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中小公庫「経営情報」No.347

営業力強化に向けた取組みのポイント

 顧客ニーズの多様化・高度化、グローバル化やIT化の進展などに加えて、従来の垂直的な下請け構造システムが崩壊する等、事業を取り巻く環境が大幅に変化し、競争が一段と激化する中で、既存の顧客との一層の取引深耕や、新たな顧客・販路の開拓を積極的に図り、売上や利益を確保していくことが、中小企業にとって大きな課題となっています。

 しかしながら中小企業の多くは、大企業に比べて経営資源や信用力が十分に備わっていないことに加えて、営業に関するノウハウ・情報の蓄積や営業組織体制の構築、営業担当者の教育・育成等が十分になされていないために、急激な事業環境の変化への対応が遅れているのが実情です。

 本号では、中小企業の営業力強化に向けた取組みのポイントについてご紹介します。

営業活動の改革

 景気の回復にも関わらず、売上や利益が思うように増加しない中にあって、「営業力の強化」は、多くの中小企業で重要な経営課題として認識されているものの、何から取り掛かって良いか分からず、具体的な取組みが進まないケースが多く見られます。

 営業力を強化するに当たっては、まず第一に日々行っている営業活動そのものの改革が必要となります。営業活動の改革とは、「行うべき営業活動の内容を明確にし、それを継続的に強力に推進していくこと」ですが、営業活動を改革するためには、営業活動を支える複数の周辺課題も同時に解決していくことが必要になります。

営業活動の改革

<周辺課題の概要と対応例>

  • (1)営業支援情報システムの構築:顧客情報データベース、提案書データベース等の整備、ソフト導入
  • (2)営業ツールの充実:営業マニュアル、セールストーク集等の営業関連資料の整備
  • (3)営業部門の計画管理システム:年度達成目標の協議・設定、週次・月次の行動計画と進捗管理
  • (4)営業マネージャーの役割の見直し:営業マネージャーの役割・行動指針の明確化、育成機能の強化
  • (5)営業担当者の動機付け:公平な評価制度の導入、歩合給・昇格ルール等の人事制度見直し
  • (6)営業担当者の採用・育成:能力要件表の作成、OJT/OffJTを組み合わせた教育体制の見直し

     なお、営業活動改革の取組みの効果をあげるには、以下の点に留意しながら進めることが大切です。

1.総合的にバランスよく取り組む

 前述の通り、営業活動を改革するためには、営業活動を支える6つの領域の周辺課題も同時に解決していくことが必要ですが、その際、顧客の特性や会社の管理レベル、営業担当者の水準やこれまでの施策の効果等も踏まえた上で、各課題に優先順位をつけながら取り組んでいく必要があります。場合によっては、いくつかの課題を並行して検討することが必要となりますが、それぞれの取組みの整合性をとること、検討工数をできるだけ有効に活用すること等が大切です。

2.改革の必要性を納得してもらう

 営業活動の改革は、営業担当者にとって今まで体に染み付いたやり方を変えることになるため、抵抗も少なくありません。改革を円滑に進めるためには、改革の必要性を納得してもらうことが大切で、そのために研修は重要な役割を果たします。研修は同時に、実践的なスキルの習得、社内コミュニケーションの場といった役割もあります。改革の実効性を高め、それを定着させるためには、研修を重要な業務と位置づけ、優先して取り組む必要があります。

3.自社にあった営業活動の標準型を作り上げる

 個々人の素質や能力に頼るだけでは、営業力のバラツキが大きく、営業部門の力が最大限に発揮されません。営業活動を詳細に分析すると、受注確度を高めるための営業活動の定石というものがあるはずです。取扱商品や営業活動の内容を十分踏まえて、自社に最も適した営業活動の標準型を考え、全営業担当者に徹底し、それを踏まえた上で各営業担当者が個性を発揮することができれば、営業力の大幅な向上につながります。

4.自分と自社に自信を持って営業活動を行う

 “自社の商品にほれ込んでいなければ、顧客に売り込むことができない”といわれますが、意外に自社製品や自分の営業スタイルに自信をもてないケースがあります。営業担当者が自社製品の価値・魅力・長所等を十分理解し、それが顧客の役に立つという意識を持つことができれば、自信をもって営業活動を行うことができ、顧客からの信頼獲得につながります。

5.結果だけでなくプロセスも評価する

 “営業は結果がすべて”という考え方がありますが、それでは営業担当者は短期的な成果のみを求めて営業活動を行うことになります。長期的な視点からみれば、顧客のことをどれだけ知り、顧客からどれだけ信頼されているかは結果の数字以上に大切です。個々の営業担当者の営業活動内容を正確に把握し、それを評価に結びつけることができれば、望ましい営業改革の実現、定着につながっていきます。

成長に向けた営業力の強化

 企業の目的は永続的な成長・発展ですが、事業環境が急速に変化していく中で、現状に安住し成長への手綱を緩めれば、将来の発展は期待できないどころか、場合によっては存続すら危うくなるケースもあります。したがって企業が安定的な成長・発展を続けていくためにも、常に成長の機会を模索する必要があります。

 企業が成長を目指す代表的な戦略として、製品市場戦略と競争優位戦略があります。前者は重点を置く市場を明確にし、そこへ経営資源を重点投入することで成長を目指す戦略、後者は競合他社に対して競争優位性をもつ自社の活動分野(製造、物流、販売・マーケティング、サービス等)を明確にし、コスト優位性や製品・サービスの品質・機能、流通システム、マーケティング手法の差別化により競争に打ち勝つことで成長を目指すという戦略です。

 本稿では、製品市場戦略の中から、既存の製品で新たな市場を攻めるケース(市場開拓)と、新たな製品で既存の市場を攻めるケース(製品開発)について、営業活動の進め方の例を紹介します。

1.既存の製品で新たな市場を攻めるケース(市場開拓)

 最も重要なことは、本当の顧客は誰なのか、そしてその顧客は何を望んでいるかを、できるだけ正確に把握し、ターゲットの絞込みを行うことです。ターゲットとする顧客の絞込みを行う方法の一つとして、顧客の細分化という手法があります。細分化の手順は概ね以下の通りとなります。

  • (1)目的の明確化
    細分化により何を知りたいのか、どのように営業活動の中で活用したいのかを明確化します。
  • (2)把握したいことの整理
    • [1]顧客が求める便益・機能
    • [2]顧客が購入または取引時に優先的に考慮する要因とその順位
    • [3]購買動機、取引機会や取引理由等
  • (3)顧客への訪問調査
    • [1]自社製品を購入した背景、ポイント
    • [2]顧客の特性(地域、属性、意識等)
    • [3]購入頻度、選択追加部品や更新部品の購入状況
    • [4]自社・他社の営業活動に対する評価
  • (4)細分化した市場の分析・評価
    • [1]市場の中での自社の位置づけ
    • [2]自社の強み・弱み・競争力
    • [3]自社の強みを活かす営業戦略の策定

2.新たな製品で既存の市場を攻めるケース(製品開発)

特に新製品の市場導入初期の段階では、以下の基本原則を押えておく必要があります。

(1)一人の責任者が統括する一元的な組織体であること

 新製品の市場導入当初は、顧客の購入動機や不満、要求、営業担当者の要望など、種々の情報、それも“生の情報”を素早く入手し、考え得る対策を即座に実施しながら、成功の要件を一つひとつ積み重ね、効果的な営業戦略へ収斂させていくことが極めて重要です。製販機能が分離するなど、意思決定が二元化すると、素早い判断や対応が難しくなります。

(2)(C)-PDCAであること

 新製品の開発・育成に成功している企業は、例外なく、販売計画の策定前の市場調査(C)に多大な力を注いでいます。実効性のある販売計画を策定できるか否かは、最初の(C)を徹底的に行うかどうかにかかっています。

(3)(C)-PDCAの(C)は“生の情報”に基づいていること

 その新製品が市場で受け入れられるかどうかの見極めは非常に重要ですが、販売ルートを経由して得られた情報だけでは、実態は見えてきません。自ら足を運び、市場の反応を肌で感じ、納得いくまで徹底して調べ上げることで、本当のユーザーニーズがつかめます。そこで得た情報は、顧客との接点となる販売ルートの選定にも役立ちます。

 特にルート販売の場合などは、顧客との接点となる代理店や販売店の力量次第で事業の成否が決まるケースも多く、絞り込んだ販売ルートで体制を築きながら、次のルートへと枠を広げていくという“小さく生んで大きく育てる”という発想が基本になります。

(経営情報部 田中 文男)