海外展開事例

世界に羽ばたけ!日本の食

株式会社かぐらの里

海外展開を契機に有機栽培にシフト
まじめで丁寧な柚子づくりで世界に挑む

(株)かぐらの里
所在地
宮崎県西都市
創業
1978年
資本金
300万円
従業員数
25名
進出国
アメリカ、フランス、スイス、中国など
事業内容
柚子の栽培、および柚子製品の製造販売、輸出販売
柚子胡椒は海外でも通用する

宮崎県随一の柚子の生産地、西都市東米良地区銀鏡。標高1000mにもなる山々に囲まれた小さな集落で、50年にわたり柚子栽培を続けているのが株式会社かぐらの里だ。地の利を生かして育まれた柚子は、苦みが少なく香りが豊か。この柚子を使った果汁や柚子胡椒はいまや地域の特産品としてのブランドを確立している。
海外展開のきっかけは2010年(平成22年)に日本貿易振興機構(ジェトロ)からブラジルのフェアに誘われたことだった。「最初はそれほど乗り気ではなかったんです」と濵砂社長は振り返る。しかし現地の反応を見てその思いは一転。「焼いた肉に柚子胡椒をつけて試食してもらったところすごく好評で。これは世界の香辛料になれるのではと、本腰を入れて海外展開に取り組むようになりました」。帰国後すぐに輸出用のパッケージ作りに着手し、並行してスイスやドイツ、香港と海外のフェアを巡りながら、各国の市場を調査。商談を重ねて着々と輸出先を増やし、アメリカ、フランス、台湾など世界16ヵ国に販売するまでに輸出事業を成長させた。

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    かぐらの里の柚子胡椒。柚子の香りと程よい辛さが肉料理にぴったり。
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    年々、海外における柚子の認知度は拡大している。
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    銀鏡でとれる柚子は香りが高く、かつ苦みが少ないと評判。
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    商品は自社工場で一つひとつ丁寧に製造している。
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    毎年12月12日から始まる「銀鏡神楽」。
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    有機柚子を使用したPREMIUMシリーズ。
「量より質」と農薬に頼らない有機栽培に切り替えた

ここまで順風満帆のように見えるが、「挫折は何度も味わっていますよ」と濵砂社長は笑う。とくに危機感を抱いたのが2015年(平成27年)、ドイツの食品見本市「アヌーガ」に参加した時だったという。「“YUZU”という言葉だけで伝わるようになっていて、柚子の需要は今後上がっていくと確信しました。一方でうちのような小さな会社では、大量に輸出ができる大きな会社に太刀打ちできないと思ったのです。」
しかし濵砂社長は諦めなかった。「量で勝てないなら質で勝てばいい」と有機栽培に切り替えたのだ。2020年にはJONA(日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会)の有機認証を取得。有機柚子を使用した「PREMIUMシリーズ」を製品化し、他社製品との違いを明確にした。「オーガニックへの興味は日本よりもヨーロッパの方が強い。オーガニック市場なら私たちの規模でも十分に戦えると考えました」。ひと段落したかのように思えるが、今は情報発信のやり方を見直し、「生産者の背景」や「商品のストーリー」を示すブランディングを進めている。海外展開への取組みに終わりはない。

海外展開のBefore After

展開前

  • 売上のすべてを国内販売で占めているため、需要拡大戦略が立てづらい。
  • 他県産柚子製品との差別化が難しい。
  • これまでのプロモーションでは「生産者の顔が見えない」という声も。

ここで
世界へ!

展開後

  • 16ヵ国との取引が生まれ、会社全体の売上の15%を輸出が占めるように。
  • 有機栽培に切り替えて有機柚子商品としてアピール。
  • 地域の伝統文化「神楽」をからめたブランディングなど、商品のストーリーを伝える情報発信スタイルに転換。
海外展開にまつわるQ&A
Q海外展開で苦労したことは?
A海外展開を始めてすぐの頃は、そもそも「柚子」が知られておらず、会話の糸口をつかむのに苦労しました。しかし柚子は他県も海外プロモーションに力を入れていることもあり、徐々に認知度が向上。時間が解決してくれることもあるものです。
Q海外展開事業における次の展開は?
A当社は国の重要文化財に指定されている「銀鏡神楽」を守っています。こうした地域の文化や物語も含めたブランディングを展開することで、ヨーロッパを中心とした「生産者の背景を知りたい」というニーズに応えようと考えています。
Qコロナ禍でどんな影響がありましたか?
A海外では商談の機会が無くなりましたし、国内では飲食店での需要がストップ。正直厳しい状況でした。一方で空いた時間を活用して食品安全認証規格である「FSSC22000認証」を取得。どんなときでも前に進められることはあると思います。
海外展開を検討される企業の方へ

譲れるところは譲る。柔軟な姿勢で可能性を広げよう。

国内と海外ではまったくの別物。食文化はもちろん、法律も、考え方も、流通システムもすべて異なるわけですから、日本でのやり方そのままで通用するとは考えない方が賢明です。自社の商品にこだわりとプライドを持つことは大切。でも「譲れる部分は譲ろう」という柔軟さも同じくらい大切です。この姿勢があることで可能性が広がると思います。

代表取締役 濵砂修司氏

代表取締役 濵砂修司氏