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中小公庫「経営情報」No.342

事例にみる「新連携」立上げのポイント

 近年、経済のグローバル化の進展やこれに伴う国際的な競争激化などにより、経営環境は目まぐるしく変化しており、企業においては、時代に対応した製品・サービスの提供が求められています。

 ところが、大企業に比べ経営資源が限られた中小企業にとって、自社単独で新製品の開発やサービスの提供等を行っていくことは、技術的な問題や資金負担の大きさなどから、対応したくてもできないケースも見受けられます。

  そこで、複数の中小企業者がお互いの「強み」となっている技術・製品・サービス等を持ち寄り、企業が「連携」することで新たな事業分野の開拓を図る新連携事業に注目が集まっています。

  本号では、既に新連携計画の認定を受け、事業の立上げに成功した事例をもとに、その取組みのポイントについて紹介します。

連携企業との関係作り

 新連携事業はこれまでの経営革新事業などとは異なり、異分野の中小企業者が連携し技術やノウハウなどを持ち寄ることで、新しい技術・製品・サービス等を創出しなくてはなりません。

  事業を進めるに当たっては、連携相手を見つけることが難しい場合がありますが、中小公庫のビジネスマッチングなど金融機関のネットワークを活用し、連携先を見つけることに成功している事例もみられます。さらに、連携相手が見つかったとしても実際に事業に取り組むに当たり、「連携する相手企業との関係作りが難しいのではないか」という声が聞かれます。

  そこで、まずは連携する企業の経営者同士が信頼関係を構築することで、連携企業同士において、どれだけ緊密な関係が構築できるかが事業立上げの第1のポイントとなります。

【事例1】自社からの積極的な情報開示

 フラットパネルディスプレイに使用する保護フィルムの研究・開発を行っていたA社は、連携を進めるに当たり、連携企業との十分な信頼関係の構築が必要だと感じ、自社の情報を積極的に開示することにした。

  連携当初は、社内から「これまで長年かけて蓄積してきた研究データを簡単に開示すべきではない」との意見もあったが、社長の「自社が情報開示をためらっているようでは、連携企業からも情報を出してもらえない」との考えのもと、できるだけ多くの情報を開示することにした。この結果、連携企業から「A社は今次計画に真剣に取り組んでいる」ことを理解してもらえ、連携企業からも積極的な情報の開示を受けることができた。

【事例2】プロジェクトチームによる関係強化

 金型製造業のB社は、連携企業と冷間鍛造によるギアの製造・販売に取り組んでいる。B社の技術基盤及び連携企業の販売基盤は強固なものであり、早期の事業化に成功したが、採算性の確保に関する課題等が残されており、両社間での生産・販売スケジュールや細部にわたるルールの策定は後手に回っていた。

  これらを解決するために、社内に社長を筆頭とする8名体制のプロジェクトチームを発足させた。連携企業の社内にも同様のプロジェクトチームを作ってもらい、合同会議を定期的に開催した。合同会議においては役割分担を決め、採算管理の体制を構築し、事業の本格的な展開に向けて具体的なスケジュール等を策定した。

  合同プロジェクトチームの発足により、両社間のコミュニケーションは円滑になり、問題意識や目標の共有化にも役立った。

【事例3】連携企業との理念共有化

 舶用エンジンの駆動装置等の製造を手掛けているC社は、新製品の開発に当たり、従来から取引・外注があり信頼がおける2社に共同開発の相談を行った。

  当初は、要求のハードルの高さに躊躇していた相手企業も製品の新規性を理解し、「ものづくりには人を大切にした経営を行うことが重要」というC社の理念を共有化することで最終的には2社とも共同開発に合意した。

  また、新製品の共同開発を手掛けた当初は試作品を作るものの、失敗作の連続であった。そのなかで、「連携企業も努力した結果であり、責任は製品の最終的な責任者であるC社にある」という考えのもと、開発段階での失敗作のコストはC社が負担した。結果として、C社の熱意が連携企業にも伝わり、3社が共通の目標に向かってより強固な信頼関係を築くことができ、3年がかりで量産化の目処をつけることに成功した。

  量産化が可能となった現在では、連携企業側から「開発段階でC社に苦労をかけたのだから、量産段階で不良品を発生させてはいけない」といった高い意識を生む結果につながっている。

コア企業のリーダーシップの発揮

 新連携計画の認定取得に当たっては、詳細な事業計画の策定が求められるほか、経済産業局等への説明も数多くこなさなくてはなりません。また、連携事業での新製品を取引先に理解してもらうためにプレゼンテーションを行う機会が増えることも予想されます。

  このような機会においては、コア企業が率先して事業に取り組むとともに、他機関への説明・交渉についてもリーダーシップをとって他の連携企業をリードしていくことが円滑な事業立上げの第2のポイントとなります。

  事例4では生産ライン構築のノウハウを持つD社がコア企業となり、リーダーシップをとって経済産業局への説明等を行うことでスムーズに連携事業の立上げを図っています。

 【事例4】コア企業が積極的に会議の調整役となりリーダーシップを発揮

 自動車の足回り、ステアリング部品などを製造するD社は、アルミを使用した小型・軽量の自動車部品の開発を行っていた。

  かかるなか、他社と連携することでアルミ溶解から鋳造、機械加工までを一貫して行うシステムを構築することで、D社1社だけの取組みよりも高強度・高品質のアルミ部品を廉価に製造できるのではないかと考え、3社と連携体を構成し、生産ライン構築ノウハウを持つD社がコア企業となることで、新生産システムの確立を目指すこととした。

  連携企業との関係は、コア企業であるD社が強いリーダーシップを発揮し、新連携地域戦略会議*との調整に進んで対処することで相互に信頼感が生まれた。また、研修を通じてお互いの技術を学び合う関係ができるなどスムーズに連携体が形成された。

  * 新連携地域戦略会議とは

新連携の取組みを支援するため、全国9ヵ所のブロックごとに、設置しているもの。同会議には、新連携事業に当たっての相談を受け、事業計画の作成から事業化まで一貫した支援を行うプロジェクトマネージャー、サブマネージャーなどが配置されている。

外部の機関・専門家を活用する

 新たな事業を行うに当たっては、自社及び連携企業のみならず、金融機関、顧問税理士や大学等の研究機関といった外部の機関・専門家から、中立的な立場で新事業の計画が妥当なものであるかなどといったアドバイスを受けることが第3のポイントとなります。

  事例5のE社では、事業の連携体に大学を加え、専門家からの技術指導を受けることで、スピーディーな製品開発に成功しています。

  【事例5】産学連携を活用した新技術の開発

 E社は、自動車等の生産に使用される粉末冶金金型及び精密鍛造金型を製造しており、これまでの高い技術力を活用して、冷間鍛造による歯車(ギア)の開発に着手している。

  新製品の技術の開発に当たっては、地元大学及び首都圏のK大学から、鍛造による歯車製造に関する技術指導を受け、現在も地元大学との共同研究を継続中である。

  さらに、国内で歯車の権威である地元大学教授からの推薦で、E社の社員をK大学の大学院に派遣し、技術レベルの向上や大学との関係強化に取り組んでいる。

 また、新連携の申請に当たっては、中小公庫等の金融機関やプロジェクトマネージャーとの関係作りも重要です。

「新連携」の円滑な立上げに向けて

 これまで見てきたように、新連携事業の立上げに当たっては特別なノウハウがあるわけではなく、連携企業や外部機関との信頼関係を構築し、コア企業が「本気」で事業に取り組み、連携体をリードしていくことで、連携体という組織を活性化していくことが、事業成功の鍵を握っていると言えます。

 また、新連携の認定取得はあくまで新事業立上げのためのスタートであり、最終的な目標は新事業を軌道に乗せ、収益をあげることです。したがって、事業計画などの作成に当たり、プロジェクトマネージャーや評価委員会に対し、新連携認定のポイントである「新規性」、「市場性」を意識するなどわかりやすい記載を心掛けることも重要ですが、企業間の役割分担を明確にし、新事業立上げ後に計画と実績との比較が行えるような事業計画を作成することが大切です。事例1のA社では、新連携の認定に当たり詳細な事業計画を求められたため、相応の負担があったものの、認定取得後、詳細に計画を策定していたため、当該計画に沿って社内の体制を整備することができました。さらに、当初計画と実績の比較を行うことで、問題点を早期に発見でき、予想を上回るペースでの事業化に成功しています。

【新連携事業立上げに向けた取組み】

(融資業務部 桑原 弘晋)