海外展開事例

世界に羽ばたけ!日本の食

株式会社咲吉

食後のデザートとしてレストランで採用
日本の伝統的発酵ドリンク「甘酒」がアメリカ進出

(株)咲吉
所在地
長崎県大村市
創業
2016年
資本金
1万円
従業員数
7名
進出国
アメリカ、ドイツ
事業内容
麹を使った味噌・甘酒・塩麹などの製造販売・輸出販売
攻めの姿勢でつかみとった海外輸出のチャンス

障がい福祉施設の経営者である吉冨健一社長は、常日頃から「施設出身のみんなに就労の場を」という想いを抱いていた。もともと麹菌を使った商品が好きだった吉冨社長は、同じ大村市にある味噌製造会社が後継者を探していることを知り、自ら修業の後に事業を承継。こうして株式会社咲吉はスタートした。
海外輸出を考え始めたのは修業中の頃。「日本食を海外へ、という大きな流れを感じていました」と吉冨社長は振り返る。ジェトロ主催の商談会など、チャンスがありそうな場に積極的に参加。反応が良かった相手には商品やレシピを何度も送ったという。努力が実り、2018年に初めてニューヨークで開催された日本食レストランショーに出展。シャーベット状の甘酒をデザートとして提供したところ評判を呼び、契約につながった。帰国後、冷凍しても一般生菌が繁殖しないことを確認するテストをクリアしたうえ、ニューヨークに向けて約360kgの甘酒を輸出。その後、ジェトロの日本食品海外プロモーション事業に採択され、ドイツにも出荷した。

  • 画像キャプション
    口に広がる麹の香りとコクのある上品な甘みが特長。
  • 画像キャプション
    商品はすべて手作業で丁寧に作っている。
  • 画像キャプション
    冷凍甘酒に黒蜜ときな粉をかけたデザートを提案。
  • 画像キャプション
    甘酒のレシピはすべて吉冨社長が考えたもの。
  • 画像キャプション
    エルゴチオネインが豊富な「咲吉麹」が次の一手。
輸出事業を進めるなかで新商品のヒントを発見

さらに吉冨社長は、輸出事業を進めるなかで次の一手となり得る原石を見つけ出していた。「輸出に向けて様々な検査を行ったところ、咲吉の甘酒には、健康や美容の分野で注目されているアミノ酸の一種、エルゴチオネインが含まれることが分かったのです」。この発見をきっかけに吉冨社長は独学で研究を重ね、その後バイオベンチャー企業や大学と連携した共同研究を開始。化粧品原料「咲吉生糀 甘酒」を上市したほか、新商品としてエルゴチオネインが豊富な“米”の開発にも着手した。「米であれば甘酒と違って日持ちがしますし、人によって好き嫌いも分かれにくい。オペレーションのしやすさがまさに海外向きです。日本産の米の消費にもつながるし一石二鳥です」と吉冨社長は自信をのぞかせる。夢も可能性も大きく広がったように見えるが、吉冨社長は「施設出身のみんなが気持ちよく働けることが第一ですから」とあくまで初心を大切にする。この一本筋が通った想いこそ、吉冨社長を様々な挑戦に突き動かすもっとも大きな原動力となっているのだろう。

海外展開のBefore After

展開前

  • 国内には安価な甘酒が多く出回っており、売上の拡大が難しい。
  • 海外では「甘酒」の知名度が低く、商品の魅力が伝わらない。
  • 国内でのブランド力が足りず、認知度が低い。

ここで
世界へ!

展開後

  • 日本食レストランショー出展をきっかけに甘酒の輸出を開始。
  • 海外に向けて新しい甘酒の食べ方を考案。チラシを作って海外に甘酒の魅力を発信。
  • 海外展開の実績が認められ大村市の学校給食に当社製造の味噌が採用。
海外展開にまつわるQ&A
Q海外展開で苦労したことは?
Aそもそも「甘酒」がどういう商品かを伝えるのに非常に苦労しました。酒といったらアルコールだと誤解されますし、「Fermented rice juice」ではあまり意味が伝わりません。海外輸出における「分かりやすい伝え方」は事前に考えておく方が良いでしょう。
Q輸出にあたって公的機関からどんな協力を受けましたか?
Aアメリカでは輸出の際、「FDA(米国食品医薬品局)」の認証を得る必要があるのですが、このハードルが高いと言われています。しかしジェトロが申請書類の準備から書き方までサポートをしてくれたので、比較的スムーズに認証を得ることができました。
Q海外事業における次のビジョンは?
A「長寿ビタミン」とも呼ばれているエルゴチオネインが豊富な米を開発しました。今後は甘酒とエルゴチオネイン米の2本柱で、米麹のパワーを世界に発信していきます。日本の伝統的な食文化は、世界中の人の健康に寄与できると信じています。
海外展開を検討される企業の方へ

チャンスをつかむために、常に挑戦を。

「メイドインジャパン」はまだまだブランドとして十分に海外で評価されています。日本製の良い商品をお持ちの会社は、チャンスをつかむために積極的に海外展開にチャレンジしてみましょう。もちろん最初からうまく進むわけではありませんし、落ち込む日もあるでしょう。でも「絶対にいい商品なんだ」という誇りがモチベーションに繋がれば、結果はついてくるはず。一緒に頑張りましょう!

代表取締役 吉冨健一氏

代表取締役 吉冨健一氏