海外展開事例

世界に羽ばたけ!日本の食

株式会社池添蒲鉾店

徳島のローカルフードから世界の健康食品へ
高たんぱく・低脂肪「フィッシュカツ」の躍進

(株)池添蒲鉾店
所在地
徳島県徳島市
創業
1910年
資本金
1,100万円
従業員数
12名
進出国
アメリカ、中国、台湾、シンガポールなど
事業内容
魚肉練り製品の製造・販売
徳島のローカルフードを世界へ

フィッシュカツとは、味付けした魚のすり身にカレー粉や香辛料を加えたパン粉をまぶし、菜種油でカリッと揚げたヘルシーな魚のカツだ。徳島で「カツ」と言えばトンカツではなくこの「フィッシュカツ」を指すほど、ローカルフードとして親しまれている。
海外展開のきっかけは日本貿易振興機構(ジェトロ)から送られてきた海外輸出を促す一通のメールだった。
「すぐに参加を申し込みました。実は子どもの頃から外国への憧れがあったんですよ」と池添社長は笑いながら当時を振り返る。GOサインは出したものの、海外展開におけるノウハウを持っていなかった池添社長。ジェトロから派遣されたコーディネーターから、通関書類の書き方から船便の選び方など、一つひとつ学びながら輸出に向けて動いていったという。コーディネーターからのアドバイスもあり、まずは練り物を食す文化のあるアジア圏を中心に輸出を開始。並行して池添社長は「輸出エキスポ」など商談機会の場に積極的に参加するようになり、徐々に輸出国を拡大していった。

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    ANA国際線の機内食にも採用されているフィッシュカツ。
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    四国フェアではトースターで焼いたフィッシュカツを試食として提供。
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    おいしい食べ方を伝える英語版のチラシを製作した。
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    パン粉にカレー粉や香辛料を加えることで食が進む味に。
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    すべての商品に熟練の職人の技が光る。
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    ハワイではおでんの具としてちくわの消費が拡大中。
海外展開での試行錯誤が国内事業にも活きる

輸出国が増えるにつれて壁として立ちふさがったのが、国によって異なる食品添加物規制だ。「輸出をするようになってはじめて日本は規制が厳しいわけではないことを知りました」と池添社長。保存料や着色料のほか、旨味を出すためのアミノ酸や粘り気を出すためのグルテンなども規制対象となることが多く、何度も試作を繰り返しながら、規制成分を含まない商品を開発した。大変な苦労だったと思われるが、池添社長の言葉はどこまでも前向き。「海外展開にチャレンジしたおかげでより安全で健康的な商品に切り替えることができました」。
香港では居酒屋の一品として。中国ではお弁当のおかずとして。国ごとに様々な食べられ方で広がりつつあるフィッシュカツ。「まだ輸出の売り上げは全体の1割程度ですが、今後一番伸びていくセクションでしょう」と池添社長は自信満々だ。さらに池添社長は「厳しい規制への対応や、冷凍技術の開発など、輸出事業で培った経験は、国内向けの商品開発にも活きています」と語り、海外展開で得た経験を、国内事業のブラッシュアップにも結びつけている。

海外展開のBefore After

展開前

  • 国内では一般消費者が主なターゲットとなり売上が拡大しにくい。
  • 海外の人から見て、魚なのか、肉なのかが分かりづらいという声も。
  • 賞味期限が短いため遠方への輸送に向かなかった。

ここで
世界へ!

展開後

  • 飲食店に向けて業務用フィッシュカツを輸出。1度の注文で大きな売上が見込めるように。
  • 輸出国に合わせた商品開発の経験を、国内向け商品の開発時にも活用。
  • 賞味期限とともに、おいしさも長持ちする冷凍技術を開発。
海外展開にまつわるQ&A
Q海外展開で苦労したことは?
A中国やベトナムなど水産物の輸出では施設登録が必要になる国があります。こうした登録の取得にはやはり時間がかかりますし、苦労も多いです。私1人ではとても手に負えない量になってきたので専門の従業員を1名雇用しました。
Q海外展開事業における現在の課題は?
Aもっとも力を入れて取り組んでいるのがHACCP認証の取得です。ソフト面ではもう十分クリアしているのですが、工場の設備が古いためハード面で苦戦中。取得できればヨーロッパでも通用すると思うので、今後も専門家の方々の知識をお借りしながら前へ進めていきます。
Qコロナ禍でどんな影響がありましたか?
Aコロナ禍はリモートでの商談が主流に。便利だなと思う一方、やはりリアルで会って話した方が、結果に結びつきやすいことを実感しています。今後、積極的な渡航が許される状況になれば、なるべく現地を訪れて生の情報収集や市場調査、商談を行う予定です。
海外展開を検討される企業の方へ

「日本の伝統食」は世界から求められています!

アメリカの日本食フェアで、かまぼこが“高たんぱく・低脂肪”であるとPRしたところ、想像以上の反応があり、「求められている」という手応えを感じました。健康食として認知される日本食は、特に欧米で関心が高まっており、大きなビジネスチャンスがあると言えます。日本の伝統食に関わる企業が世界を舞台に切磋琢磨すれば、結果として日本の市場も活性化するでしょう。

代表取締役 池添憲作氏

代表取締役 池添憲作氏