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企業にとって最も重要な経営資源は、いうまでもなく「人材」です。特に、経営資源の限られた中小企業にとって、従業員が持つ能力や意欲を最大限に引き出し、組織の活性化を図っていくことは、最も重要な経営課題の一つであるといっても過言ではありません。
しかしながら、現実には「経営者の思いや考えが現場の従業員に浸透、定着しない」「組織が硬直化しており、新たな発想が生まれない」「業務がマンネリ化し、現場に活気がない」「中核となる人材が育っていない」といった組織の活性化や人材育成にかかる課題を抱える企業が多く見受けられます。
本号では、従業員のモチベーション向上に向けた取組みのポイントについてご紹介します。
松下電器産業、トヨタ自動車、大日本印刷など、「従業員の意欲に応える会社」「評価制度が公正な会社」「従業員を大切にする会社」等と評価されている会社(出所:日本経済新聞社「働きやすい会社2006」)は、総じて従業員のモチベーションが高く保たれ、好調な業績を続けている先が多く見られます。これは中小企業であっても同じことが言えます。
また最近では、「会社の発展」と「従業員の幸せ」の両方の実現を目指すことを表明している会社も増えており、従業員にとって、会社は個人の自己実現の場とする見方が多くなっています。したがって、従業員が高いモチベーションを持って仕事をすることで、満足のいく成果を出し、それがまたモチベーションを向上させるという好循環を築くことにより、「会社の発展」と「従業員の幸せ」を両立させることができます。
現在、多くの企業が成果主義による賃金制度を導入しています。確かに、金銭報酬はモチベーション向上の重要な要因の一つですが、それだけでは不十分です。金銭報酬以外の方策とうまく組み合わせることで、より高い効果を得ることができます。
それでは、どのようにすれば従業員のモチベーションを効果的に高め、維持させることができるのでしょうか。公庫取引先の成功事例等を分析するといくつかのポイントがあります。
モチベーション向上のポイント関係図

上の図はモチベーション向上に有効なポイントを経営者、従業員及び顧客との関係性の中で示したもので、8つのポイントに分類しています。
【Point1】権限委譲
やる気や能力のある従業員に対しては、その能力や特性を正確に把握したうえで、できるだけ権限を委譲し、チャンスを与えることで、モチベーションの高い自立した人材を育成することができます。従業員は自分の頭で考え、判断し、実行することによって、仕事に対する責任感や使命感が高まります。
権限を委譲するにあたっては、判断に迷っている時や明らかな判断ミスをしている時には適切なアドバイスを行う等の実行支援が必要です。また権限委譲の結果、仮に取組みが失敗に終わった場合でもそれを責めるのではなく、今後に活かそうという姿勢が従業員のチャレンジ精神向上につながっていきます。
【Point2】客観的評価
自己評価と周囲からの評価にはギャップが生じることが少なくありません。したがって、すべての従業員が満足するような人事制度を構築することは簡単なことではありませんが、従業員が自分に対する評価に納得することは重要です。そのためには、上司は部下の仕事を正確に把握し、その評価を部下にフィードバックする機会を積極的に設けるとともに、フィードバックに際しては、今後どのようにすべきか、成功や改善に向けた道筋を、できるだけ具体的にアドバイスすることが重要です。評価方法に関しては、上司からの一方的な評価ではなく、従業員同士の評価を加味するなどの工夫を行うことで、納得感を高めることができます。
【Point3】ボトムアップ
提案制度の実施や職場会議の開催など、従業員が積極的に提案を行ったり、意思決定に参画する機会をできるだけ多く設けることは、従業員の経営参加意識を高め、モチベーション向上につながります。
従業員はそれぞれの視点、レベルで様々な意見やアイデアを持っています。また、そうした機会を通じて自分が提案したことや、自分が決定に関わったことには、責任を持って取り組もうという意識が働きます。例えば、会社や職場の目標を全従業員が積極的に関わって決めることで、従業員が一丸となって目標達成に向けて取り組む等の効果が期待できます。提出された意見や提案に対しては、できるだけ迅速に、必ず何かしらのフィードバックを行うことが不可欠です。そうすることで、より従業員の参画意識を高めることができます。
【Point4】個人目標と全社目標のつながり
個人の目標達成が組織全体の目標達成に結びつくような工夫を行うことで、従業員のモチベーションを高めることができます。上からの単なる全社目標の割り振りではなく、従業員が自発的に目標設定することで、意欲的に仕事に取り組むようになり、能力を最大限に発揮することができるからです。従業員一人ひとりが、会社の経営理念や経営方針を十分理解し、全社目標を達成するためには自分は何をすべきかを考えながら、自らの目標を設定することで、組織全体の目標と従業員一人ひとりの目標が有機的に結びつくことになります。
【Point5】褒める
人間には誰しも他の人から認められたいという強い欲求があり、従業員一人ひとりを褒めることも、モチベーションの向上につながります。褒め方にもポイントがあり、タイミングよく褒めたり、何が良かったのかを具体的に褒める、あるいはみんなのいる場で褒めるなど工夫することで、一層効果が高まります。各種の表彰制度を設けることも有効な方策です。
また直属の上司だけでなく、職場の同僚や他の部門の従業員等からも褒められ、認められることは、会社や職場に対する帰属意識を高め、強いチームワークを生み出すことから、従業員同士がお互いに褒めあう仕組みを作ること等も大きな効果をもたらします。
【Point6】競争意識
競争意識は誰しも必ず持っているものです。「人に負けたくない」という欲求は、強弱の差こそあれ、人間の根源的な欲求として普遍的なものです。したがって、例えば従業員別の目標達成率やスキルマップをオープンにする等、身近に競争機会を創出し、各人のレベルや目標に合わせて適切な競争相手を作り出すことで、目標達成に向けたモチベーションを向上させ、専門知識の蓄積や仕事に必要な技術の修得・向上等に向けた意欲的な取組みを促すことができます。
【Point7】情報の共有化
従業員が社内の成功事例やノウハウを共有する機会を積極的に設けることは重要です。従業員全員がお互いの取組みやノウハウを共有し合うことで、個々の従業員の知識やスキルの向上、仕事に取り組むモチベーションの向上につながります。また、業務改善に向けた様々な視点からの提案や、業績の向上に向けた企画・アドバイス等の情報交換が、部署・担当を越えて積極的に行われることで、組織力が一段と強化されることになります。
【Point8】顧客志向
従業員が顧客に対する貢献実感を持てるか否かは、企業が顧客満足度の向上を実現するうえで、重要なポイントになります。ところが、管理部門や開発部門など、日常顧客と直接接することの少ない部署では顧客に対する貢献実感を持ちにくく、モチベーションが低下してしまう可能性が高くなります。特別な機会でなくても、顧客との接点を持つ従業員が顧客の声をできるだけ吸い上げ、そうした部門の従業員に届けることができるような仕組みを作ることで、従業員一人ひとりが顧客の期待に応え、あるいは期待を裏切らないようにするためには自分がどう行動すべきかを考えるようになります。
モチベーション向上に向けた取組みは企業によって異なります。これは企業によって経営環境も違えば従業員の意識も全く異なるからです。そのためモチベーション向上に向けた取組みを検討する際には、最初に従業員が現状何に満足しているのか、何に不満を感じ、組織に何を求めているのかを確認する必要があります。例えば、従業員満足度調査等を活用して、自社の従業員モチベーションの現状を把握し、問題点を整理することで、自社の現状に合った、より効果的な取組みを行うことが可能になります。
従業員満足度調査の結果例

なお、前述の8つのポイントを理解するうえで参考となる「組織活性化事例集」や、従業員満足度調査の様式例等もご用意しておりますので、ご希望の方は最寄りの本支店窓口までお申し付けください。
(経営情報部 村田 通亮)