフラッグシップ。
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    手ごろな価格で革本来の風合いが楽しめる Moist シリーズは台湾で人気。
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    台湾の鍵のサイズが予想以上に大きく、キーケースはサイズを変更。台湾仕様に柔軟に対応。
現地に行く。自分の目で見る。話を聞く。

試験販売で手応えを得て、本格的に越境ECを活用した販売に着手。現在は自社サイトの他に台湾で代表的なECモールに出店している。
「お客さまはポップアップ・ストアで実際の商品を見て、ECモールで色違いや他のアイテムを探すので、非常に効果的でした」
オンラインでの購買傾向の分析と現地でのヒアリングを繰り返し、台湾現地のニーズに対する理解が深まってきた。
「リーズナブルな価格帯の商品が人気で、色やデザインも日本と変えていません。中国本土と異なり、財布の需要もまだまだあります。ただし、台湾の鍵は大きいのでキーケースのサイズを大きくするなど柔軟に対応した部分もありました。バッグは手提げ型ではなくリュックが人気。スマホやタピオカドリンクを持つので両手をフリーにしておきたいんでしょうね」
越境ECは、スタートするのは容易だが、売上を拡大するにはコツが必要だと感じることが多い。
 「越境ECは、お客さまの顔が見えいので、ニーズをつかみづらい。実際に現地に赴き、人々のライフスタイルを自分の目で見て、現地の声を聞くことはとても大切です。そこで得たニーズをもとに、長期的な視点で販売していくことが成功のカギだと思います」

海外展開を検討される企業の方へ

越境ECを軌道に乗せるコツは、結果が出るまで継続する覚悟をもつこと。

POINT 1現地のキーパーソンが大切●神戸市が主催する台湾の催事に参加し、そこで出会った台湾在住の催事担当者がキーパーソンとなりました。現地でしか分からない情報を色々と提供してくれます。

POINT 2現地ニーズを把握する●ライフスタイルが急速に変化している現在、以前とはまったく異なる価値観やトレンドも生まれています。現地に行って、ニーズを知ることはとても重要です。

代表取締役社長 片山喜市郎氏

代表取締役社長 片山喜市郎氏